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太陽観測衛星SOLAR-B 第一次噛合せ試験

SOLAR-B衛星。2004年10月1日,宇宙研の新クリーンルームにて。


 6月半ばに始まったSOLAR-B衛星の第一次噛合せ試験も,そろそろ大詰めを迎えようとしています。NASA担当の可視光磁場望遠鏡の焦点面検出器部,同じくX線望遠鏡の鏡筒部の製作スケジュールの遅れにより,試験直前までこれらの機器の搬入日程確定に難儀をしました。試験の順番を組み替え,NASA担当の機器の一部の部品については一次噛合せ試験後に持ち帰って交換することにして,何とか予定通り,6月14日から試験を開始することができました。

 6月中の2週間は,宇宙研の科学衛星でシステムを初めて担当する三菱電機鎌倉製作所の皆さんに宇宙研の地上系設備に慣れていただくことも兼ねて,電源系や通信系試験装置のバリデーション,ISACS-PLNを用いてのコマンド送信・管制系の確認に充てました。また,衛星バス部の組立てを開始しました。

 7月からはいよいよ試験本番。バス系の各機器が衛星に組み付けられ,電気インタフェースが一つずつ確認されました。このころ国立天文台の高度環境試験棟では,アメリカから運び込まれた焦点面検出器部が日本側製作の可視光磁場望遠鏡の本体に結合され,さまざまな角度から望遠鏡の性能がチェックされ,最後にはシーロスタットを通して太陽光を導き入れ,望遠鏡が所期の性能を達成していることを確認しました。8月中旬にはイギリスから極端紫外線撮像分光装置が,下旬にはアメリカからX線望遠鏡が到着,さらに国立天文台から可視光磁場望遠鏡が宇宙研に搬入されてきました。ここで,毎年恒例の宇宙研一般公開日。新クリーンルームの東半分にはすべての望遠鏡がシリンダー形状の光学架台に据え付けられて鎮座し,西側には衛星バス部があるという状態で,2階通路の窓から衛星を見ていただくことができました。

 9月10日には衛星バス部に光学架台部を結合。3つの望遠鏡を抱いた衛星としての形が完成。残る機械作業は,電気計装と多層膜断熱材の組付け。これらも程なく完了し,9月中旬からは熱制御系,環境計測系の電気インタフェース確認を経て,後回しにした姿勢軌道制御系のいくつかの機器の電気インタフェース確認へと進みました。

 ここまでの歩みはいたって順調で,ステータス信号のビット反転やらメモリ内でのMSB/LSB順の取り違えなどのごく軽微なインタフェース上の齟齬が見つかった程度でした。「好事魔多し」という言葉があるし,ちょっと順調過ぎて危ないかな,という嫌な予感がし始めた9月30日,導通試験のために計装ケーブル間に差し込んだブレークアウトボックスの2つの端子の間でショート事故発生。ストレスが危惧される機器が一つで,入り口のところの部品交換だけで済んだのは不幸中の幸いでした。それでも,この機器を部品交換修理に出すために,衛星の解体(と再組立て,試験の順序を組替えて観測機器の電気インタフェース試験実施,また解体)と修理後の機器の再取付け,衛星組立てなどで約10日間の追加作業が発生し,祝日と土曜日も作業する羽目になりました。

 11月冒頭の時点で,上記の事故対応は終了しました。新たに見つかった不具合としては,観測機器制御ロジックにソフトウェア不具合がいくつかある程度で,一次噛合せ段階としては,ほぼ事前の予測の範囲内で順調に試験が進められてきていると評価しています。

 しかしながら,試験が佳境を迎えるのはこれからです。この記事が活字になる11月20日ころまでに,すべての機器を同時に動作状態にして観測機器と姿勢軌道制御系の性能を詳細に評価する総合動作試験を終えなければなりません。さらに,可視光磁場望遠鏡がその撮像性能(0.2秒角分解能)をフルに発揮する上での最大の難関と予想される衛星姿勢の微小擾乱レベルを測定し,衛星内の可動部品に起因する擾乱がすべて許容範囲内にあることを確認しなければなりません。試験は12月中旬まで続きます。

 振り返れば,相次いで襲来する台風に,今日は何時までで試験を打ち切ろうかと悩まされていたのも,さすがに11月を迎える今日このごろとなっては昔話になりました。関係各メーカーの方々とともに最後まで気を緩めずに頑張りますので,応援をよろしくお願いします。

(小杉 健郎) 


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復活したSFU



 11月2日より東京都台東区上野公園にある国立科学博物館に新館がオープンし,その2階展示室にSFU(スペースフライヤーユニット)が永久展示されることになりました。SFUの正式名は宇宙実験・観測フリーフライヤーで,1995年3月18日種子島宇宙センターからH-IIロケット試験機3号機によって静止気象衛星「ひまわり5号」とともに打ち上げられました。数々の宇宙実験の後,1996年1月13日に軌道上でスペースシャトル「エンデバー号」に搭乗した若田光一宇宙飛行士によって捕獲・回収され,同月20日にはケネディー宇宙センターに帰還しました。詳細は『ISASニュース』No.190(1997年1月号)「特集 SFUとその成果」をご参照ください。

 国立科学博物館の新館2階展示室のテーマは「科学と技術の歩み」で,実物標本資料を中心に展示されています。この展示室には私たち宇宙研のルーツである航空研究所時代の航研機,同じく目黒区の駒場キャンパスにその設計事務所があったYS-11などなじみ深い資料とともに,ペンシルロケットやベビーロケット,そしてSFUが展示されています。展示に先立ち,昨年9月より私たちは分散保管されていたSFUの機器の集積に取り掛かり,休日を返上して少しずつ再組立てを行ってきました。その結果,写真のようにようやく一般見学者にお見せできるところまでSFUの実機を組立てることができました。この組立てには,多くの学生たちが参加してくださいました。この場を借りて感謝致します。

 私たちは,国立科学博物館にSFUの実機を展示することにより,宇宙分野への教育普及活動の一翼を担えたと考えています。多くの方々に上野でSFUをご覧いただければ,私たちが1年かかって再組立てした苦労も報われるでしょう。

(清水 幸夫) 


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(山本 悦子) 


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ISASニュース No.284 (無断転載不可)