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宇宙学校・駒場



 さる1月9日(土),目黒区駒場の東京大学教養学部において,恒例の宇宙学校が開かれた。第1時限は天文学(堂谷忠靖と村田泰宏),第2時限は太陽系と生命(藤原 顕と黒谷明美),第3時限はロケットと人工衛星(橋本正之と竹前俊昭)という分担。今年は昨年のように雪はなかったものの,大変寒い朝であり,にもかかわらずそれぞれ332名293名198名の参加者を得て盛況だった。今年の質問は,昨年よりも正統なものが多かったようで,講師一同感心していた。目立った質問をあげれば,「宇宙が始まって何秒という言い方があるが,それは何を時計にしているのか」「地上のアンテナについてはよく耳にするが,ロケット側の送受信装置はどのようなものか」「M-Vロケットをコストダウンする苦労について聞かせてください」など。なお今年も昨年同様,中村達雄事務部長はじめ教養学部の方々に大変お世話になった。ありがとうございました。(本文敬称略)

(的川泰宣)

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KSC科学衛星追跡管制設備の公開

 緋寒桜の咲く内之浦の実験場で,1月29日KSC科学衛星追跡管制設備の公開が行われた。直径34mのパラボラアンテナとS/X帯の送受信管制設備からなる新設の設備を地元の方々に紹介することを目的としたもので,増當可也町長をはじめとする内之浦協力会の方々,並びにその他地元関係の方々,約40名の参加を頂いた。また,設備の製作・建設を担当いただいた企業の関係者20数名が出席された。

 10時半に公開は始まり,パラボラアンテナの乗るペデスタル(架台)内の管制室において,まず設備の製作経過および概要の説明を行い,次いでペデスタル内に設置された各装置を順に紹介,最後に屋外において,最大速度で駆動されたアンテナの迫力ある動きをご覧頂いた。続いて12時から管理棟において懇談会が持たれ,約1時間にわたって情報の交換が行われた。西田所長,的川KSC所長,設備開発担当者,管理部担当者,KSC職員等によって公開は執り行われた。

(廣澤春任)


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S-310-28 打上げ

 将来の月・惑星探査のために開発中のレーダサウンダー及び蛍光X線分光計の技術試験を主目的とした S-310-28号機が内之浦から2月2日10時30分に打ち上げられ,実験に成功しました。レーダサウンダーはロケットから電波を発射して周辺や遠方のプラズマからの応答を調べるために以前から使われてきた日本のお家芸ですが,現在火星に向かっている「のぞみ」にも電波高度計としての機能を追加したものが搭載されています。また,宇宙研と宇宙開発事業団の共同プロジェクトとして進められている大型月探査計画 SELENE では月の地下構造探査にも威力を発揮するものと期待されています。蛍光X線分光計は月や惑星表面の化学組成を調べるために宇宙研で新規開発中の観測装置で,MUSES-C SELENE に搭載される予定です。今回の実験では,ロケットに搭載した標準資料および地球大気による太陽X線の散乱光を観測することが目的です。これらの他にも,電離層の電子密度計測および工学実験としてのバロースイッチの試験も併せて行われました。本ロケットに搭載された観測機器は打上げ後に機械的な作動を伴うものばかりでしたが,レーダサウンダー用の7mワイヤアンテナ4本の伸展,電子密度計のアンテナ2本,蛍光X線分光計センサーの蓋開けなど,搭載タイマーのシーケンスに従ってすべて順調におこなわれました。

 なお,今回のロケット実験は所内打上げで,特にKSCの職員が中心的な役割を果たしました。

(向井利典)

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1998年度第3次大気球実験

 1998年度第3次大気球実験は,1999年1月20日より1月28日まで三陸大気球観測所において実施された。この期間にBT5型気球1機を放球した。

 BT5-17号機の実験目的は,冬期の上部成層圏オゾンの高度分布の観測であった。東北大学理学部が開発したオゾン観測器は,放球から観測終了まで正常に動作し,良好なデータが取得された。三陸では,これまで夏期に毎年オゾン観測を続けており,1996年には冬期にも観測を行っている。今回の観測を行ったことにより,夏期と冬期の成層圏オゾンの高度分布の違いの比較や経年変化等を調べることができる。また,1998年同月に鹿児島県内之浦で同様の観測を行っており,緯度によるオゾン高度分布の違いを調べることができるものと期待されている。

