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M-14-3 TVC大気燃焼試験

 2000年2月M-V型ロケット4号機の失敗は,第1段M-14モータの不具合が原因であった。ノズルスロートの材料は信頼性向上のため,グラファイトから3次元織りのカーボン・カーボンへと変更され,その確認試験が飛翔型モータを用いて能代ロケット実験場にて行われた。オペレーションは組立てオペ(10月7日〜10月16日)と燃焼オペ(11月20日〜12月19日)の2回に分けられ,12月12日に燃焼試験を行った。試験は,着火・燃焼ともに正常,推力・内圧のパターンは予想通り,燃焼後のノズルの状態も申し分なく正に百点満点であった。この結果をもって,次のM-V5号機に向けては,M-14M-25M-34KM-V2と全段の最終確認試験が無事終了し,主推進系は準備が完了した。

 上述したように,今回は4号機の失敗の原因となったモータの燃焼試験だけに,いつもに増して班員の意気は高かった。12月の劣悪な天候の中,黙々と作業を続ける姿にはただただ頭が下がる思いであった。それだけに,成功裏に試験を終了した後の喜びはひとしお大きく,おおいに溜飲を下げることができた。もっともこれで終わったわけではない。5号機2号機6号機と続き,ASTRO-E IIを成功させるまでは班員の気は晴れない。

 今回のオペは風との戦いであった。試験の際には,燃焼ガスが民家の方に流れないよう風向きが制限されるが,悪いことにこの時期の典型的な風向き(西〜北西)が都合の悪い風向きで,都合4日間の延期を余儀なくされた。また,風向きに関係なく強風にも悩まされた。縦型の組立て棟にロケットのパーツを吊り込んだり,降ろす作業は強風下では不可能であったし,何よりそもそも屋外作業が不能になるような強風がしばしば吹き荒れた。これに加えて,低い気温もこたえた。最高気温が0℃1℃という日が続き,撤収作業が終わり本館でやっと暖をとれた元スタンド班チーフY田氏は思わず言った。

「もうこんな生活いやっ!」

(堀 恵一) 


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種子島より(DASH組み立てオペ)

 ぼくの名はDASH。的川先生よりもずっと軽い体重86kgのピギーバック衛星だ。もうすぐ宇宙への旅に出る。今ようやくぼくは南の島で組み立てられて,そして,最後のトレーニングを終えたところだ。本当は,そっとロケットに乗り込むつもりだったのに,こうして名乗れと言われるとちょっと照れくさい。たった4日間の旅の目的は,高速で地球の大気圏に突入するときの熱のデータを集めることだ。

 ぼくの旅は短いけれど壮大だ。日本が誇るH-IIAロケットに乗って宇宙へ飛び出す。そして,リエントリのトンネルを抜けるとそこは果てしないサハラ砂漠だ。宇宙から見る青い地球。そして,砂と星の世界。砂漠の民には,きっとぼくは流星のように見えるだろう。気がついてくれるだろうか。もし気がついたら,ぼくのことは火の玉DASHと呼んでくれ。

 ぼくの名はDASH。南の島からもうすぐ旅に出る。

・・・

(ひのたま・だっしゅ) 

 DASH組み立てオペは,12/13〜12/21の間に種子島宇宙センターにて行われ,NASDAの協力と実験班の奮闘により無事終了した。連日夜遅くまでのきついスケジュールであったが,まるで奇蹟のように不具合もなく,また,井上浩三郎さんの全国TVデビューなど明るい話題が絶えることも決してなかった。あとは,ロケットへの組み込みを経て打ち上げの時をただ静かに待つのみである。

(森田 泰弘) 

