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第16号 1995年2月6日発行

目次


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スーパーコンピュータとベクトル並列計算

第10回 最後に  

 スーパーコンピュータは決して特殊な計算機ではありません。最近では、スーパーコンピュータ向けではない計算をやらせても最先端の汎用機やワークステーションと同じ程度の性能を出すことができるようになってきました。ほんとうに近い将来、値段的にも、そしてスペース効率や電力消費の点でもワークステーションを凌駕するデスクサイドスーパーコンピュータが登場してきます。従って、演算作業に限って言うと汎用機や高性能ワークステーションとの境界はなくなってきて高速演算サーバという位置づけになるでしょう。これからの宇宙研の計算機システムとして何が最適かはみなで議論していかなければいけませんが、より多くの人が利用できるスーパーコンピュータ(演算サーバー)、衛星データベースを扱えるデータサーバー、そして強いネットワークの提供の3つが大切ではないかと考えています。

 もう1つ欠けているのが、画像処理です。理学、工学にかかわらず多くの方がワークステーションやパソコンなどでCG(コンピュータグラフィックス)をお使ではないでしょうか。このような処理は手元で行う必要があるのでセンターに高性能のグラフィックワークステーションが置かれていても誰も利用しないでしょう。一方、総ての研究室に配分するのは予算的に無理があります。しかし、演算サーバーと同じように高速のLANが利用できれば、画像処理のサーバーとして利用することができます。演算サーバーやデータサーバーと同じようにグラフィックスサーバーと考えるとわかりやすいかもしれません。また、アニメーション作成などは年間数回程度しか作らないけれど、必要だなあと思われている方も多いのではないでしょうか。私のところでは必要にせまられて持っていますが、このような装置を各研究室で購入するのはもったいない気がします。アニメーションの作成なども画像処理サーバーを利用すれば、大概の作業を研究室内で行ってビデオアニメーションを作成することができます。こんな形のものがセンターとして用意できればいいなあと(個人的には)思っています。何かご意見があれば、私あてにでもお知らせください。

 最後になりますが、長い間おつきあいいただきましてありがとうございました。これまで10回の記事が計算機を利用されている方にとって少しでもお役にたてば幸いです。わかりやすく書こうとはしてきましたが、思いつくままに書いてきましたのでなじみのない方には少々とっつきにくかった部分もあると思います。この点に関してはお詫び申し上げます。
(藤井 孝藏)


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あすか」衛星の運用とデータ処理
ー(その2)観測の公募と審査採択

 前回観測の公募からデータの配布に至る「あすか」の運用の全体の流れを述べたが、本稿ではこのうち公募観測の広報からその選考、採択までのプロセスについてお話しする。第1回にも述べたように「あすか」は日米協力事業としてその製作、運用が行われている。そのため、観測の公募、選考も日米が歩調を併せて行う必要がある。公募観測の広報(AO; Announcement of Opportunity)から選考結果の通知までの流れを図に示す。


 図
「あすか」衛星による公募観測の広報からその選考、採択までの間にネットワーク(メールシステム)、計算機(ワークステーション)上で応募書類(プロポーザル)がどのように管理、処理されるかを示す流れ図。
 公募観測の広報(AO)は実際の観測開始の6ヵ月前に日本側と米国側から各々の国の研究者宛に発行される。日本側では宇宙研の宇宙圏研究班班員に募集書類を配布するほかに、天文学会誌「天文月報」に、詳しい応募要項が宇宙研の「あすか」チームが管理する観測データベース(ODB; Observation Data Base)管理システムの Public Domain から anonymous ftp で取り寄せられる旨アナウンスする。応募の締切は AO を発行してから3ヵ月後とされる(これは NASA ルールに基づく)。

 「あすか」では e-mail によるRemote Proposal Submission system (RPS) を採用している。従って、応募書類(プロポーザル)の提出は、通常の印刷書類(コピー7部)の提出のほか、e-mailによる proposal submission が必要となる。このプロポーザルの作成、投稿を支援し、必要な情報(観測ターゲットの座標、観測モードなど)を統一フォーマットでデータベースとして整理し、その後の運用に供するためにプロポーザルを提出しようとする者には次の支援ソフトが提供される(anonymous ftp で取得可能)。