 当初放球を予定されていたBT5-18号機は,地上気象および飛翔前の詳細な検討の結果,地上でのガス充填実験および放球前予備実験に変更した。本気球は,新しい技術で製造された厚さ3.4ミクロンの超薄膜ポリエチレンを用い,試作されたものである。ガスの充填は1月26日,三陸大気球観測所の屋内で行われ,漏れ量の測定および気球の詳細な点検が27日まで継続して行われた。その結果,試作した気球は飛揚に耐える性能が確認されたが,製作法,点検法,取扱い法および放球法に改善すべき点も明らかとなり,今後の実用化への貴重な資料が得られた。

(山上隆正)



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「のぞみ」地球脱出の顛末

 火星探査機「のぞみ」は,火星到着が当初予定より4年ほど遅れ,2004年の初めになりました。この経緯を,裏舞台の騒ぎも含めて御紹介します。

 「のぞみ」は,1998年7月4日に打ち上げられてから,月・地球を回るパーキング軌道に5カ月半滞在しました。1カ月半かけて行った搭載機器の初期チェックの結果は全て正常で,一部の観測機器は,地球周辺の科学観測を開始しました。その後,2回の月スウィングバイを経て,1998年1998年20日に地球スウィングバイと同時に推力500N2液メインエンジンを噴射し,火星遷移軌道に乗りました。メインエンジンの噴射は,地球最接近の瞬間(日本時間の1998年1998年20日の夕方5時10分)に行いましたが,このとき「のぞみ」は臼田局からも,また支援を頼んでいたアメリカのDSN局からも視えない時期に当りました。噴射終了後に「のぞみ」の電波を捕えたDSN局からの情報で,増速が当初予定の 430m/s に対して,100m/s 程度不足している可能性がでてきました。さらに翌朝から,臼田局でも探査機の電波の受信が可能となり,このことが確認されました。

 2液エンジンは,燃料のヒドラジンと酸化剤 NTO の両者を混合,燃焼させ,ノズルから噴射することにより推進力を得ます。そのうちの NTO を押し出すために供給するヘリウムガスのバルブにトラブルが発生しました。2液エンジンを使用しない期間,ヘリウムと NTO の間を遮断するバルブです。エンジン噴射に際して,このバルブが十分に開かず,酸化剤 NTO の供給が不十分で,推力が不足したということが判りました。

 この不足の増速分を補うための追加の制御を,翌21日に行いました。前日以来の徹夜の緊張の末の運用で,「のぞみ」チームの疲労は極限に達し,この運用も苦労の多いものとなりました。結果的には,近地点の燃料最少点を外した制御のため,予定より多くの燃料を消費したものの,探査機は,火星遷移軌道に乗せることには成功し,チーム一同,ひとまずホッとしました。

 当初予定では,1999年10月11日に火星に到着した時点で,2液エンジンを噴射して,ブレーキを掛け,火星周回軌道に入る筈でした。しかし,地球脱出に際して推進剤を使い過ぎたため,このブレーキ用の推進剤が十分に残っていないことが分かりました。火星には到着するものの,このままでは火星周回軌道には入れないことになります。

 一方,軌道計画グループの活躍は目ざましく,地球脱出から2週間ほどの間に,様々な軌道計画を検討しました。検討対象となった案は,火星で1回または2回スウィングバイをするもの,また,スウィングバイに際して,エンジンを噴射するもの,しないものなど十指に余るものです。その中から,火星軌道投入時期,必要な推進剤の量,運用リスクなどの観点から,次のような軌道計画を選びました。(下図参照)



(1) 近日点が地球軌道,遠日点が火星軌道となる楕円軌道(現状の軌道)を4年かけて3周する。
(2) 2002年12月に,第1回目の地球スウィングバイ。
(3) 2003年6月に,第2回目の地球スウィングバイ。
(4) 2004年初に火星に接近し,推力500Nのメインエンジンを噴射して,火星周回軌道に投入する。

 この計画によれば,火星周回軌道投入は4年ほど遅れますが,推進剤に余裕を残して,当初予定していた軌道に入れることができます。

 科学の観点からは,火星到着までの太陽を回る軌道での観測が加わること,太陽活動が低下する時期の火星特有の現象が好条件で観測できること,アメリカの火星探査機(MGS, Climate Orbiter)との共同観測は困難になるものの,2003年に打上げ予定のヨーロッパの Mars Express との共同観測が可能になることなどメリットもでてきます。

(中谷一郎)

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