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イプシロンロケット模擬射点音響環境計測試験の実施結果について(第1シリーズ)

宇宙航空研究開発機構は、イプシロンロケットプロジェクトチームを中心に設計解析を実施して設定した発射台形状の音響環境を確認するため、スケール比1/42の模擬射点を製作し、小規模固体モータによる模擬射点音響環境計測試験を下記のとおり実施しました。

本試験は、音響計測技術を有するJAXA 航空プログラムグループと音響解析技術を有するJAXA 情報・計算工学センターの協力のもと、イプシロンロケットプロジェクトチームの要請に基づき、宇宙科学研究所が主体となって能代ロケット実験場にて実施したものです。

第1シリーズでは、イプシロンロケットの音響環境のピーク周波数帯である実機換算500Hz相当までのロケット機体近傍および遠方場の音圧データを取得することを、目的としております。

【試験実施日】2011年4月21日(木)、22日(金)、23日(土)
【試験場所】宇宙航空研究開発機構 能代ロケット実験場
【試験回数】4回(推力1kN級,燃焼時間2.4秒の小規模固体モータによる)

模擬射点概略図

試験の様子

今回の模擬射点音響環境計測実施にあたり、ご協力頂きました関係各方面に深甚の謝意を表します。
なお、第1シリーズ試験結果を評価した上で、6月以降に本試験の第2シリーズを計画しております。

JAXA 宇宙科学研究所
JAXA 宇宙輸送ミッション本部 イプシロンロケットプロジェクトチーム

補足

イプシロンロケットでは、発射時のロケット噴流(プルーム)による音響環境を従来に比べて緩やかにする発射台(射座・煙道)形状を選定する計画です。

ロケットの打ち上げ時の音は、周辺の生活環境への影響だけでなく、衛星等機器の存立を左右する決定的な存在です。特に固体ロケットモータの有する高い推力は、通常の流体機械の騒音問題とはかけ離れたレベルの高音圧の源となります。

ノズルから排出される高速高温プルームは、それ自身が音源となるとともに、排気流と射場(例えば、デフレクタや煙道)と干渉して新たな音源を形成し、こうして発生した音は、射場構造物との反射や空気伝播を経て上昇中の機体に到達して、フェアリング内部の搭載物を加振します。予想される加振レベルが高い程、搭載物の耐振設計余裕を増す必要が生じるため、ロケット打ち上げ時の様々な音源の特性を把握して射場設計など適切な音響対策を施すことができれば、イプシロンロケットでは信頼性・コストにおいて競争力を高めることができると考えています。

イプシロンロケットプロジェクトチームは宇宙科学研究所および情報・計算工学センターと協力し、流体メカニズムに基づいて高精度な解析が可能な数値流体力学(CFD)技術を活用した形状評価のための第一次設計、および広域帯の予測に必要な半経験的予測手法(NASA SP-8072)の高精度などに取り組み、射点音響設計を進めてきました。

これまでも固体モータ地上燃焼試験の機会を利用して音響計測を実施し、航空プログラムグループが培ってきたジェットエンジン騒音研究における音響計測技術の知見をもとに、解析結果の検証を行っており、液体ロケットレベルの外部音響環境の実現を目指して開発を進めていきます。

参考

2011年5月19日

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