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第17号 1995年3月13日発行

目次


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ジオテイル衛星」の運用とデータ処理

 地球磁気圏観測衛星であるジオテイル衛星は、日米共同プロジェクトとして1992年7月に米国フロリダ州のケープカナベラルからデルタ・ロケットを用いて打ち上げらました。科学観測機器は日米双方で分担・制作し、衛星本体の制作・試験及び打ち上げ後の衛星運用は宇宙研、そしてデータの受信・処理は日米双方で協力しています。ジオテイル衛星は、高温低密度のプラズマで満たされた宇宙空間での現象を理解することを目標にしております。特に、地球の夜側の磁気圏尾部と呼ばれる領域でプラズマのエネルギーの変換過程を探るのが主な目標です。その広大な磁気圏をくまなく観測するためにジオテイル衛星の軌道は、打ち上げ後2年間程度は月の重力を利用したスイングバイで遠地点を地球から約140万キロの磁気圏の奥深い領域に、またその後は軌道を変えて比較的地球に近い領域で遠地点を約25万キロ近地点を約6万キロという領域に設定されています。観測項目としては、磁場・電場・プラズマ粒子・プラズマ波動の観測を行っています。以下にジオテイル衛星のデータ受信、データ処理の流れを簡単に説明します。

 まず生データから説明を始めますが、ジオテイル衛星から地上に伝送されるテレメトリ・データは2種類用意されています。A系とB系と呼び区別していますが、この生データは両方併せて年間130GB程度に達します。A系は65kbpsのデータで、長野県にある宇宙研の臼田局からジオテイル衛星と交信できる時間帯のみリアルタイムで受信し、一方B系は16kbpsのデータで、衛星に搭載されている2台のテープレコーダを利用して24時間連続的に一旦テープレコーダに記録します。そのデータが世界中に配置されているNASAの深宇宙ネットワーク(DSN)で受信されています。ジオテイル衛星が利用しているDSNの受信ステーションにはマドリッド、ゴールドストーン、キャンベラがあります。これらのA系とB系のデータは、宇宙研のシリウス・データベースにて登録・管理されていますが、B系のデータはまずNASAのゴダード宇宙飛行センターで1次データ処理が行われ、米国の主要なジオテイル研究者(Principal Investigator)に送られます。また同時に日本向けにシリウス・データベース用に編集され宇宙研に送られてきています。

 これらの生データは科学データとしての信頼性を上げるため、様々な観点から評価・較正が施されてます。この2次処理を行ったデータを通常サイエンス・データと呼び、ジオテイル・プロジェクト関係の科学者に配布されて磁気圏の研究に用いられます。さてこのサイエンス・データですが、研究の用途に応じて2種類用意されています。ひとつがKP(Key Parameter Dataで)と呼ばれるもので、NASAゴダード宇宙飛行センターのデータ・センター(CDHF)で処理が行われています。生データから自動的に生成されるこのKPデータは、データの質としてはほとんど未較正であり、時間分解能も粗くデータの信頼度を高めるために約1分間の平均値が用いられています。主に、何時、何処で、どの様な磁気圏の活動が起きたのかを見つける用途に使われます。もう一つのサイエンス・データがSDB(Science Data Base)と呼ばれるもので、各観測装置担当者によって一つ一つデータを吟味・評価しながら作成されています。この作業は自動化することが難しく、残念ながら米国に比べ人手の足りない日本ではデータ・ベース作成が遅れがちになる原因の一つになっています。サイエンス・データはデータ評価を得た後、順次ジオテイル研究者に配布されています。現在これらのデータを用いて研究を行う場合いくつかの制限がありますが、ある一定期間が経過したものは一般の研究者に解放される予定になっています。