それらは
 (a)
Latex形式で書かれた応募書式(Blank Proposal Form in Latex)、
 (b)
その応募書式の説明書(Description of the Proposal Form)、
 (c)
応募書類作成及び電子メール投稿の為のソフトウェアー(Software that create and print out the proposal form in Latex and submit it electronically via e-mail)、
 (d)
そのソフトウェアーの使用手引、
 (e)
これまでに観測したターゲットの一覧表(List of observed targets )、
 (f)
「あすか」衛星に関する技術資料(ASCA technical description)、
である。

 日米各々のプロポーザルはまずそれぞれ宇宙研、NASAのデータベースで整理される(PDB; Proposal Data Base)とともに、日米各々の審査委員会において審査され、各々の持ち時間で観測可能な範囲で高得点のプロポーザルから順次採択される(観測開始の約2ヵ月前)。日米各々において国内のプロポーザルの審査が終わると各々の採択ターゲットのデータベース(APDB; Accepted Proposal Data Base)が作成され、これが日米間で交換され、ターゲットの競合等の調査が行われる。そして観測開始の約1ヵ月前にこの調査結果を基に日米調整委員会を開き、競合ターゲットの取捨選択、合併、日米共同観測の調整等を行った上で、最終的な採択ターゲットリストが作成される。この採択ターゲットリストは直ちに日米各々の応募者および関係コミュニティに e-mail によりアナウンスされる。同時にこれらのターゲットには一定のルールに従った通し番号(Sequence Number)が付加され、List of Final Accepted Targets として宇宙研の観測データベース(ODB)管理システムに登録され、以後の観測計画立案、衛星運用コマンド手順作成の原本となる。このように「あすか」では世界中の観測者(注:日本の観測時間には前回述べたように一部 ESA 加盟国からのプロポーザルを含む)がプロポーザル作成時に指定した座標や観測モード等の基本パラメーターは、ネットワークを通してワークステーション群をオンラインで引き継がれ、これに基づいて衛星の運用が行われることになる。観測の長期プラン、短期プランの作成については次回にお話しします。  
(長瀬文昭)


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大型計算機に関するお知らせ

氈D課題更新手続きについて

 現在利用されている課題の有効期限は、3月31日迄となっておりますので、次年度も引き続き利用される課題の更新手続きは、3月17日(金)迄にお願いします。課題申請用紙は3月7日(火)にお送りします。

.VPP500用一時ファイルtmpufs ,tmpvfl及び短期workファイルについて

  tmpufs及びtmpvfl等の短期ファイルの利用が多くなり、利用率が高くなってきたので、各々の磁気ディスク(1.5 GB)を2本ストライピングにより連結して約3.0 GBにしました。

  ファイルの利用期間は作成終了日より原則として5日から10日としますが 、利用率が70〜80%になった場合、作成日の古いものから消去しますので、可能な限り早急にコピーを取って消去して下さい。

  短期workファイルは現在work1とwork2 に分散しているものを2本ストライピングしてwork1としました。(最大10日間・有料)

  尚、長期間使用する大容量ファイルは最大1.5GB,3ケ月間で料金は有料になり利用に当たっては事前に申請が必要です。

。. システム・プロラム相談窓口について

 システム・プログラム相談の窓口は、原則としてSE高橋氏(内線2063)が受け、相談内容の切り分けにより各担当者が対応しますのでご協力お願いします。

  尚、VPP500並列処理プログラム相談については、坂下氏(内線2072)が対応して居りますが、駐在によるプログラム相談は、3月末で終了となります。

「.大型計算機年度末処理について

 毎年行われている年度末処理を今年は、3月30日(木)、31日(金)に予定しておりますのでよろしくお願いします。詳細スケジュール、内容については3月号でお知らせします。

」.大型計算機2月・3月の保守作業予定   

M:システムメンテナンス

※1
M770#2のみ3/31 9:00〜21:00停止(30日は運転可能)
以上を予定しておりますので、ご協力お願い致します。
(関口 豊)


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