前号へ 次号へ 宇宙科学企画情報解析センター ISASホームページ バックナンバー


第6号 1994年3月5日発行

目次


先頭へ


 

スーパーコンピュータとベクトル並列計算
第1回 スカラー処理、ベクトル処理、並列(パラレル)処理

 スーパーコンピュータはなぜ高速に演算できるのでしょうか。例えば、次のような簡単な計算をすると仮定しましょう。

DO 10 J=1,JMAX
A(J)=B(J)+C(J)
10 CONTINUE

現在のスーパーコンピュータはこれをベクトル処理という方式で実行する仕組みになっています。また、最近では並列処理という方式も増えつつあります。消火作業を例にとって、通常のスカラー処理、パイプラインによるベクトル処理、並列処理を比べてみましょう。

 図1(a)では一人の人間が池からバケツに水を汲み、火事場まで走り、水をかけ、池まで走って戻るという作業を繰り返します。それぞれの作業は上記のプログラムでいえば、B(J)をロードする、C(J)をロードする、加算を行う、その結果をA(J)にストアする、といった(厳密にはもっと細かい)演算に相当します。


図1(a) スカラー処理

先頭へ


図1(b)ではたくさんの人が列を作ってバケツの手渡しによって作業を分担しています。最初のバケツが火事場に届くまで(a)の場合と(ほぼ)同じだけ時間がかかりますが、その後はバケツ一杯分の消火作業に要する時間はバケツを手渡しする時間となります。


図1(b) ベクトル処理

先頭へ


図1(c)ではたくさんの人がそれぞれバケツを持って消火作業をしています。(b)の場合も(c)の場合も(a)の場合に比べて人間の数の分だけ効率が上がります。


図1(c) パラレル処理

先頭へ


図1(a)は汎用機やワークステーションに利用されているスカラー処理、
(b)はスーパーコンピュータ特有のベクトル(パイプライン)処理、
(c)が並列処理です。

(b)も(c)も効率が上がっていることがおわかりいただけるかと思います。
(b)のベクトル処理は通常1つのプロセッサの中で行われ、多くのスーパーコンピュータはこの方式で性能を向上させて来ました。これをパイプライン処理(ところてん方式)といいます。
(c)の方法では一人づつがプロセッサに相当しマルチプロセッサと呼ばれます。 VPP500のアーキテクチュアーは各プロセッサが(b)の方式で高速処理を行い、さらに7台のプロセッサが(c)の方式で結合されて性能を大きく向上させているものです。

 ちなみに、汎用機や最近のワークステーションではスカラー演算器を複数持って並列に動作させているものが少なくありません。この場合はDO loopである必要はなく、関連のない一般の演算をコンパイラが判断して同時に実行します。VPP500/7のスカラー演算器でもこの技術がいかされています。

 さて、これで大まかな違いを知っていただいたと思いますので次回はベクトル処理について話してみましょう。
(藤井 孝蔵)


先頭へ


 

衛星運用と計算機(第二回)

 前回は、KSC局UDSC局でのテレメータデータの取得、転送について述べました。今回はデータを受ける計算機M770/10#1で行っている処理のうちテレメータデータに関して記します。

A. M770/10#1

大まかには、次の4つに分かれます。

a. 受信処理
 パッシブオープン(口を開けて,局からデータが来るのを待っている)の状態のSTCジョブがこの処理を受け持ちます。衛星のリアルデータは#1メモリ上のバッファに展開され、QL処理で参照されます。

b. ファイル出力処理
 ここで作成されたファイル(保存期間は7〜8日)がSIRIUS登録処理の入力になります。

c. Quick Look/Delay Look 処理
 QL/DLに関する衛星のデータベースを用いて、処理の衛星共通化が図られています。また、#1でのQLでは、メモリ上にテレメータデータがあればそれを、なければファイルから自動的に獲得するように作られてます。
 DLの入力はb.で作られたファイルまたはSIRIUSから行われます。