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MUSES-C 総合試験始まる

 12月3日から,いよいよ工学実験衛星MUSES-Cの総合試験が始まりました。「惑星探査機なのに,衛星とはなにごとか。縁起でもない。」とは,1985年の「さきがけ」打ち上げ前に平尾先生が述べられていたことですが,これをいつも思い出し,できるだけ「衛星」とはいわないで来ました。公式には,工学実験衛星ですが,Mu Space Engineering Spacecraft として,工学宇宙機と呼びたいところです。プロジェクト開始は1996年だったのですから,すでに6年目,構想から早7年を経過しました。構想が実際の形へと変わっていくと,はじめて実プロジェクトだったことに気がつきます。というくらいに,このプロジェクトは,ことあるたびに,内外を問わず「野心的」であり「挑戦的」だと言われ続けてきた,世界に類をみない独創的な計画です。人類がこの形の宇宙船を作ったことはなく,これが今後のサンプルリターン宇宙船の形態を先駆けているのだと思うと,感慨にもまた新たなるものがあります。7年を経てもなお,この探査機は「野心的」な状況から微塵もその意義を減じてはいません。これから打ち上げまでは,わずかに1年です。打ち上げを遅らすことができない惑星探査機であるだけに,気を引き締めて着実に進めたいと考えています。

(川口 淳一郎) 


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S-310-30号機噛み合わせ

 S-310-30号機による実験は,地球環境で最も観測の少ない高度(60-150km,人によっては無視された領域,ignorosphere)を集中的に研究しようとする世界的な流れの中で,高度約100km 付近での大気力学,熱収支を研究するために提案されたものです。2002年2月初めに鹿児島宇宙空間観測所からのロケットの発射が予定されており,これに向けて12月12日〜26日,相模原キャンパス構造試験棟にて現地での打上げ作業が始まる前の搭載機器の試験(私達の言葉で『噛み合わせ』と言います)が行われました。

 まずテレメータ送信機,レーダトランスポンダー,および観測機器などロケットに搭載するもの全てを結線しての机上でのチェックから始まり,組み立てた全体(頭胴部と言います)の動作チェック,打上げ時の環境を模擬する振動,衝撃試験を得て,最後に頭胴部をスピンさせて,ヨーヨー展開,プローブの伸展,チャフの放出,信号の切り替え等,タイマー16項目の全ての動作を確認しました。

 観測器の電源リレーの不良など,不具合を改修すると共に,能代実験場での地上燃焼試験と重なったことによる人手不足を克服して,なんとか予定通りのスケジュールで試験を終えることができました。最終日の12月26日には発射場の鹿児島宇宙空間観測所へ送るべく,梱包を終えました。

(小山 孝一郎) 


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外部評価について

 2001年12月19,20日の両日,宇宙研の外部評価委員会が開かれました。東北大の阿部学長を委員長として,副委員長はNASA JPLStone前所長にお願いしました。他には長洲元航空宇宙技術研究所長,鳥井日経新聞論説委員,郷名古屋大学教授,小平総研大学長,小林理研理事長,秋葉宇宙研名誉教授,Canizares MIT教授,BonnetESA科学局長,Bainumハワード大学教授,Axford元マックスプランク・リンダウ研究所長の方々にお願いしました。秋葉前所長の下で1993年に開催されて以来8年ぶりのことで,新機関へ向けての統合の準備が始まったこの時期が選ばれました。

 送付した資料に基づいて予めコメントを頂いた後,更に討論が重ねられました。第1日の午後にはポスターセッションが開かれ,如何にも宇宙研らしい企画で大好評でした。難を云えば各委員が一カ所にハマッてしまって2時間ではとても足りなかったことです。

 第2日は委員会としての討議に費やされ,報告書がまとめられました。宇宙研の組織,成果,将来計画を高く評価し,新機関への積極的な取り組みを勧告した内容になっています。

 3月号に要約の全文を掲載出来ると思います。

(松尾 弘毅) 


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ESTECにてBepiColombo会議開催される

 2009年の打ち上げを目指して現在理学委員会にミッション提案中のBepiColombo国際共同水星探査計画関連の会議が2001年12月中旬ESA(European Space Agency)のESTEC(European Space Research and Technology Centre)で開催されました。

