前号へ 次号へ 宇宙科学企画情報解析センター ISASホームページ バックナンバー


第15号 1995年1月11日発行

目次


先頭へ


 

スーパーコンピュータとベクトル並列計算

第9回 並列(パラレル)計算機の利用ー3

 最後に最も簡単なパラレル化についてお話しします。計算機を利用する場合、同じような計算ですが、条件がちょっとだけ違うといったケースをたくさん扱うことがよくあります。いわゆるパラメトリックスタディといわれるもので、数値シミュレーションを例にとれば、ロケットの速度などをいろいろ変化させてそのまわりの気流を計算する、などというものです。この場合、計算プログラムも使うデータもほとんどが同じで、異なるのは速度だけです。そこで、プログラム全体を並列化の対象として、図1のように最初と最後に並列指示を入れ、パラメータとなる入力データを読み込むところから並列化の対象としておきます。各PEは同じデータ書式を読み込みますが、そこに入ってくるデータはそれぞれ違ったものとなります。従って、どのPEも式の上では同じ演算ですが、内容の異なるデータを扱うことになり、その結果シミュレーション終了後には各PEでそれぞれの速度に対応するシミュレーション結果が得られることになります。つまり1つ分の時間で7つの結果が得られるわけです。並列化効率はほぼ100%です。


図1 パラメトリックスタディのための並列化

 もっとも、このような作業は並列化をしなくとも可能です。単純に7つのジョブを投入すればいいからです。では、何が得なのでしょうか。1つは、この方法がもっとも簡単な並列化であり、並列化を経験する第1歩として最適である点です。第2は7つのジョブを投入するのに比べて、課金がかなり軽減化される点です(関口さん、ごめんなさい!)。おそらく半分以下ですむでしょう。すでに述べましたが、ベクトル計算に向かないものでも、たくさんのパラメトリックな計算をする場合というのは結構あるのではないでしょうか。汎用計算機M1800やM770で、そのような計算をやられている方は是非試していただきたいと思います。

 以上、(1)DO loopをパラレル処理する、(2)多種の演算をパラレル処理する、(3)複数のケースをパラレル処理する、の3つの場合について並列化の説明をしました。具体的なプログラムの書き換えは、以前にお話ししたとおり、!XOLCという指示行を挿入することで並列部分を指定することとデータの配置を指定することの2つが大きなポイントです。詳細については、並列化の手引きなどセンターから配布される資料をご覧ください。また、星野先生主催の並列化に関する研究会などもときどき開かれますので、是非ご利用ください。

 次回は10回目になります。読者のみなさんもそろそろ飽きてきた(?)でしょうから、次回にまとめを記して一連のスーパーコンピュータ関連の記事を終わりにしたいと思います。
(藤井 孝藏)


先頭へ


 

あすか」衛星の運用とデータ処理
ー(その1)衛星運用の流れ

 「あすか」は「はくちょう」、「てんま」、「ぎんが」に続く日本の第4番目のX線天文衛星で、1993年2月20日に鹿児島宇宙空間観測所(KSC)から打ち上げられた。この「あすか」衛星は日米共同事業として製作、運用が行われており、打ち上げ後2ヵ月間の初期運用、その後半年間の衛星製作チームによる試験観測(PV Phase; Performance Verification Phase)を経て、1993年10月より一般の観測者を対象にした公募観測に移行している。

 最初の公募観測(AO1; 1st Announcement of Opportunity)は1993年10月より1994年4月の期間を対象に行われた。観測時間の割り当ては当初の合意に基づいて、日本の観測60%、米国の観測15%、日米共同観測25%の割合となるよう、それぞれのカテゴリーのプロポーザルが、日米各国の審査委員会、および最終的に日米調整委員会を経て採択された。第2期公募観測(AO2)は1994年5月から1994年11月を対象に同様に観測が行われたが、この AO2から日本の観測時間の10%をヨーロッパの ESA 傘下の各国のX線天文学者に提供することとなった。第3期公募観測(AO3)は1994年12月から1995年11月の1年間を対象に現在プロポーザルの選考が終り、AO3の targets(観測対象)の観測に移行して約1ヵ月経過したところである。