d. 他システムへの転送処理
 SSOCでは#1のほかに、#2や所内LANに接続しているUNIXワークステーション(以下WSと略)でもQLは行われています。その流れは次のとおりです。

  i)
「あけぼの」、「GEOTAIL」の場合     
 #1 → 共用DASD → #2→geotailnet→WS
  ii)
「あすか」の場合
 #1→ssocnet→ファイルサーバ→ astronet→WS
ところで、#1の運用時間ですが、月〜土の6日間は連続運転し、日曜日から月曜日の明け方にかけては、衛星運用がなく計算機利用者がいなければ停止します。衛星運用関係者には毎週「#1、今週の運転予定」を配布、運転時間の徹底をはかっています。

余談その3)
 #1の主メモリ容量はどのくらいか、御存知でしょうか(答は末尾)。いまではWSでも積んでいる大きさです。小さい実メモリにたいして大きいプログラムを実行したり、処理の多重度を上げていくとページングが頻発し、スループットが急激に落ちます。このことが問題になったのが、「GEOTAIL」テレメータデータ伝送での滞留発生です。F社は性能測定ツールPDL/PDAに強いSEを連れてきて解析にあたらせたが、原因を特定できないでいました。それまでの経過をききPDLリストを見ると、ページング回数が異常に大きいように思えたので、受信処理のバッファを小さくしてもらいました。これで当面解決しました。定常時の計算機の様子を知らないと優秀なSEであってもなかなか問題が発見しにくいもの。「日頃の状態を把握しておくことが原則」とはいろいろな本に出てきますよね。 (答:32メガバイト)

 次回はちょっと寄り道して、筆者が作った(作っている)プログラムについて紹介します。
(周東 晃四郎)


先頭へ


 

大型計算機に関するお知らせ

氈D課題更新手続きについて

 現在利用されている課題の有効期限は、3月31日迄となって居りますので、次年度も引き続き利用される課題の更新手続きは、3月18日(金)までにお願いします。課題申請用紙は、3月3日(木)にお送りしましたので御利用ください。

.大型計算機年度末処理について

 毎年行われている年度末処理を今年は、3月30日(水)・31日(木)の2日間を予定して居りますのでよろしくお願いします。
年度末処理では、次の事項を行います。

・システムバックアップ
・年間ジョブ集計,課金集計処理
・課題登録,更新処理
・マスタファイルの切り替え
・重大障害修正作業と確認

  *
30日の朝から作業が行えるように、29日夕方に長時間ジョブのイニシエータを停止させて頂きます。

  *
M1800,M770#2のMSPにおけるジョブ出力結果は、MTにバックアップを取ってありますので、必要な方は4月1日以後内線2063高橋まで連絡して下さい。

  *
課題の更新をしない方は、3月29日までにプログラム・データのMT吸い上げを行い、ファイルの消却をして下さい。

  *
M770#2は、30日の運用は可能ですが、31日は停止となります。衛星運用で必要な方は関口宛申し込んで下さい。

  *
年度末処理で2日間運用停止をした代替えとして4月2日(土)・3日(日)M1800を連続運転します。

尚、VPP500は自動運転モードの運転です。

。.VPP500のPE並列による使用料金の計算

 ジョブ課金の計算方式は以下の通りです。    

X=課金額
T=一番長いPEのCPU時間
 (T:4時間以上10時間までは無料)
N=PE数
K=0.6……係数

「.大型計算機3月・4月の保守作業予定

M:システムメンテナンス

3/18(金)
9:00〜13:00
3/20(日)
9:00〜18:00
3/30(水)9:00〜
31(木)21:00
4/15(金)
9:00〜13:00
M1800   年度末処理 
VPP500M 年度末処理 
M770#2  年度末処理M
SIRIUS M  

以上を予定しておりますので、ご協力お願い致します。
(関口 豊,SIRIUS関係:加藤 輝雄)


先頭へ


編集発行:文部省宇宙科学研究所
宇宙科学企画情報解析センター
〒229 神奈川県相模原市由野台 3 -1-1 (Tel 0427-51-3911,内線 2611)