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第61号 1998年11月11日発行

目次


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「のぞみ」の運用(その1)

 火星大気と太陽風との相互作用の研究を主目的とする PLANET-B は1998年7月4日に M−V−3号機により打ち上げられ、「のぞみ」と命名されました。ちなみに、打ち上げのウィンドウの初日に予定どうり打ち上げられたのは宇宙研の衛星としては「のぞみ」はまだ2機目です。宇宙開発事業団を含めても殆ど無いそうなので「のぞみ」は強運の持ち主なのかもしれません。「のぞみ」の本格的な運用は火星に到着 (1999年10月11日)してからで今はまだ地球の周りにいますので(地球離脱は今年の12月20日)、全機器が常時観測をしているわけではありませんが、すでに大部分の観測器はそれぞれの観測対象に応じたスポット的な観測を行っています。カメラによる月や地球の撮像は皆さん既にご存知でしょうが、紫外光や極端紫外光による地球周辺の観測も行われており、ジオコロナと呼ばれる地球周辺に広がった酸素原子からの紫外光やプラズマ圏と呼ばれる領域のヘリウムによる極端紫外光の検出に成功しています。特に極端紫外光についてはプラズマ圏の外側からの観測は世界で始めての事で地球周辺の観測の新たなる手法を開発したといっても過言ではありません。「のぞみ」は日本初の惑星ミッション(深宇宙ということでは「さきがけ」、「すいせい」で経験済みですが)という事で従来の地球周りの衛星とはちょっと違う事もあるかも知れませんので、その運用体制、衛星側での工夫等について紹介したいと思います。

 「のぞみ」はテレメーターとしてSバンド、Xバンドの2波を持っています。Sバンドは衛星の上下面に取り付けられたローゲインアンテナと衛星上面に固定されたハイゲインアンテナを利用し、データの伝送を行いますが、Xバンドはハイゲインアンテナのみを利用するようになっています。火星へ向かう軌道に入ってしばらくしてから後はハイゲインアンテナを使って通信を出来るようになるので2波共使用出来ますが、それまではローゲインアンテナしか使えないために(火星に着いてしまうと衛星から見て地球と太陽のなす角度は45度以下なのですが、地球周辺にいるときは殆どの時間は地球よりも太陽側に居るためにハイゲインアンテナを地球に向けると衛星の太陽電池に日が当たらなくなってしまうので使えないのです。)ここしばらくはSバンドのみを使った運用になっています。今のところ「のぞみ」の通常の運用には臼田の64mアンテナを受信局として使用し、相模原のB棟の3階にある管制室から運用しています。この形態自身は従来までの衛星と何ら変わりはありません。ただ、既に PLAIN センターニュースにも書かれている様に「のぞみ」からは地上系システムがワークステーションをベースとした新しいシステムに変更になっています。(このシステムの私が感じている最大の利点は受信局、電送ルートの切替えや、管制卓の切替などが特別の技術を持った人でなくとも速やかに行える事でしょう。)

 「のぞみ」を無事火星に到達させる為に軌道修正が2〜4週間に一度程度の割合で行われていますが、この時にはその重要度に応じて、臼田局だけではなく鹿児島の20mアンテナも同時に利用して不測の事態に備えています。(幸い今のところ不測の事態には会わずにすんでいますが。)「のぞみ」は超軽量級の衛星(アメリカや旧ソ連が上げている火星探査機に比べると重量が半分程度しかない。)なので、軌道にも工夫をして、月とのスウィングバイを利用して衛星の速度を増やし、火星到着に必要な燃料を減らしています。(スウィングバイの利用で燃料を10数キロ分得しているそうです。)第一回目のスウィングバイは9月に行われ、今は地球離脱(12月20日)に向けての第2回目のスウィングバイ(12月18日)の途中で一番地球から遠くなる所(約150万キロ=コマンドを打つと確認が取れるまでに最低10秒はかかる。)に居ます。

