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第63号 1999年1月22日発行

目次


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新 年 を 迎 え て

 あけましておめでとうございます。 

 この機会に昨年の当センターの関連する活動を順に振り返ってみますと、ATM LAN の本稼動開始、「科学衛星データベース」 DARTS (Data Archive and Transmission System)の新機能追加と GEOTAIL データ公開の開始、7月の「のぞみ」打ち上げ成功と新衛星運用ネットワークの稼動開始などがありました。今年の1月早々から宇宙研が学術情報ネットワーク(SINET)のノードになり、現在、接続試験を行っています。 3月には ATM が動き出す予定で、外部機関との高速ネットワークが始まります。国際回線については、昨年10月に SINET の対米回線容量の増強がはかられており、宇宙研と NASA の間の接続強化も計画中です。大型計算機関係では、3月にスーパーコンピューターのリプレース、9月には衛星運用計算機や汎用のセンター計算機のリプレースも予定されています。1900年代最後の年でいよいよ2000年問題対策も追いこみに入ります。他にもいろいろとありますが、今や情報革命の進行は大きな流れとなり、必然的に当センターの活動も拡大の一途をたどっています。本年もスタッフ一同、全力を尽くす所存ですので、これまで以上に皆様のご協力・ご支援をいただきたくよろしくお願い申し上げます。

 DARTS に関連して最近大きな動きがありましたので、簡単にご紹介させていただきます。 DARTS システムの構築における特色の一つは、全国の研究者が宇宙科学の最先端の研究を行うためということを第一義の目的としていることであります。これは全国大学等共同利用機関の宇宙研のデータセンターとして当然の理念ですが、そのためには、編集・較正されたアーカイブデータを配信するだけでなく、これを容易に且つ的確に利用するための較正データ、解析ツール、利用手引きなども同時に整備し、配信する必要があります。しかし、これには相当の人手、しかも科学衛星データを用いた最先端の研究に意欲のある専門的研究者の数が必要です。これはとても大切なことで、そのような観点から開発された解析ツールなればこそ他の研究者にとっても有用だからです。といっても、云うは易しで、現有のスタッフではどうしても限度があります。一方、宇宙研の衛星プロジェクトはその開発、製作、運用の段階で国内各大学・研究機関の研究者の協力・共同の下で行われています。したがって、どのプロジェクトも全国の大学等に宇宙研のプロジェクト関係者と同等にその衛星の特性、機能に熟知したグループがおり、観測機器の主任研究者がいます。そして、これら関係者のグループはまたしばしばその衛星のデータの大口利用者でもあります。この点に注目し、さらに現在ではネットワークが全国隅々まで行き渡り、高速化されていることを考えるならば、おのずとネットワークで連結された、宇宙科学衛星データを用いたデータ解析室連合体構想、すなわち、バーチャル・センターというものがありうるのではないか、と考えられます。次ページ(長瀬)にありますように、昨年の9月に科学技術振興事業団の「計算科学技術活用型特定研究開発推進事業」の公募があり、当センターの長瀬教授を代表者として DARTS のデータベースに関連する全国の研究者有志(共同研究者)の賛同を得てこのバーチャル・データセンター構想を申請したところ、首尾よく採択されることになりました。このことにより、 DARTS を利用した先端的な研究に一段とはずみがかかることに“乞うご期待”ということになりました。但し、この事業の予算は平成10年度後期に発足して以降3年間という年限付きであり、平行して当センターの専任スタッフの拡充を目指した将来構想も検討していくことは必須であります。

 最後に、当センターのスタッフの移動がありましたので、お知らせします。まず、12月から助手 として松崎恵一さんが加わりました。 DARTS の 「ようこう」関係を担当する傍ら、2003年打ち上げを目指している SOLAR-B プロジェクトでの活躍が期待されています。また、1月には星野助教授が東京大学大学院理学系研究科教授にご栄転になりました。星野さんにはこれまで大型計算機の全体的な運営や DARTS 構築に対して中心的な役割を果たしていただいてきました。4月からは当センターの客員教授として引き続き指導的役割をしていただくようお願いしています。

(向井 利典)


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「宇宙科学データ解析研究のためのバーチャル・センター構築」 プロジェクト発足

 御存じの方も多いと思いますがが科学技術振興事業団(JST)は昨年秋に「計算科学技術活用型特定研究開発推進事業」を発足し、その研究開発提案を募集しました。私ども宇宙科学研究所の宇宙科学企画情報解析センター(PLAIN センター)では、上記の課題でこれに応募しましたところ幸いにも採択されました。この推進事業は高速ネットワーク等の情報基盤を利用して、大量データ転送・解析を行う研究開発を推進することを目的としており、今年度の公募分は平成13年9月迄の3年間を対象としております。