 12月10日から13日にかけては,2001年5月からヨーロッパのメーカー2社によって競合的に行なわれているBepiColomnbo計画のシステム検討の中間報告がなされ,宇宙研からは5人(向井,早川,笠羽,小川,山川)が参加しました。2機の周回機と1機の着陸機から構成される複雑なシステムをいかに最適化するかという観点から活発な議論が行なわれました。続いて,12月13日午後から14日には,第4回ESA - ISAS Meetingが開催され,ESA - ISAS間の今後の国際協力,ISASが担当することが期待されている磁気圏探査衛星MMO(Mercury Magnetospheric Orbiter)とESA担当部分とのインターフェースを中心に議論されました。さらに17日から19日には, ESAG(European Science Advisory Group)による会議が開催されました。

 BepiColombo計画のサイエンスについて白熱した討論がなされ,ISASからは早川(基),山川の2名がオブザーバとして参加しました。ヨーロッパの科学者,技術者のBepiColombo計画にかける熱意を肌で感じた2週間でした。

(山川 宏) 


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宇宙学校・徳島

 さる12月8日(土),徳島県板野町のサイエンス・パーク「あすたむ(明日多夢)らんど」で,宇宙科学研究所の宇宙学校が開催されました。

 寒さの厳しい日で,しかも近くの学校では参観日などの行事が重なったにも拘らず,延べ461人の参加者を得ました。

1時限目は「太陽系の謎に挑む」(担当:山川宏,向井利典:敬称略),
2時限目は「未来の宇宙技術」(澤井秀次郎,田中孝治),
3時限目は「銀河とブラックホールの世界」(前田良知,山村一誠)
という時間割りでした。非常によい質問が相次ぎ,講師も慎重に考えながらの対応になりました。たとえば「雷が落ちると豊作というけど,なぜ」「宇宙輸送機が安くなっても宇宙の家賃が高いと困る」「ブラックホールは何でできているの」など。

 同じ科学館の別室で企画展「宇宙科学と探査衛星」が同時開催され,宇宙科学研究所から運ばれた衛星やロケットの模型,将来計画などが豪華に飾られました。こちらは1月7日まで展示され,会場ではコンパニオンの女性陣が,宇宙科学研究所の周東三和子さんの指導を経て,サポートしてくれました。

 会場となった「あすたむらんど」は,広大な敷地に野外展示もしてあり,こども館の徹底した参加型の展示と併せ,素晴らしく考え抜かれたものになっています。宇宙研から行ったメンバー一同,必ずまた訪れたいとの思いを残して帰京しました。

 開催にあたり何から何までお世話になった「あすたむらんど」の人たちにお礼を申し上げます。有難うございました。

(的川泰宣) 


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第4回,第5回宇宙3機関統合準備会議

 第4回の統合準備会議は12月6日に開催されました。“新機関の機能”の中間まとめ素案について意見が交わされ,前2回で議論された“目的と方針”に沿った中間まとめが大筋で了承されました。

 第5回12月20日に開催され,新機関を独立行政法人とする閣議決定を受け,具体的組織の在り方の議論が始まりました。宇宙研としては宇宙科学が新機関の重要な柱の一つであり,これを進める上で,大学共同利用機関の性格を維持しつつ,大学院教育,理工一体での科学衛星開発を進める部門,が新組織において必要であると主張しています。これに関しては大方の委員の理解を得ていると思いますが,これがどのような形で実現されるかは今後の課題となっています。新機関の組織については部門構成から職員の身分問題まで,さまざまな課題が残されており,今後議論の詰めが必要とされています。

 統合準備会議は組織問題についての検討を新年以降進め,本年3月末までに最終答申を取りまとめることとしています。なお,20日は宇宙研の外部評価最終日と重なったため,宇宙研からは所長に代わって松本企画調整主幹が出席しました。

(松尾 弘毅) 


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