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第57号 1998年7月14日発行

目次


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宇宙運用システムの新技術
(第4回 標準データ伝送方式:SDTP)

 前回までパケットテレメトリの基本的な仕組みについて説明しました。今回と次回は、前回までの議論に基づいて、宇宙研で現在開発している運用ソフトウェアの基本的な部分についてお話しします。

 宇宙運用のためのソフトウェアにはいろいろなものがあります。例えば、コマンドデータを作成し送信するためのソフトウェアや、衛星の状態を表示し監視するためのソフトウェア等があります。これらのアプリケーション・ソフトウェアは、計算機に備わっているオペレーティング・システム(OS)等の基本ソフトウェアの機能を利用します。例えば、計算機間でデータのやりとりをするためには TCP/IP 等のような標準的なプロトコルを使用します。

 さて、ある運用ソフトウェアが地上局で受信中のテレメトリの中のある特定のデータを受信して処理したいとしましょう。このようなことをするためには TCP/IP だけでは不十分で、テレメトリ受信用のソフトウェアを作成する必要があります。ところが、パケットテレメトリを使用し、受信したいデータを VCID と APID の組み合わせとして指定できるようになっていると、特定のアプリケーションにも衛星にも依存しない汎用のテレメトリ受信ソフトウェアを使用できるようになります。つまり、テレメトリ受信ソフトウェアをあたかもOS の一部であるかのように作り、一つのテレメトリ受信ソフトウェアを全衛星、全アプリケーションで共通に使用することができるようになります。

 宇宙研では、以上のような考えに基づいて SDTP (Space Data Transfer Protocol ) というデータ伝送用のプロトコルを開発し、PLANET-B「のぞみ」 以降の運用システムで使用しています。SDTP では、テレメトリのみならずコマンドや測距データなども同一の方式で扱えるようになっていますし、リアルタイム伝送だけでなく一時的に蓄積されているデータを受信するのにも使用できます。SDTP は衛星の試験時にも運用時にもシステム全体で共通に使用します。すなわち、SDTP を用いると、相模原にいても内之浦にいても、試験時のデータでも打ち上げ後のデータでも、リアルタイムデータでも過去のデータでも、同一のインタフェースで受信を行うことができます。SDTP の中では、前回解説したようなデータ分配の仕組みを利用しているのですが、アプリケーション・ソフトウェアはそのような仕組みを意識する必要はありません。

 このように、データ伝送についてはアプリケーションにも衛星にも依存しない仕組みを作ることができました。宇宙研では、さらに、パケットの中身についても、アプリケーションにも衛星にも依存しない標準的な扱いができるように SIB(Spacecraft Information Base )というデータベースを開発しています。次回は、このデータベースの話をします。                 



(山田 隆弘)


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GEOTAIL 衛星データ試験公開開始のお知らせ

 科学衛星データベース DARTS ではすでに 「あすか」及び「ようこう」衛星のデータを公開していますが、7月下旬より「GEOTAIL」衛星データを試験的に公開を開始する運びとなりました。

DARTS のホームページ (http://www.darts.isas.ac.jp) 中の "Space Plasma Physical Database" というエントリからデータペースへアクセスができることになります。

今回、公開されるデータセットは GEOTAIL 衛星搭載測定器の中、磁力計 ( MGF ) と低エネルギー粒子計測器 ( LEP ) のデータです。
磁力計については 3 秒値のベクトルデータ、粒子については 12 秒値のプラズマ・モーメント値(密度、速度 3 成分、温度)、軌道情報を自由に閲覧することができるようになります。

具体的にはユーザが任意に指定した日、 時刻の

(1) Webプラウザ上のプロット表示(図参照)、
(2) 同じプロットの PostScript ファイル、
(3) データの ASCII ダンプファイル、

の3つの形態でデータにアクセスすることができます。

利用に際しては "Space Plasma Physical Database" のページにある利用者登録を行なってください。

「GEOTAIL」のデータベース利用ではセンターの解析サーバを使用しませんので、この利用者登録は「あすか」、「ようこう」の利用者登録と異なることにご注意ください。

利用者登録後、データ検索ページへのアクセスが可能となります。データ検索ページでは、年月日、及び、希望するデータ区間の先頭と最後の時刻、使用する座標系を指定してプロットボタンを押すだけで図のようなプロットや ASCII ファイルを得ることができます。

これらのデータの利用に際しては、各観測器 PI からの注意事項が利用者登録時に表示されますので、注意事項をよく確認の上データを利用して頂くことをお願い致します。

粒子データについては今回はプラズマ・モーメント値のみの公開となりますが、今年の秋から来年の早々までを目処にエネルギースペクトルや 3 次元速度分布関数のデータも順次公開される予定ですので、こちらの方もご期待ください。



(篠原 育)


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大型計算機に関するお知らせ

1.大型計算機の7.8月の保守作業の予定
 



※1M:システムメンテナンス
※2各計算機共事前にイニシエータクローズ処理は行いませんので、作業開始の 8 時には終わる様計画的にジョブの実行をして下さい。 尚、VX / 2 はジョブフリーズ、GS 8400 / 20 はジョブのセーブホルト処理により保守作業を行います。


2.モデム経由公衆電話回線番号の変更について

 5月号のニュースでお知らせしましたが、相模原キャンパス内のダイヤルイン導入に伴い、5月18日(月) 8:30 より公衆電話回線番号が変更になり下記の通りとなっています。

(a)MSP GS 8400 / 20 マシン用モデム F 1935 TA

(1)回線速度 2400 bps TTY 0427−59−8483
(2)回線速度 2400 bps BSC 0427−59−8484


(b)UNIX マシン用 NET BLAZAR 経由

(1)回線速度 300〜9600 bps TTY 0427−59−8485 0427−59−8486
(2)回線速度 300〜14400 bps TTY 0427−59−8487 0427−59−8488


(関口 豊)


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編集発行:文部省宇宙科学研究所
宇宙科学企画情報解析センター
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