No.284
2004.11

ISASニュース 2004.11 No.284

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只今,編集中 

 元・(株)電通テック             
【現・ブロードバンドテレビ(株)】 坂 本 頼 俚 

「のぞみ」打上げ前日,鹿児島宇宙空間観測所にて。

 構造機能試験棟,2階光学計測室の奥に,16ミリフィルムの缶が山のように積まれている。Mロケット開発研究のころから撮影記録してきたものだ。現在,私はその蓄積されたフィルムのカットポジ編集に携わっている。

 電通テックという会社で映像制作のプロデューサーをしていた私と宇宙研とのかかわりは1985年8月,第10号科学衛星「すいせい」の映像記録から始まる。それから13年,第18号科学衛星「のぞみ」の記録と作品を最後に手掛け退職した。このような背景があって,昔を懐かしみながら作業をしている。

――「すいせい」のフライトオペレーションで,初めて鹿児島宇宙空間観測所(現在の内之浦宇宙空間観測所)入りしたときのことです。当時,宿舎は銀河荘でした。体を動かして汗をかいた後の冷えたビールはうまいものです。夕食時間,ひと風呂浴びてさっぱりした監督,カメラマンらと1階の大食堂に集合しました。席に着くとロケット班の林さん,データセンターの桜井さん,記録班の前山さんから皆さんのサイン入り一升瓶が回ってきました。これが,本タイトルと同じ「いも焼酎」と後で知りました。食前,焼酎を酌み交わす皆さんを後目に,私はただ一人ビールを楽しんでいたのです。何せアルコールは,ビールしか受け付けない体なのです。

 といいますのも,得意先の一つにビール会社があり,この会社の販売促進用ビデオパッケージの台本に製造工程のシーンがありました。その撮影終了後,試飲コーナーでビールを呑みながらの打ち合わせとなります。1週間続く撮影なので,必然的にビール漬けとなるのです。特に大ヒット商品となった[一番搾り 生]の映像完成打上げでのこと,場所はK社の社員クラブ。大広間の卓上には大壜40本が並んでいます。なんと脇にはPケース(大壜20本入り)が料飲店のように山積みされているではないですか。得意先,代理店,映像,印刷関係の代表合わせて12名,席に着き宴が始まる。K社の皆さんは業種柄か酒豪ぞろい,次々と中ジョッキが空になる。手拍子が鳴り,私も一気に空けていく(これもプロデューサーの仕事)。このときが,人生最初で最後の記録となった大壜15本。以来,ビール体質に変造してしまったのです。ちなみに,このときの最高は25本を空けた当社のカメラマンでありました。――

 週2回,光学計測室の錠を開け入室する。すると,たちまち現像液と定着液の匂いが鼻をくすぐる。そこにはビール工場の麦汁仕込室の薫りがある。顕れる40年分のネガフィルム,ポジフィルム群。研究・開発・実験・打上げの歴史だ。

 そんな素敵な空間で,今日も編集作業を始めるのである。

(さかもと・よりさと) 



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