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宇宙機軌道設計の「ワールドカップ」、大域的軌道最適化競技会で初優勝

 NASAのジェット推進研究所(JPL)は第8回大域的軌道最適化競技会(GTOC, Global Trajectory Optimization Competition) の結果を発表し、JAXA宇宙科学研究所とESA(欧州宇宙機関)のAdvanced Concept Team (ACT) の研究者からなるチームが優勝しました。

※回答を提出したチームの順位表(英文)はGTOCのウェブサイトに掲載されています。

 GTOCは、ロケット科学のワールドカップにたとえられ、世界中から第一線の航空工学や数学の研究者が参加します。前回の優勝チームが出題する「ほぼ解決不可能な」惑星間軌道設計の難問に約1か月をかけて取り組みます。非常に難しい問題を解くため、さまざまな研究分野の研究者がチームを組んで参加するケースがほとんどです。

 第8回となる本競技会では、前回の優勝チームであるJPLが出題しました。さて、そのJPLチームからの挑戦状は・・・「与えられた420個の電波源のうちできるだけ多くを、できるだけ好条件で観測すること。観測は3つの探査機を頂点とした仮想的な平面の垂直方向が、特定の観測対象に向いたときに行われることとし、またその時点における平面の面積を指標とし観測条件が定められる。また、それぞれの電波源に向くために月の重力による補助、低推力推進を使ってもよいとします。」というものでした。VLBIは、離れた場所にある観測装置(望遠鏡)を連携させ、あたかも一つの巨大な望遠鏡で観測したかのようなデータを取得することができる観測手法です。

 今回は36チームがエントリーし、17チームが回答を提出しました。「このチームは、軌道設計の専門家だけでなく、人工知能や応用数学、基礎物理学など多分野の研究者の混成チームだ。各分野の知識と経験を合わせることが今回の優勝につながった」とチームを率いたダリオ・イゾ氏(ESA)は語っています。

 メンバーのヤン・チイホン氏(日本学術振興会 外国人特別研究員)は 「GTOCはただの競技会ではありません。チームメイトと共に、時間と労力を費やして新しい問題に取り組むものです。勝ち負けではなく、車輪の再発明という限界への挑戦なのです。」と語っています。

 また、チームメンバーの一人、ステファノ・カンパニョーラ氏(JAXAインターナショナル トップ ヤング フェロー)は、「アストロダイナミクスのテクニックが発達したことで、より多くの宇宙探査ミッションが可能になっています。GTOCはこの分野の限界を押し広げており、私たちは、この国際コミュニティで第一線にいることを誇りに思います。」と喜びを語っています。

 今回開発された全ての回答は、来年2月にアメリカで開かれるワークショップで詳しく披露される予定です。また、過去の出題と解答はGTOCのウェブサイトに集約され、公開されています。




Ryugu

ISASメンバーとして出場したヤン・チイホン氏(左)とステファノ・カンパニョーラ氏(右)。他の日本からのチームメンバーは杉本理英氏と尾崎直哉氏。ESA-ACTのチームメンバーは ESAのウェブサイトを参照してください。

2015年10月28日