 最後に、磁気圏物理の観測的研究方法は、総合観測・解析の方向に進んできており、そのひとつに太陽地球系物理学協同観測計画(ISTP)と呼ばれるものがあります。このプロジェクトは、世界中の宇宙科学研究機関が同時期に複数の観測衛星を打ち上げて、磁気圏の現象を総合的に調べようという試みです。ジオテイル衛星はこのISTPプロジェクトに加入しており、外国では米国NASAのPOLARとWIND衛星、ヨーロッパESAのSOHOとCLUSTER衛星、それにロシアIKIのINTERBALL衛星が加わっています。不幸にして衛星計画の遅れの為すべての衛星が未だ打ちあがっていませんが、近い将来、複数の衛星による同時観測により多角的な磁気圏研究が実現するものとして期待されております。またデータ処理の観点からも、総合データ解析の時代に一般ユーザーが利用しやすい形態を考えて、データ形式やデータ解析のソフトを統一しようとする試みもあります。
(星野 真弘)


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インターネットとの接続を強化
− 学術情報ネットワークと3Mb/sで接続へ

 この一年でわが国の学術研究ネットワークの状況が一変しています。特に学術情報ネットワークのインターネットバックボーン(SINET)が大幅に強化され、昨年の9月からSINETの主要ノード間が6Mb/sの回線で結ばれるようになったことは大きな変化であり、これによりわが国におけるインターネットもようやく本格的なものになってきました。

 PLAINセンターでは、これに合わせてSINETとの接続を従来の384kb/sから3Mb/sに強化する作業を進めています。これは、トラフィックの増加により回線容量が不足し、混雑時には著しく応答が悪くなったりしていたのを解消することを狙ったものです。 機器等の準備の都合で、まず、第一段階として宇宙研と電気通信大学のSINETノードの間に1.5Mb/sの回線を設置し、2月の上旬から本格的な運用を開始しました。その結果、混雑がだいぶ解消されてきました。SINETと米国のインターネットは、2Mb/sの回線で接続しているため、海外とも太いパイプで結ばれたことになります。引き続き第二段階として、4月からの予定で回線速度を1.5Mb/sからされに3Mb/sに引き上げる予定であり、目下準備を進めています。

 今回のSINETとの接続強化にあたっては、関係者ともご相談し、インターネットとの接続をSINETに一本化することになり、国際理学ネットワーク(TISN)との接続はやめることになりました。すでにTISNとの接続のために設置していた学術情報センターと東京大学理学部との間の回線を12月中旬に廃止し、TISNとの接続を終了しました。なお、TISNを通していたDECNETとの接続は、現在SINETを通して行っています。

 今回のSINETとの接続強化の結果、宇宙研はインターネットとの間に太いパイプを持つことになり、ネットワークによる衛星観測データの流通の拡大をはじめ、これまで以上に利用されることが期待されます。ちなみに学術情報ネットワークの強化は、来たる4月からの平成7年度も引き続き行われ、一部ノードが50Mb/s以上の回線で接続されるとのことです。
(松方 純)


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大型計算機システムのリプレースについて

 現在、計算機運営委員会を中心に大型計算機システムのうち、汎用大型計算機(M1800/20)および衛星運用計算機(M770/10 1号機、2号機とも)を平成7年度中にリプレースするための準備を進めています。これまで段階的に分散処理化を進めてきましたが、今回のリプレースでは、各種業務の分散処理への移行が本格的に始まることを想定しています。そのため、各種業務が従来の形で遂行できるとともに、その分散処理化に必要な計算機環境が提供できるようなシステムを構築する必要があります。現在、具体的な構想の検討をしていますが、ユーザのみなさまのご意見をうかがうため、2月9日の第1回に引き続き、第2回の大型計算機リプレースに関する討論会を3月23日に開く予定です。
(松方 純)


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大型計算機に関するお知らせ

氈D課題更新手続きについて

 現在利用されている課題の有効期限は、3月31日迄となって居りますので、次年度も引き続き利用される課題の更新手続きは、3月17日(金)までにお願いします。課題申請用紙は、3月3日(金)にお送りしましたので御利用ください。

