ISAS流 パソコン活用術 1996.12 No.189

No.189
1996.12

ISASニュース 1996.12 No.189

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その三 地上燃焼試験を計測する

長谷川克也

♪いきなりパソコンで計測
 一見乱暴にも聞こえますが,実験データをパソコンで計測するというのは直流電圧を計る事です。パソコンにとっては,電圧を与えてくれる相手が圧力センサーであろうと温度センサーであろうと無関係です。電圧を測るだけならいわゆるテスターでもいいのですが,1秒間に千回とか1万回も測れといわれると,人間業じゃとても不可能で,テスターは静止値にしか使えません。その点パソコンは,かなりのスピードで電圧値を測って正確に記録してくれるし,長時間の計測中も怠けず文句も言わない。人間の代わりに電圧を測ってくれるなかなかいい奴です。

♪次にパソコンで処理
 普通は測った電圧値に意味があるのではなくて,何かの値(温度,圧力,歪などで,通常物理値と呼んでいます)を電圧値に変換されているから,パソコンが電圧値を測ったら物理値に戻してやる作業が必要です。ほとんどは掛け算と足し算で済むのですが,ときどきめんどくさい関数が入ることもあります。まあ,少しくらい計算が複雑でも,パソコンは元々計算機が進化したものだから計算はお手の物で,自分自身で測った電圧値をすぐに変換してくれます。実際は計測と処理というように分かれているわけではなく,目的に合ったアプリケーションソフトの中で勝手にやってくれます。優れたインターフェースソフトならば直接物理値を測っているように感じさせてくれます。

♪能代ロケット実験場(NTC)では?
 NTCでの計測はメインシステムとしてUNIXマシンが設置されてますが,こいつはパソコンというより,その親玉みたいなもので,中身も原理もあまり変わらないレベルで動いています。実験終了後,取得されたデータを,ありがたいことに,計測したかった物理値がそのまま読める形式で出力してくれます。ただこのシステムはサンプリングレートが200Hz(毎秒200回電圧値を読んでくれる)しかありませんから,高速で変化するデータを収録するには役不足です。そこで,目的の計測を満足させるためにパソコンを導入し,全体のコンピューター計測システムを構築しています。

♪早く帰りたい♪
 実験終了後にデータを相模原に持ち帰るためにコンピュータからデータを吸い上げます。このために用意されたインターフェースはフロッピーディスクなのですが,こいつがとてつもなく時間がかかります。この作業は,当然実験が終了した後の撤収作中に行われ,他班の仕事はどんどん片づいてゆくのに,計測班だけがいつまでもフロッピーと付き合ってはいられません。“早く帰りたい”というわけで,近ごろはコンピュータの収録データを一つの塊にしておき,ネットワークを使って,パソコンにデータをごっそり取り込んでいます。この作業もけっこう時間はかかりますが,フロッピーよりは速くて作業に手がかからないので助かります。  収録されたデータは30〜40MB位の,処理の目的に不要な部分を含む大きなファイルなので,必要な部分をファイルから切り出して使用します。大きな素材を切り分けて料理をするような気分でしょうか? 切り分けてできたデータファイルは,そのまま使うこともありますが,通常は,デジタルフィルターをかけてノイズを除去したり,周波数解析などのデータ処理をしてから使用します。計測データの処理はノイズ取りのフィルタ作業が最も多くのウエイトを占めています。最終段階では,通常はグラフにて出力されます。

♪パソコンを使いましょう
 計測に限らず,一般的に,パソコンの活用という事は目的に見合ったアプリケーションソフトを使いこなすという事です。パソコンは難しい,年だからもうだめだ,という言葉をよく耳にします。次から次ぎへと生まれ出てくるアプリケーションソフトを全て使う事はいかなる経験者でも不可能です。個々の状況下で,目的にあったソフトをほとんど迷うことなく使えれば,立派な使い手なのです。指一本でキーを叩こうと,32ビットがなんだか判らなくても支障ありません。最初は取扱説明書(マニュアル)と首っ引きの使われる側でも,自然と慣れてきていつの間にか使う側にまわっているものです。さてどうしようかと迷わず,キーボードやマウスに触れてみることです。最後に,某学会誌に「パソコンのない人生なんて考えられない」という手記が載っていました。

(はせがわ・かつや)


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