前号へ 次号へ 宇宙科学企画情報解析センター ISASホームページ バックナンバー


第56号 1998年6月19日発行

目次


先頭へ


 

宇宙運用システムの新技術
(第3回 パケットテレメトリの分配方法)

 前回はパケットテレメトリという新しいテレメトリ伝送方式の中身についてお話ししました。今回はパケットテレメトリを使う場合の地上におけるデータ配布の仕組みについてお話しします。

 パケットテレメトリでは、テレメトリをパケットという可変長の箱に入れて伝送します。パケットのヘッダには APID ( Application Process ID ) と呼ばれるデータの発生元を表す識別子が書き込まれます。衛星と地上との間の回線上では、パケットをフレームという固定長の箱の中に入れて送ります。フレームを送るときに、別々の種類のフレームの列をまぜて送ることもできますが、この場合の各々のフレーム列は仮想チャネルと呼ばれます。それぞれの仮想チャネルには VCID ( Virtual Channel ID ) と呼ばれる番号が割り当てられ、 VCID の値は各々のフレームのヘッダの中に書き込まれます。

 さて、地上でテレメトリを受け取ったとき、すべてのテレメトリデータを同じように処理するわけではありません。ある種類のデータは、衛星の状態を確認するために可視時間中にリアルタイムに衛星管制装置で処理されます。ある種類のデータは、ある程度時間をおいてから解析用の装置で処理されます。このように、データの種類によって処理されるタイミングも違いますし、処理される装置も違います。パケットテレメトリでは、このような処理の仕方の異なるデータを VCID とAPID に基づいて区別します。

 簡単な例を使ってもう少し詳しく説明しましょう。衛星から送られてくるデータには、衛星で発生したデータがそのまま送られてくるリアルタイムデータと、データレコーダに一旦蓄積されてから送られてくる再生データとがありますが、この二つのデータは典型的には VCID によって区別されます。また、データの発生元あるいはデータの内容に従って APID がそれぞれのパケットに割り当てられます。

 通常は、リアルタイムデータはリアルタイムに処理され、再生データは少し時間をおいて処理されますから、地上でテレメトリを受信したとき、リアルタイムデータはすぐに配布され、再生データは一旦蓄積されてから配布されます。この区別は VCID によってなされます。また、データの処理をする装置には、それぞれの装置が受信したいデータの VCID と APID の組に基づいてデータが配布されます。この様子を模式的に表したのが下の図です。話をわかりやすくするために、この図にはかなり単純な例を示しましたが、重要なポイントは「データを配布するタイミングも配布する相手も VCID と APID の組によって決定され、データの配布はパケット単位(場合によってはフレーム単位)でなされる」ということです。




(山田 隆弘)


先頭へ


 

ネットワークの話
--最近のネットワーク事情--

〜 SINET について 〜

 SINET と米国のネットワークとの接続は、学術情報センターの方々の御尽力もあり、今ではかなり通信事情も良くなってきています。

 日によっても時間帯によっても違いますが、例えば JPL の FTP サーバからのファイル取得であれば、40〜70 KBytes/s 程度の速度でデータを転送できます。

 また複数のファイルを同時に取得すれば、さらに短い時間でデータを転送できます。他に使っている人がいなければ、複数のファイル転送を合算して JPL から 200 KBytes/s以上の速度でデータを取得できるようです。(宇宙研と SINET との間の通信速度が 3 Mbpsですので、自ずと上限はありますが)

 もちろん米国内にも様々なネットワークがありますので、所によって通信速度には大きな開きがありますし、障害等の発生時にはデータを取得できないといった問題は考慮しておかないとなりません。

 SINET と国内の諸ネットワークとの接続も、比較的良好になりつつあります。具体的にどの程度快適に使えるかは時間帯や対象のサイトによって異なりますので、皆さんも実際に試されて、使い勝手を教えて頂ければ幸いです。


〜 所内 LAN について 〜

 所内 LAN は昨年度の ATM ネットワークの導入に伴い、基幹 LAN の強化がはかられました。既存の FDDI を基幹 LAN とした支線は、相当混雑している所があり、中には IP アドレスが枯渇寸前に至っている所もあります。今後の所内 LAN への接続は ATM 側の支線に接続されることをお勧めします。基本的には従来の 10 BASE-T 用の機器はそのまま ATM ネットワーク側の情報コンセントにもお使いになれますので、ATM ネットワーク用に発行された IP アドレス等の情報を設定して頂ければ、従来の機器でも ATM 側の LAN に接続することが可能です。