 この間、予期せぬ出来事で衛星がセーフホールドモード(Safe Hold Mode)に移行したり、台風や、地上の送受信器系の故障などで観測が中断したことも時々あったが、観測はおおむね順調に進められ、平均1日1targetの割合で観測が進められている。またPV-phase data で観測後18ヵ月経過したものは今年11月より順次アーカイバルデータとして一般に公開され始めた。

 今回は観測の公募から観測成果が発表されるまでの衛星の運用の流れのあらましを紹介する(機会があれば次回以降にその各部のやや詳細な解説をしたいと思う)。まず「あすか」運用の流れのブロック図を図1に示す。



図1.「あすか」衛星運用の流れを示すブロック図

衛星運用の作業はこのブロック図に示されるように、
(1)
公募観測の広報、選考、
(2)
採択 targets の長期(各AO期間全体)、および短期(1週間ー10日間単位)観測計画の立案、
(3)
日々の運用調整、コマンド作成、
(4)
KSC における追跡、データのモニター(Quick Look Analysis)、
(5)
1次データ(Sirius database および FRF [First Reduction File]) 編集、姿勢決定、
(6)
科学解析用データベース FITS (国際天文連合規約のデータ形式)の作成と配布、および観測記録整理、
(7)
搭載計器の性能モニターおよび機器梗正データの公開、
(8)
解析支援ソフトウエアーの開発、およびその配布、公開、
そして最後は
(9)
観測者によるデータ解析、および論文の作成、発表となる。
 このうち(1)ー(7)は宇宙研を中心に「あすか」製作に参加した関係大学、研究機関の研究者、大学院生(「あすか」チーム;現在メンバーは約100名)が参加、協力してその運用に当たっている。(8)のソフトウエアーの開発、更新は NASA, Goddard Space Flight Center の High Energy Astrophysics Devision のグループが中心になって行っているが、随時日本の「あすか」チームメンバーも協力している。

 (3)ー(8)は勿論 Computer Aid であり、計算機、ネットワークは必要不可欠であるが、(1)においては公募観測の広報がネットワーク(e-mail)により行われ、また e-mail によるプロポーザル投稿システムが採用されているし、また(2)においては SPIKE Scheduler (米国においてハッブル宇宙望遠鏡 [HST] 用に開発された)を適用した観測計画の立案と最適化が行われる。現在では、観測公募から論文作成まで、衛星運用全般にわたって、コンピューター、ネットワーク必要不可欠な道具となっている。各項目の詳細については別稿に譲る。
(長瀬文昭)


先頭へ


 

大型計算機に関するお知らせ

I.ネットワークプリンタについて

 A棟4階・7階サブステーションに設置されているネットワークプリンタの一部に不具合がありましたが、7月16日に完全に修復されて、正常に動作するようになりまし た。

II.8月の定期保守

 8月の定期保守は第3回目の月曜日、19日 8:00〜13:00にGS8400/20、Alphaの保守作業を予定しております。

III.VPP500 OS 緊急修正について

 PEのソフトファイルに関する緊急修正を9月16日(月)9時より行います。又17日(火)は定期保守のため、朝から13時まで運用停止になります。



< マニュアル返却についてのお願い >

 大型計算機用マニュアルがA棟サブステ−ション・B棟オ−プン室に置かれて利用者に利用されて居りますが、最近一部マニュアルが持ち出されて他の利用者が大変困って居ります。心当たりのある人は至急元の場所に返却してください。                         
設置場所 マニュアル名
 
B棟 1Fオ−プン室  GSL使用手引書 V10用(NO.13)
  PFD使用手引書 V10用(NO.18)
A棟 4Fサブステーション  FORTRAN77 EX使用手引書 V12用(NO.8)
  Xウインドウライブラリ文法書Xt編(NO.47)
A棟 7Fサブステーション  FORTRAN77 EX使用手引書 V12用(NO.8)
  FORTRAN77 EXメッセージ説明書(NO.10)

(関口 豊)


先頭へ


編集発行:文部省宇宙科学研究所
宇宙科学企画情報解析センター
〒229 神奈川県相模原市由野台 3 -1-1 (Tel 0427-51-3911,内線 2611)