 受信局の項で今のところと含みのある書き方をしていますが、これは衛星から送られるデータを最大にする為に火星に到着後は今制作中の鹿児島の34mアンテナと臼田の64mアンテナの両方を同時に使用しようと考えているからです。 (34mアンテナをコマンド送信用に利用し、 64mアンテナはXバンドの受信専用で使う。)こうする事で「のぞみ」から伝送できるデータ量が臼田のみで運用した場合に比べて倍程度に増える事が期待できるからです。この辺の事情や運用を楽にする為の衛星側の工夫等に関しては次回に述べたいと思います。

(早川 基)


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平成10年度宇宙科学企画情報解析センターシンポジウム
「マルチメディア技術を用いたサイエンス・プレゼンテーション」

開催のお知らせ

 近年の情報機器の高機能化・低価格化によって数年前までは考えられなかったような高度な情報伝達技術が身近なものになってきました。これに伴って科学分野の学術的成果の発表形態も徐々に変貌しつつあるように思われます。例えば、ヴァーチャル・リアリティーの技術を用いた計算機シミュレーション結果の表示、高速ネットワークを利用した遠隔地可視化など、マルチメディア技術を駆使したプレゼンテーションは、聴衆に対してより効果的に説得力のある発表を行える可能性を秘めています。今回のシンポジウムでは、こうした新しいプレゼンテーション法に関連して、コンピュータ等の情報装置を用いたプレゼンテーションの方法の問題点、プレゼンテーションの応用例、などを紹介して頂きたいと思います。プレゼンテーション技術は比較的軽視される傾向もありますが、研究成果の発表のあるべき姿・発表の方法論について考え直す機会になれば幸いです。ふるってご参加くださるようお願いいたします。

 日時:平成10年12月14日(月)
午後1時から午後5時
場所:宇宙科学研究所本館1階入札室

 なお、勝手ながら参加申し込み締め切りは、平成10年11月24日(火)とさせて頂きます。

 問い合わせ先:篠原 育 (TEL.: 0427-59-8404、
 E-mail : iku@stp.isas.ac.jp)


(篠原 育)


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次期スーパー・コンピュータ機種決定

 スーパーコンピュータのリプレイスを進めてきましたが、この度、富士通 VPP800 システムに決定しました。基本的には現行の VPP500 システムと同じベクトル並列計算機であり、これまでと同じ使い勝手で利用できます。また本計算機の性能は、これまでに比べて数倍以上の能力を有しています。本リプレイスは平成 11 年 3 月下旬を予定しております。この超高速計算機の具体的な性能は以下の通りです。


 VPP800 / 12 システム

  ピーク性能 96 Gflops ( 現行11 Gflops )
総主記憶容量 128GB ( 現行1.8GB )
並列度(PE数) 12 ( 現行7 )
オペレーティングシステム UNIX System V
コンパイラー FORTRAN、FORTRAN90、C、C++


(星野 真弘)


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大型計算機に関するお知らせ

1.11月・12月定期保守作業予定

(1)11月の保守作業は GS8400 / 20・DEC Alphaで、11月16日(月)8:00〜13:00 の間に行います。尚、GS8400 / 20 のジョブはセーブフォルトの状態で作業しますが、TSS ジョブ( DEC も含む)については保守作業開始の8:00 までには終了してください。終了していないものについては強制終了します。

(2)12月21日(月)に予定していた VPP 500 / 7 の定期保守作業は年末に集中保守作業を行いますので中止します。

(3)年末・年始保守及び運転計画については、現在検討中ですので、次回12月号 PLAIN センターニュースでお知らせします。


2.計算機登録予算の移算締切について

 前年度と同様、今年度も下記日時で計算機登録予算の移算処理を締め切らせて頂きます。

   締切日  平成10年12月25日(金) 15:00

 尚、上記日時以後も予算追加は出来ますが、その追加予算は翌年度移算となりますので、配当が確実なものに限ってください。

(関口 豊)


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編集発行:文部省宇宙科学研究所
宇宙科学企画情報解析センター
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