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再使用ロケット実験機第3次離着陸実験

 統合直後の10月14日から11月1日まで「能代多目的実験場」で再使用ロケット実験機の3回目の離着陸実験を行いました。今回の実験は,これまでの機体を改修して耐久性設計を施したエンジンインジェクタなどの新しい要素を組み込んだり,複合材極低温タンクに液体水素を入れて初めて飛ばすことや,繰り返し飛行のシステム構築のために故障を許容するシステムの検証など,いろいろな新しい試みを載せて,繰り返しの飛行運用をすることが目的です。中でも複合材液体水素タンクは,これまでに何度も予想外の漏れや不具合に見舞われ,飛行に耐える状態にするまでてこずりましたが,今回の実験では漏れなしの完ぺきな運用ができました。実験は静的な飛行から動的な飛行へと順次進め,いずれも計画通りに行われました。この結果,繰り返し飛行の実験環境を利用しながら,新技術の実証や,再使用のシステム設計および運用技術の勉強という所期の目的を達し,次のステップで目標とする高度100km以上の弾道飛行を目指す機体の設計のための基礎データの蓄積が図られました。

 実験をこの時期に行うにあたり,新機関の多方面の方々には大変お世話になりました。旧宇宙科学研究所の能代ロケット実験場は総合技術研究本部の所管となったため,10月以前から移管の段取りとあわせていろいろな交渉が必要でした。特に角田宇宙推進技術センターの方々には相当なわがままと無理なお願いをし,実験の実施と新しい体制での実験場の運営の両面で,多大なご協力をいただきました。統合で変わった財務・旅費システムにより,物をつ買うのも出張の届けを出すのも,何がなんだか分からない状態での現場突入に,宇宙科学研究本部はもちろんのこと,総合技術研究本部,宇宙基幹システム本部さらにはHQまで,多くの方々を巻き込んで次々に問題を起こしながら,まさに手探りの状態で実験を進行することになりました。実験実施の責任体制や緊急時対応の話から,実験班の使うトイレットペーパーは誰がお金を負担するのかまで,それこそピンからキリまで体制変更に伴うあらゆることを決めながらです。実験者の立場からあえて無理を申し上げたことも多くありましたが,今後計画される他の実験も含め,あくまで新機関での基礎研究や小規模実験を行う自由度を大きくすることが目的ですので,ご理解いただきたいと思います。この場を借りてご支援とご協力にお礼申し上げます。ありがとうございました。

(宇宙航行システム研究系 稲谷 芳文) 


離陸直後の実験機


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ISASニュース No.273 (無断転載不可)