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第62号 1998年12月9日発行

目次


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「のぞみ」の運用(その2)

 前回に引き続き「のぞみ」の運用の方法などを御紹介します。前回の最後にちょっと書きましたが、「のぞみ」の運用では火星軌道に投入後は鹿児島に新しくできる 34 mアンテナをコマンドの送信用に使用し、臼田の 64 mアンテナでは殆どの時間はXバンドでデータレコーダーの再生データを受信することを基本に考えています。現在臼田ではXバンドの受信に用いるローノイズアンプの改良(交換?)が行われ、この結果Xバンドだけを受信するとS/Xの両バンドを同時受信をする時に比べて4倍程度のビットレートでデータが受信できます。このおかげでS/X共用で受信をする場合にはかなりの期間を 1 kbps で受けなければならなかったところが最低でも 4 kbps では受けられるようになりました。この事は実際に衛星を運用する上では見かけ以上に大きな差が出ます。これは何故かというと、1 kbps で受信した場合には一日の運用時間を8時間(実際はもっと短い時間でしょうが)とすると、データレコーダに蓄積してある一日分のデータを再生するのに二日かかってしまうからです。我々の分野では連続したデータが取れているという事が重要な事の一つなので、切れ目なくデータを取得しようとすると、必然的に海外局でのテレメータデータの受信が必要となります。ところがこれはデータレコーダを管理する上で大変やっかいな事になります。ここまででお解りのように「のぞみ」は距離が大変遠い為に他の衛星に比較して取れるデータ量が少なくなっています。この為、可能な限り無駄が出ないように観測のビットレートを作成します。(これは ISACS-PLN と呼ばれる専用のプログラムを用いて行います。)ところが、海外局のように割に頻繁に受信時刻の予定が変更になる所があると、たちまち計画を作り直さなければならなくなってしまいます。新しい計画を衛星に書き込みスタートさせるのが間に合わないと、せっかく取ったデータが無駄になってしまいます。この様な事から臼田局のみでデータ受信を出来る様になった事は衛星運用上は大変大きな意味を持つ訳です。

 「のぞみ」では火星が一番遠いところに居る時には地上でコマンドを打ってからその結果が地上に届くまでに40分もかかります。この為、運用を間違えて緊急事態に陥ってしまう事のない様に火星周回軌道に投入後は ISACS-PLN と SCOPES と言う二つのプログラムを用いて運用計画を作ります。この内の ISACS-PLN はデータレコーダの管理や様々な環境条件に応じた機器の状態の制御を簡単な電力管理を含めて行い、運用時に使うコマンド群( OP と言います。)を作成します。SCOPESの方は ISACS-PLN の作った OP に従い、時々刻々の衛星の温度、電力の状態の確認を行い、何らかの問題点があれば、それを修正した新たな運用計画を作成し直せる様にしてあります。また、衛星上でを動いている OP を更新するときに従来の衛星では一度今走っている OP を止め、新たな OP を衛星に書き込みその後新しい OP をスタートしていましたが、OP が止まっている状態は衛星運用上は危険な時間になる為、「のぞみ」では走っている OPを止める事無く新たな OP の書き込みが出来るようになっています。

 「のぞみ」では衛星の上面に固定した高ゲインアンテナを常に地球に向ける事により地球で衛星からのデータが受け取れる様になっています。この為、ほぼ毎日アンテナが地球に向くように衛星の姿勢を微調整する必要が有ります。この衛星の姿勢を変更する為のコマンドを毎回作成し衛星に地上から上げる事は一回のミスが衛星を殺す事にもなり兼ねない為、「のぞみ」では、地球がどの方向に有るかを予め衛星上に記憶しておき、地上からのコマンドは単に ”姿勢の微調整が必要なら姿勢変更をしてもいいよ” 、 ”これからは姿勢変更をしちゃいけないよ” と言うものを上げるだけに留めています。こんなコマンドはなくてもいいんじゃないかとお思いになる方もいらっしゃると思いますが、衛星に搭載されている観測機が知らない内に姿勢変更を行う事は大変危険な為、この様な仕様になっています。こうした工夫を行う事により、衛星の運用が安全に行えるようにしています。

(早川 基)


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平成10年度宇宙科学企画情報解析センターシンポジウム
「マルチメディア技術を用いたサイエンス・プレゼンテーション」プログラム



開催日:平成 10 年 12 月 14 日(月)

会場 :宇宙科学研究所 本館 1 階入札室


 【座長:篠原 育(宇宙研)】 10:20 〜12:10


10:20 〜11:10専門発表教育〜テクニカルプレゼンテーション入門*君島 浩(富士通ラーニングメディア)
11:10 〜11:30 オンスクリーンプレゼンテーションとドキュメントの作成および配布*阿部 文雄(名大 STE 研)
11:30 〜12:10ディジタル衛星通信を利用した「衛星設計コンテスト最終審査発表会」*島田 一雄(都立航空高専)


昼休み (12:10〜13:10)


 【座長:星野 真弘(宇宙研)】 13:10 〜15:10


13:10 〜13:30Simulation & Visualization on PC−いろんな形*藤井 孝藏,宮路 幸二(宇宙科学研究所)
13:30 〜14:10 VR システムによる 3D シミュレーションデータの可視化*陰山 聡(核融合研)
14:10 〜14:30シミュレーション結果の可視化と情報公開:アニメーションと VRML の利用*中村 雅夫、荻野 竜樹(名大 STE 研)
14:30 〜15:10PC 利用のサイエンティフィックビジュアリゼーション*白山 晋(高度情報科学技術研究機構)


休憩 (15:10〜15:20)


 【座長:長瀬 文昭(宇宙研)】 15:20 〜17:10


15:20 〜15:40天文教育用マルチメディアソフト「目で視る相対論」の開発とプレゼンテーション*三輪 直弘(大教大)
15:40 〜16:20Making of "The Orign of the Moon"*三浦 均(理化学研究所)、小久保 英一郎(東大・教養)
16:20 〜17:10「プレゼン道」入門…口頭発表、ポスター発表の科学*松田 卓也(神戸大・理)


・講演時間には5〜10分程度の質疑応答の時間を含みます。

(篠原 育)


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大型計算機に関するお知らせ

1.12月・1月保守作業予定



M:保守作業
VPP 500 の 12 月 21 日(月)に予定していた定期保守作業は中止にして、12 月 28 日(月)の 12:00 からの集中保守作業の中で行います。


2.大型計算機の年末・年始の運転スケジュール



M:保守作業
12 月 29 日(火)22:00 から 1 月 4 日(月)9:00 の間の連続運転中はセンターオペレータが不在のため、システムダウンがあった場合、1 月 4 日 9:00 まで対応が出来ません。
注意 大型計算機関係の各サブステーション・オープンステーションは 12 月 28 日(月)12:00 でクローズします。


3.計算機登録予算の移算締切りについて

 前年度と同様、今年度も下記日時で計算機登録予算の移算処理を締め切らせて頂きます。

   締切日  平成10年12月25日(金) 15:00

 尚、上記日時以後も予算追加は出来ますが、その追加予算は翌年度移算となりますので、配当が確実なものに限ってください。

(関口 豊)


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編集発行:文部省宇宙科学研究所
宇宙科学企画情報解析センター
〒229-8510 神奈川県相模原市由野台 3 -1-1 (Tel 0427-59-8351,8352,8353)