 現在 PLAIN センターでは科学観測衛星により取得したデータを編集し、このデータを広く国内外の研究者に一般公開するために "DARTS" データベース・システムを開発中であります。DARTS は基本システムが完成し、X線天文衛星「あすか」、太陽物理衛星「ようこう」、地球磁気圏衛星「ジオテイル」のデータの一部試験公開を始めており、利用者も増加してきております。しかし、DARTS をより強力なシステムに発展させるには、可視化を伴った解析ツールの整備、国内外の他の研究機関(国立天文台、米国 NASA など)と協力した多波長観測データ解析ツールの開発などなお多くの課題が残されています。

 今回の応募課題では、国内外の関係各大学・研究機関と当研究所をネットワークで連結して、この連合体が協力してデータベースの開発・構築とこれを用いた解析研究、その資源の一般公開を目指す、いわゆる「バーチャル・データ解析研究センター」を全国的・国際的な規模で整備・展開することを目指しております。具体的な開発目標として(1)宇宙研衛星データに基づく地球磁気圏アーカイブデータの完成、 (2)宇宙研衛星データに基づく赤外線天体カタログの作成、(3)高エネルギー天体物理データのアーカイブ及びミラーシステム開発、(4)宇宙研の将来衛星による大量データに基づく宇宙科学データベースシステムの新しい企画・構築・管理法の開発等を挙げております。このプロジェクトではまた4名程度のポスト・ドック研究員を平成13年9月まで採用する計画も立てております(詳しくは長瀬までお問い合わせ下さい)。私どもはこのプロジェクトを契機に、DARTS データアーカイブシステムを全国の共同利用機関との有機的な共同のもとで一層発展させたいと考えております。皆様のご支援ご協力を心からお願いします。

(長瀬 文昭)


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平成10年度宇宙科学企画情報解析センターシンポジウム報告

 平成10年度の PLAIN センターシンポジウム「マルチメディア技術を用いたサイエンス・プレゼンテーション」を平成10年12月14日(月)に宇宙科学研究所において開催しました。当初は、今回のテーマが「プレゼンテーション」というなかなか捉えがたい難しいテーマなので講演者や聴衆を集められるのか、と心配していましたが、蓋をあけてみれば、10名もの先生にご講演いただけることになり会場である入札室に立ち見が出るほどの大盛況のシンポジウムとなりました。各先生の講演は、プレゼンテーションの一般的な方法論から最新のコンピュータ技術を駆使した可視化技術等を応用したプレゼンテーション、衛星放送を利用したプレゼンテーションの実験報告など、広い意味でのプレゼンテーション技術に関して活発な議論が行われ、非常に有意義な研究会になりました。従来、国内の学会発表等ではプレゼンテーションは比較的軽視される傾向にあったかと思いますが、今回のシンポジウムでプレゼンテーションの重要性があらためて確認できました。ある先生が「重要なことは、まずプレゼンテーションが大事であると認識することだ。」とおっしゃっていましたが、今回のシンポジウムが一つのきっかけとなり、参加者一人一人がよりよいプレゼンテーションを意識するようになっていただければ、今回のシンポジウムは大成功だったということになります。最後になりましたが、年末のお忙しい中にご講演を快諾していただいた先生方にお礼を申し上げます。なお、今回のシンポジウムも例年通り講演集を印刷する予定です。

(篠原 育)


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新 人 紹 介

 はじめまして、このたび PLAIN センターに着任しました松崎恵一です。「ようこう」のデータベースの開発を担当致します。太陽科学専任の担当者は、私が初めてとなります。そこで、他分野の人にも優しくなおかつ、これまで太陽の解析をしてきた人にも役立つシステムを開発していきたいと考えています。

 私のこれまでの研究分野はX線天文学でした。ASTRO-E衛星の開発を行ないつつ、「あすか」のデータを用いた研究を行なってきました(この分野でも、多少なりとは PLAIN センターに貢献できるかとは思います)。 博士論文は、生まれたての重い星からのX線で書きました。天文学的に言うと天の川にある「近く」の星の話です。これからは太陽と、一気に〜8桁も近くの星を研究することになりました。夢から現実に引き戻されていくような感じがしています。しかし、現象を支配している物理法則は共通ですし、データ解析という手段は普遍的です。新参者で苦労もするでしょうが、これまでの経験も活かして perspective を持った研究、あるいはシステム開発を行なっていきたいと考えています。どうぞ、よろしくお願します。

(松 崎 恵 一 )


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