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第22号 1995年8月9日発行

目次


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松方先生の転任

 PLAINセンターの松方 純助教授が7月1日付で、学術情報センターに転任されました。宇宙研在任の4年の間は、スーパーコンピュータを含む全部の大型計算機についてリプレース及びその準備作業という大きなイベントがありました。また、所内LAN、外部の研究ネットワークの目を見張るような進展、ワークステーションによる分散処理も、急速に進みつつあり、宇宙研に限らず世界の情報処理分野は一つの大きな曲がり角に来たことは間違いないようです。何しろ、あの巨大なIBMが赤字を出したりした時代です。このような時期に松方先生の活躍は素晴らしく、ネットワークを含めて、宇宙研のデータ処理システムの大きなガイドラインを松方先生が設定されたと言って過言ではありません。この時期に松方先生を学情に「さらわれて」しまうのは、実に心細い気がしますが、今後も、より広い立場で、宇宙科学の情報処理を導いてい頂くことを期待し、併せて、松方先生の一層のご活躍をお祈りいたします。
(中谷 一郎) 


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編集委員長の交替

 月刊 PLAIN センターニュースも今月で第22号を迎えましたが、長い間これの編集に努力していただいた松方 純氏が、この度学術情報センターへ転任され、そこで編集委員長の仕事を長瀬が引き継ぐことになりました。大変頼りない委員長ですが、幸い小原氏が副委員長(実は影の委員長)としてサポートしてくれますし、河田さんは引き続きタイプ、版組み、印刷、発送を担当してくれますので、何とか欠刊、廃刊の憂き目を見ずに継続出来るのではないかと思います(乞うご期待)。今後とも御愛読下さい。
(長瀬 文昭)


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新人紹介

 PLAINセンタ−に新たに加わった根来 均君を紹介します。根来君は今年3月に大阪大学理学部の博士課程を終了され、ブラックホール天体、白鳥座Xー1の「ぎんが」による観測に基づいた研究で博士論文を書き、学位を取得されました。この度宇宙研のCOE研究員として採用され「あすか・データベース」プロジェクトに参加することになりました。現在 PLAIN センターではアーカイブデータベースの構築を始めようとしているところであり、根来君には「あすか」に限らず、広くこのアーカイブデータベースの構築全般に携わっていただく予定です。特に「ぎんが」、「ようこう」、「あすか」等天文関係の衛星の一般公開用データベースの構築を進めていただくことを期待しています。 
(長瀬 文昭)


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宇宙研一般公開顛末記
PLAINセンタ−編

 PLAINセンタ−では、先日の一般公開の一環として「INTERNET NAVIGATION」と題した展示を行いました。今回は、近年急速な発展を見せているインタ−ネットの醍醐味を気軽に味わっていただけるよう、WWW をテ−マにした展示としました。順調な客足と、皆様のご協力のお蔭で、この企画も成功裏に終わりましたことをここに感謝いたします。

 最近のインタ−ネットの紹介には、必ずと言って良いほどWWW (World-Wide Web) が取り上げられるようになりました。WWWでは、手軽にインタ−ネットの世界を渡り歩くことができると同時に、簡単に情報発信者になることもできるため、近頃では、小学校から大学・企業等に至る、様々な所でWWWホ−ムペ−ジが作られるようになっています。

 先月のPLAINセンタ−ニュースでもお知らせしましたように、現在PLAINセンターでも宇宙研ホームページを鋭意作成中です。今回の企画では、この宇宙研ホームページの評価版や、所内の既存の各研究系・研究室のホームページを所内外の方々に披露することとしました。

 当日は本館4階会議室に端末(X端末やパソコン)を8台並べ、それぞれに適したブラウザ(WWWの情報を見るためのソフトウェアの通称。Mosaicおよび、Mosaicから派生した各種ソフトウェアが有名です)を起動しておき、来場の方々に実際に使っていただくこととしました。それと同時に、当日宇宙研ホ−ムペ−ジを提供したWWWサ−バ機も並べて展示し、どこに情報を発信しているのか見えるようなデモンストレ−ションも行いました。

 内容としましては、所内の各研究系・研究室の方々からもホ−ムペ−ジを提供して頂きましたので、かなり充実したものとなりました。一般の方にどの程度興味を持って頂けるのか、また十分堪能して頂けるだけの時間的(台数的)余裕があるのか、少々不安もあったのですが、それも杞憂に終わったようです。

 なお、今回の展示に関連して頂きましたご意見等は、今後の宇宙研ホ−ムペ−ジの作成の参考にさせて頂きたいと存じます。
(三浦 昭)


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「あすか」衛星の運用とデータ処理
ー(その4)コマンド作成・衛星運用・データ処理

