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DASH-DOM-2 地上燃焼試験について

 さる9月29日DASH-DOMの第回地上燃焼試験があきる野施設で行われました。DASHは,H - IIA初号機のピギーバック衛星として来年打ち上げ予定の高速再突入実験機ですが,その目的は,遠く惑星空間から帰ってくるMUSES-Cカプセルの機能と性能をあらかじめ確認しておくことにあります。カプセルを静止遷移軌道から離脱させ,大気圏に突入させるために用いられる小型の固体モータがDASH-DOMです。その推進性能のばらつきは,カプセルの落下点の分散に影響するため,比推力等のパラメータを精度良く推定するのがこの燃焼試験の使命です。DASH-DOMの燃焼試験は,当初1回の予定でしたが,2回の燃焼試験の結果をもってより確度の高いデータを得ることができたと考えることができます。そのおかげで,回収部隊がラクダに乗って何千里もさ迷って行方不明になるというようなことはなさそうです。今回の試験は,M-Vの噛み合わせの合間を縫って準備を重ねるというハードなスケジュールもあって,実験班の苦労は普段以上のものでしたが,それも報われたと言えるでしょう。このあと,DASH12月の中旬から総合試験を開始し,いよいよ打ち上げに向けてその準備は佳境に入ることになります。

(森田泰弘)

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「はるか」の近況

 電波天文衛星「はるか」を中心にすえたスペースVLBI観測計画(VSOP)では,第期の観測募集(AO3)を9月30日に締め切りました。AO1AO2の期間は,それぞれ17ヵ月12ヵ月で,以降1年毎と考えていたのですが,地上のVLBI観測網4ヵ月毎AOをだしているので,これと同期させることにしました。すなわち,VSOPでもこれから4ヵ月おきにAOを出します。VSOPは世界中を巻き込んだ観測装置ですので,この方針に達するのに,数ヵ月の話し合いが続きました。これは,今後のスペースVLBIを全世界的な協力でやっていく場合に必要な議論だったと思います。

 8月,トロントでおこなわれたURSI(国際電波科学連合)総会では,宇宙観測で圧倒的な解像度のスペースVLBIとミリ波VLBIを抱き合わせたセッションを開きました。おおくのVSOP観測結果が発表されました。総会では,電波科学全分野から選ばれた4つGeneral Lectureがありましたが,スペースVLBIがこのひとつに選ばれ,筆者が不得手な英語で発表しました。銀河中心の超巨大ブラックホールと降着円盤,そこから飛び出すジェットなどについて,トイレットペーパーでつくったモデルをとりだして切腹覚悟で熱演,皆さんげらげら笑ってもお構いなし,首がつながりました。

 2000年1月末には,VSOP国際シンポジウムを宇宙研で開きます。「はるか」がスタートした1989年11月に,VSOPとミリ波VLBIを一緒にした国際シンポジウムを宇宙研で開き,国外から46人(赤穂浪士最終討ち入り人数?)の出席者がありました。思えば,あれから10年2ヵ月です。

 さて,「はるか」ですが,10月8日に,4個あるReaction Wheelのうちのひとつの調子が悪くなり,姿勢異常となりました。打ち上げ以来初めてのできごとでした。10月末現在,「はるか」は危険状態を脱して,観測再開へのチェックをすすめています。この間,いつも衛星につきそっていた村田さんをはじめとする運用グループ,設計時から運命を供にしてきたNECグループの,一丸となった努力がありました。今後は,3個Reaction Wheelによる運用になりますので,マヌーバー制限が増えることになります。

 最後に,VSOPの科学的話題。この夏には本格的X線観測衛星Chandraがあがり,校正観測として,点源のクェーサーPKS0637-752と拡がった超新星残骸Cas Aを観測すると報じられました。PKS0637-752はすでに1万分2秒の解像度の波長6cmで,オーストラリアのTingay博士をPIとするVSOP観測がおこなわれ,ジェットが見えていました。活動銀河核での電波からX線にわたる放射メカニズムは,いわゆるSynchrotron-Self-Comptonモデルでつないで考えることができ,X線と電波の同時観測により,物理モデルに制限を与えることができます。こうして,VSOP2回目の観測のスケジュールを変更して,9月に,Chandraとの同時観測をしました。ところが,なんと,ChandraX線でもジェットを描いて見せたのです。それは,VSOPがすでに描いていたジェットと同じ方向を示していました。また,Chandraが描いた超新星残骸Cas Aのど真ん中には点状のX線源がありました。新しい観測機器が予期せぬ発見をする力を見せつけた時でした。ASTRO-Eにも,大いに期待したいところです。

