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第33号 1996年7月8日発行

目次


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宇宙研計算機の使い方
--- 「DECα8200を使おう」の巻 ---

 H研究室でのある午後の日のことです。今年大学院に入ってきた紗月さんは、衛星のデータを使ってなにやら複雑な統計処理を行いたいと考えていますが、研究室にあるワークステーションでは計算能力が足らなくて困っています。そこで先輩の大吾君に、宇宙研のセンター計算機をどう使えばよいのか教えてもらおうとしています。

 紗月:ねえ大吾君、ワークステーションでは CPU能力が足らないのだけれど、センターの計算機を使うことが出来るかしら?

 大吾:先生に頼んで課題登録をすれば、簡単に使えるよ。それに大学のセンター計算機に比べてCPU課金が10分の1程度以下だし、そのうえJOBが込んでいないから快適に使えるよ。宇宙研では、目的が異なる計算に対応できるよう幾つかの異なる特徴を備えた計算機が導入されているんだ。

1)スーパーコンピュータとして富士通のVPP500と呼ばれるベクトル・並列計算機、
2)大きなメモリー(2GB)を必要とする計算には富士通のVX2と呼ばれるベクトル計算機、
3)スカラー計算機としてDECα8200があるんだ。
 これらはUNIX計算機だけれど、これ以外にMSPと呼ばれるOSの計算機としてGS8400/20があるよ。紗月さんの場合は、UNIX計算機を使えばいいと思うけど、具体的にどんな計算を考えているの?

 紗月:簡単に言うとね、GEOTAIL衛星の観測した粒子エネルギースペクトルに対してマックスウェル分布関数のフィットをやってみたいの。プログラムはNumerical Recipes (Cambridge Univ Press) に載っていたのを少し書き替えたものを使っているの。一つのデータに対しての関数フィットは直ぐに終わるけど、多くのデータについて統計処理したいのでかなり時間がかかるの。スパコンを使えばいいの?

 大吾:Chi-Square フィトのプログラムだね。たぶんスパコンはダメだと思うよ。スパコンはベクトル計算機だから、大きな配列をDOループの中で使う場合はベクトル化率が上がるけど、大きな配列を使わない計算だと宇宙研のスパコンを使うのは得策じゃ無いな。

 紗月:ベクトル化率ってなあに?さっき大吾君が言ったスカラー計算機とかベクトル計算機ってなんなの?

 大吾:正確な説明は難しいけど簡単に言うと、一般にスカラー計算機では計算の演算命令が逐次的に行われ、一方ベクトル計算機では、例えばN個の浮動小数点加算ループを計算する際、浮動小数点処理の幾つかの命令(指数部の比較、仮数部の桁合わせ、仮数部の加算及び加算後の正規化など)を配列毎に独立に並行処理するんだ。特別のベクトルプロセッサを備えているんだ。だから、大きな配列を持つ変数や定数の四則演算が、繰り返しの数が多いDO文の中にあればベクトル計算機向きだし、DO文がほとんどないプログラムや条件文が沢山含まれているプログラムは、スカラー計算機向きなんだ。ベクトル化率は、プログラム全体の処理時間に対するベクトルプロセッサ上の演算計算時間比率のことをいうんだ。だから、きっと紗月さんの場合は大きな配列を使っていないと思うから、DECα8200の高速スカラー計算機を使うのがよいと思うよ。VX2や VPP500のようなベクトル計算機でスカラー計算も速く処理できるものがあると本当は一番いいのだけれどね。プログラムを見せてごらんよ。簡単な場合でベンチマークをやってみようか。紗月さんと大吾君が行ったベンチマークの結果
DECα8200    7秒
VX2   47秒
グラフィックサーバ(Power Indigo2) 58秒
H研究室のSUN4/10    2分01秒
 (注、一般のベンチマークは、様々な異なった計算を含んだ多種類のプログラムをもとに行います。そのためこの結果は計算機能力の一面しか表していない可能性があります。DECαがVX2に比べて速い値が出ていますが、スカラー計算対しては一般に2倍から10倍程度と考えられます。)

 紗月:研究室のワークステーションよりセンター計算機のが速いのね。でも、センター計算機は週末とか夜中は、電気代節約や計算機稼働率を上げる為に止めているのじゃないの。センター計算機って小回りが利かないのよね。それに困ったとき助けてくれるプログラム相談員はいないんでしょ。

 大吾:これは紗月さんのプログラムの場合で、ベクトル計算なら断然VX2とかVP500 が速いと思うよ(次回はベクトル計算機の宣伝をする予定です)。センター計算機は使いにくいと言うけれど、UNIX計算機は年中無休だよ。3カ月に一回程度の保守点検があって止まるけれどね。いまのところ計算機利用者数が多くないから快適に使えるよ。紗月さんも課題登録をして使ってみるといいよ。プログラム相談員は宇宙研にはいないけど、ニュースサーバのPARIS(先月号の三浦さんの記事を参照)に投稿すれば、きっと誰かが助けてくれると思うよ。

 紗月:そうね、使ってみることにするわ。エネルギースペクトルの関数フィットで、プラズマの熱化について面白い結果が出たら、そっちの話も聞いてね。今日はどうも有り難う。
(星野 真弘) 


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一般公開案内

 今年も恒例の一般公開の夏がやってきました。前回、PLAINセンターでは「インターネットナビゲーション」と銘打って、昨年9月に公開されました、「宇宙研ホームページ」を暫定版としてお披露目いたしました。会場にはたくさんの方々にお越しいただきまして、大好評のうちに終了いたしました(と思っております)。ホームページの開設・公開以来、アクセス件数はつねに非常に高く、現在では「宇宙研の紹介」という重要な役割の一翼をになっていると自負しております。 今年の公開でも、最近のパソコン熱にあやかって、さらにグレードアップしたホームページを皆様にご披露する予定になっております(二匹目の・・・とは私の個人的な感想ですが)。インターネットが、「どこででも見ることができる」という性質のものですので、「わざわざ見に行くことも・・・」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、 当日は「見に来て良かった」と思えるものをご用意してお待ちしております。
公開日時 : 平成8年 8月3日(土) 
10時 〜16時30分
会場 : 飛翔体環境試験棟 組立室
(長木 明成)


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大型計算機に関するお知らせ

氈D大型計算機の7・8月の保守作業の予定


M : 計算機メンテナンス

*1:VXのNQS については7月14日12時0分にジョブキュ−をクロ−ズします。TSSについては利用者の責任でメンテナンス開始までに終了してください。終了していない場合はキャンセルします 。  

*2:DEC Alpha のジョブについては特に時間指定の入力制限はしませんので、利用者の責任でメンテナンス開始までに終了して下さい。終了していない場合はキャンセルします。 GS8400 はセ−ブホルト処理をしますので流れていても結構です。

*3:SIRIUS デ−タファイルの定期保守を行います。(担当:加藤 )    

VX/2 NQS のサ−ビスを行って居ります。利用法は大型計算機利用の手引 UNIXサ−バ群を参照願います。      

。. VPP PE 並列割増係数 0.6 を 0.0 に変更して、PE 並列数に関係無く同一料金になりました。大いに利用して下さい。    

アプリケ−ションサ−バ DEC Alpha のCPUリミットを10時間から100時間に変更しました。      
(関口 豊)


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編集発行:文部省宇宙科学研究所
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