 課題更新用申請用紙のフォーマット変更について

 従来は新規と更新の用紙は同一用紙で行って居りましたが、今回から別用紙になりました。(但しM770#2のみ同一用紙)

1.新規課題申請‥‥‥
新規申請用紙(従来フォーマット・MSP用, UXP用)
2.更新課題申請‥‥‥
更新用々紙(新フォーマット)
 ※
更新用々紙には同一予算費目、同一内容のUXP・MSPのセット課題を上段・下段に記入し、提出して下さい。

.大型計算機年度末処理について

 毎年行われている年度末処理を今年は、3月30日(木)・31日(金)の2日間を予定しておりますのでよろしくお願いします。年度末処理では次の事項を行います。

・システムバックアップ
・年間ジョブ集計、課金集計処理
・課題登録、更新処理
・マスタファイルの切り替え
・重大障害修正作業と確認

 ※
30日の朝から作業が行えるように、29日夕方に長時間ジョブのイニシエータを停止させて頂きます。(VPP500は28日夕方)
 ※
M1800,M770#2のMSPにおけるジョブ出力結果は,3月29日までに取り出してください。又、取り出しできなかったジョブ出力はMTにバックアップを取ってありますので、必要な方は4月3日以後、内線2063高橋まで連絡して下さい。
 ※
課題の更新をしない方は、3月29日までにプログラム・データのMT吸い上げを行い、ファイルの消去をして下さい。データのバックアップにはSASAR,SASMVがあります。
 ※
M770#2は、30日の運用は可能ですが、31日は停止となります。衛星運用で必要な方は関口宛申し込んで下さい。
 ※
年度末処理で2日間運用停止をした代替えとして4月1日(土)・2日(日)M1800(MSP,UXP)を連続運転します。尚、VPP500は4月1日(土) 9:00〜12:00運転保証。12時以後は自動運転モードの運転です。デファード・ジョブも流れます。

。.UXPに於ける予算の管理について

 UXPに於ける予算の管理はUNIX本来の思想からMSPの様なシビアな 管理は行わず、1日1回使用料金を計算して予算使用残高に反映させています。そのため1円でも残高がある場合は計算続行が可能です。特にVPP利用では、ジョブ投入を多数行った際に禁止ビットが立った時には、数万円の赤字になる事がありますのでご注意下さい。

「.DS90ログイン時のMSP IDの中止について

 現在DS90のログインIDはUXP ID又はMSP IDの双方のIDでログイン出来ますが、4月1日以後は原則としてUXP IDのみの入力とします 。

 理由は、DS90の立ち上げ時間がかかり過ぎるのでサーチID数を半減させるため、及びMSP IDに対するパスワードがDS90のパスワードとM1800側のパスワードとの間で統一管理されないため、各々別のパスワードとなり煩雑となっているため。

 但しMSPのみ利用登録されている場合は従来通りです。

」.大型計算機3月・4月の保守作業予定


M:システムメンテナンス

※1
VPP500のイニシエータは16日17時にクローズします。以上を予定しておりますので、ご協力お願い致します。
(関口 豊,SIRIUS関係:加藤 輝雄)


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大型計算機共同利用研究公募中

 宇宙科学企画情報解析センターでは、来年度の大型計算機利用による共同研究を受け付けております。研究テーマは、宇宙研が行なっている飛翔体による宇宙観測と直接、間接に関連するもので、宇宙研の大型計算機(M1800、VPP500)及び、各大学の大型計算機センターの計算機を利用する事が出来ます。応募書類は、各大学の学部長、及びこれまで当センターを利用戴いた研究者に送付致しております。今回の公募に関しますお問い合わせは、宇宙研研究協力課共同利用係(内線2234)あるいは、当センター小原(内線2509)迄、お願い致します。
(小原 隆博)


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編集発行:文部省宇宙科学研究所
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