No.295
2005.10

退任にあたって

ISASニュース 2005.10 No.295 


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鶴田浩一郎 宇宙科学研究本部長 


 私,9月30日をもってJAXA理事および宇宙科学研究本部長を退任致しました。3機関統合直前の旧宇宙科学研究所所長の期間を加えますと2年半弱にわたって,大きな変革の時期を「宇宙科学」という切り口を通して日本の宇宙関係者と共有できたことは,幸いであったと考えております。

 2年前,統合の直後には,私はJAXAの中で宇宙科学を進めていくことに危惧を持っておりました。JAXAの中では宇宙科学は少数派で,役員会での私の発言は場違いに響き,居並ぶ役員に何の反応ももたらすことができませんでした。状況の変化は,皮肉なことに,三つの連続した不具合によって起きた気がします。H-IIAの事故ではM-Vチームが,「みどりII」の放電問題では理学チームが,また,「のぞみ」の火星軌道投入断念では本社機能が活躍しました。いずれも現実の作業を通して一体感が生まれ,言葉の障害が薄まるきっかけとなったと思います。

 発足1年後の「JAXA長期ビジョン」作成,外部諮問委員会の示唆によるシステムズエンジニアリング部門の新設では,大規模な議論が各部署を巻き込んで行われました。結果の良し悪しはこれからの努力次第という気がしますが,全JAXAを通した熱い議論ができる環境は整いつつあると思います。宇宙科学に対する理解も,ずいぶん変わったと思います。私たちは,今年になって「すざく」「れいめい」を打ち上げ,この後ASTRO−Fを,さらにSOLAR−Bを打ち上げようとしています。これらは,JAXAの宇宙科学に対する理解なくしてはできないことです。

 組織としての大きな課題は,冷戦終結後の宇宙開発をめぐる環境の変化に対応して,開発目標を具体化していくことだろうと思います。かつて宇宙科学研究所がそうであり,H-IIAを開発した宇宙開発事業団がそうであったように,組織の構成員が自分たちの組織JAXAを誇りに思えるような目標になればと思っています。

 最後に,私の在任中に寄せられました皆さまのご助力・ご協力に,心から感謝致します。

(つるだ・こういちろう) 


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