(平林 久)


VSOPによるクェーサーPKS0637-752のジェット
(観測波長6cm,視野サイズ0.006秒角,解像度0.0002秒角,Tingay他)

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糸川先生を偲ぶ会

 去る2月21日に逝去された糸川英夫先生を偲ぶ会が,“ロケットOBと現役の懇親会”主催で,10月16日東京大学山上会館で開かれた。西田所長の挨拶,野村前宇宙開発委員長代理,秋葉前所長,平尾名誉教授による我が国ロケット草創期における糸川先生のご活躍の様子に続き,糸研究室先輩の金沢磐夫氏,当時取材に当たられた元NHK記者の隈部紀生氏,また晩年の丸子町での生活で行を共にされた金井剛氏から大変興味深い先生の側面がご披露された。日産自動車戸田康明顧問の発声による献盃ののち,思い出話がはずみ,流れ解散の予定を変更して,強制解散となった。

(松尾弘毅)


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国際電気推進会議について

 去る10月17日〜21日北九州市にて第26回国際電気推進会議が開かれ,22日には会議終了後のテクニカル・ツアーとして午前中が航技研,午後が宇宙研という見学会が行なわれました。北九州からは会議終了後さらに一泊二日の旅となるにも関わらず30名弱の研究熱心な外国人見学者が観光バスを誂えてやって来ました。もともとこの会議は電気推進が世に出た1960年代から米国でスタートしたもので,初期の頃は1年半に1回米国のどこかで開かれました。1984年に初めて日本がホスト国となって東京で開催されて以来,隔回で米国と米国以外がホスト国となる慣例が出来上がり,ドイツ,イタリア,ロシア,そして本年は再び日本,議長は宇宙研名誉教授の栗木恭一先生という布陣になりました。電気推進は前回東京で開催した頃とは比較にならぬほど世界中で実用化が認められており,発表件数は約200件,参加者も240名と倍増,そのうち外国人は110名(米,仏,露,独,伊,英,中,韓,アルゼンチン,オーストリア,スペイン,ウクライナ,オランダ,イスラエル,ベルギー)と半数近く,MPDやパルスプラズマ,イオンエンジン,アークジェット,ホール等の研究者の新旧交代や研究テーマの新陳代謝が激しい中,いつもの国際電気推進会議らしい雰囲気となりました。日本もMUSES-Cでマイクロ波イオンエンジンを小惑星探査ミッションに搭載するとあって晩餐会に立ったドイツ代表からは成功を祈る旨のエールが贈られました。

(都木恭一郎)


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「のぞみ」搭載カメラによる火星撮像

 火星探査機「のぞみ」は,さる9月7日に火星に最接近し,火星までの距離約438万kmに達しました。その際,8月28日17時00分(日本時間)には,搭載カメラMICによって火星を撮像しました。最接近とはいってもまだ距離は遠く(撮像時約556万km),写真のように数ピクセルにしか写っていませんが,初めて本物の火星を撮像した意義は大きいです。カラー合成した写真は下記MICのホームページをご覧ください。

 http://www.planet-b.isas.jaxa.jp/MIC/MIC_j.html

火星の近接画像は,あと4年お待ちください。

(橋本樹明)


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倉谷健治名誉教授に勲三等旭日中綬章

 倉谷健治先生が,この秋の叙勲で勲三等旭日中綬章を受章されました。倉谷先生は,赤外分光・分子構造研究の基礎をその黎明期に築かれ,また化学と流体力学をあわせ,気体中の高速化学反応がどのような分子的な過程により進むかを明らかにされました。基礎的な理学研究で着実な成果をあげるばかりでなく,その学識をもとに,ロケットエンジンの中での燃焼反応を解析したり,公害の一つである自動車や航空機のエンジンで生成する窒素酸化物などの生成機構を解析してその低減技術をみいだすなど,社会的な問題への貢献も積極的にされています。さらに,能代実験場長として,地上燃焼実験に心血を注がれた姿は,開発に参加した多くの人々の記憶に新しいところです。

(山下雅道)

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