 SPIKE Scheduler により1週間ー10日間分の観測計画が製作、公表されると、この分の運用責任者(「あすか」チームメンバーの内、主に宇宙研の助教授・助手が当たる)は各観測者と e-mail で連絡を取り、観測ターゲットの位置、観測モード等の再確認をする。そしてこの担当者はその分について、星姿勢計の追尾用基準星(ガイドスター)の選定、姿勢制御用コマンドの作成、姿勢制御シミュレーション等を行い、観測のための基礎資料を調える。

 毎日の衛星の運用は相模原に2人、KSC に2人、計4名の当番が張り付いて行われる。相模原の当番は中間ファイルに蓄積された観測モード、追尾用基準星のパラメーター、姿勢制御パラメーターを組み込み、さらにSAA (South Atrantic Anomaly) 通過時に検出器の高圧を下げる、観測ターゲットの地没時にデータレコーダーを止める(又は記録ビットレートを下げる)、受信を約束されているDSN各局通過時にデータの Down-Load をセットする等必要なコマンド群を組上げてKSC受信時の Real time Command および Up-Load すべき1日分のプログラム化コマンド系列を作成、チェックした上でこの一連のコマンド計画をKSCへオンライン伝送するとともに、FAXで運用の概要、注意事項等を指示する。

 KSCでの衛星の運転は2人の研究者、通常はスタッフ等シニアーメンバー(通称上位ビット)と大学院生等ジュニアーメンバー(通称下位ビット)、およびメーカーから派遣された技術者4名(アンテナ担当、受信機担当、コマンド指令卓担当、データ伝送担当)が1組になってこれに当る。「あすか」の様な Near Earth Orbit の衛星では通常約90分毎に12ー15分づつ、1日5回受信を行う。KSC当番は伝送されたコマンド計画に誤りがないかチェックし、またこれがコマンド送信機系に正しく設定されているか等確認して受信に備える。受信中は衛星の稼働状況に異常はないかチェックし、必要なコマンド送信、テレメトリデータの受信を行う。KSC当番はさらに受信後観測データの Quick-Look Analysis を行い、1日の受信の終了後観測状況の報告を行う。この観測レポートは LaTex 形式で規格化された書式に書かれ、e-mail により宇宙研を始め国内の関係大学、研究所および NASA/Goddard Space Flight Center に送られる。

 観測されたテレメトリデータはKSCで受信されるだけでなく、NASAの協力により、米国DSN (Deep Space Network) 各局でも受信される。現在はNASA傘下の Goldstone 局、Camberra 局、Madrid 局、Wallops 局、Santiago 局を使用している。これにより早いビットレートでの観測時間が増加し、観測効率が著しく向上する。これらDSN各局で受信されたテレメトリデータは米国JPLで集約され、専用回線で宇宙研に転送される。

 集積されたテレメトリデータはまず基礎的な編集処理が行われて、宇宙研の基本データ台帳ともいえる SIRIUS Data Base に登録される。この SIRIUS Data Base となったテレメトリデータの星姿勢計およびジャイロデータを用いて、刻々変動する姿勢の微妙な揺らぎを含めて衛星の姿勢決定が行われる。また「あすか」のデータの科学解析は現在では、国際的な Network 網で有機的に結合されたワークステーション群を用い、 UNIX 対応の解析ソフトウエアーおよび解析支援ツールを用いて行われる。生の SIRIUS Data はこのような使用方には不向きであるので、これらはFRF (First Reduction Files) と呼ばれる科学解析用のファイル (Unix database)に再編集される。国内の観測者にはこのFRFファイルに変換されたデータが配布される。さらにこのFRFファイルは NASA/Goddard Space Flight Center において、標準的なデータの選別、較正が行われた上、国際天文連合において協定されている天文データの国際規格である FITS 形式に変換される。米国およびヨーロッパの観測者にはこの FITS 形式に変換されたデータが配布される。このようなデータ変換により、「あすか」のデータ解析を行う際に、汎用に開発され、 FITS files にアクセス可能な世界中の天文データ解析ソフトウエアーが適用可能となる。さらにこれにより「あすか」のデータを他の衛星や他波長の観測データと合わせて同時に総合的に解析することも可能となる。


図4.コマンド作成から、衛星追跡受信、データ取得・編集・配布までの「あすか」運用の流れ図。
(長瀬 文昭)


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大型計算機に関するお知らせ



 ※1 VPP500の定例日は15日(金)ですが、休日のため、翌週の18日(月)に変更になります。

  ※2 SIRIUSの保守作業を17日(日)に行います。(担当:加藤) 

 同時にSSOC#1の保守作業も予定して居ります。 (担当: 周東)     

 以上の通り、保守作業を予定して居りますので、宜しくお願いします。
(関口 豊)


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編集発行:文部省宇宙科学研究所
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