 ATM ネットワーク側の情報コンセント(赤色のコンセント)は従来の 10 BASE-T や高速の 100 BASE-TX を自動的に認識するようになっており、また不要なデータは他の部屋のネットワークとやりとりしないようになっています。1台だけ ATM ネットワーク側に接続しても際立った違いは見られないかも知れませんが、複数の機器でファイル共有や NFS 等を利用している場合には、それらの機器をまとめて ATM ネットワーク側へ移行することによって、一層快適なネットワーク環境を得られるようになっています。


〜 AppleTalk について 〜

現在 AppleTalk は大きく分けると

 本館 3F〜8F の系統
  <ゾーン名:A3F-A4F,A7F-A8F,Ethertalk 2(A3F-A8F)>

 FDDI を基幹とする系統
  <ゾーン名:ISAS Backbone>

 ATM を基幹とする系統
  <ゾーン名:ATM_XXXX>

とが相互に乗り入れており、この度新たに

 KSC のSINET 接続用 LAN (133.74.96.0, 133.74.97.0)
  <ゾーン名:KSC Mac LAN<96>,<97>>

にも AppleTalkの ゾーンを設定し、相模原の AppleTalkとの相互乗り入れの試験運転を始めました。 KSC からの AppleTalk の利用は、相模原内での利用に比べると若干反応が遅くなりますが、小規模のファイル転送程度であれば、あまりストレスもなく利用できるかと思われます。


〜 ダイアルアップ(PPP)接続について 〜

 ATM ネットワーク機器の導入にあわせて、ダイアルアップ用ルータも用意されました。これは所外から端末(パソコンなど)を使ってモデム経由で電話をかけ、公衆電話回線を使って所内の汎用ネットワークに接続するためのルータです。

 従来、所内ネットワークに接続されている端末機器にアクセスするには、大型計算機のアカウントを持っている必要があったため、利用者が限られてしまい、またアクセス形態も「ある端末にログインする」という形をとるため、所内ネットワークの利用法が限られていました。

 今回導入されたダイアルアップルータを利用した場合、一般に電話回線を使用したネットワーク接続に用いられている PPP (Point to Point Protocol) という規約をつかってルータにアクセスし、ユーザ認証の手続(ユーザ名とパスワードを入力するというような)を経て、所内ネットワークに接続でき、その後はあたかも所内ネットワークに直に接続しているかのような感覚で汎用ネットワークを利用できるようになります。これによって、これまでは直接メールサーバにログインしなければ読めなかったメールが、普段使っているメールソフトを利用して読むことができるようになります。その他にも所内ネットワークに接続してできる作業のほとんどを行うことができます。

 現在、今年度8月中からの利用を可能とするべくこのルータのセットアップを急いでいるところです。接続を行う側の端末のセットアップには多少の知識を要するかと思いますが、もしご不明な点などございましたら、PALIN センターまでお知らせ下さい。

 また、今回モデムを利用したアナログ回線経由での接続の他にも ISDN を利用したデジタル回線経由での接続もできるようにルータのセットアップを行う予定でおります。現在、三陸能代などの各施設とのネットワーク接続に ISDN 回線を利用していますが、回線数が少ないため、つながりにくいなどの不満も少なくありません。これへの対策として、「INS1500」と呼ばれる ISDN 回線の導入を考えています。これは 64 kbps の帯域の回線を同時に 23 回線用意できるといったもので、これにより各施設間の通信を確実にし、また各種実験などでの少量のデータ転送などにも対応できればと思っております。

 ダイアルアップサービスの開始時期につきましては、改めてこの PLAIN センターニュース紙上でお知らせすることにしておりますので、ご注目下さい。
(三浦 昭、長木 明成)


先頭へ


編集発行:文部省宇宙科学研究所
宇宙科学企画情報解析センター
〒229 神奈川県相模原市由野台 3 -1-1 (Tel 0427-51-3911,内線 2611)