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トピックス

2009年度第二次気球実験の実施について

【実験期間】8月17日(月)〜9月18日(金)※予備期間を含む
【実験場所】大樹航空宇宙実験場(北海道大樹町)

B09-04 小型インフレータブル柔構造飛翔体の展開及び飛行実験

地球周回軌道上及び惑星間空間からの帰還回収システムや、惑星探査などにおいて、空力加熱を緩和し、飛行の安全性や信頼性を向上させることができると期待されている低弾道係数(=軽量大面積)柔軟膜構造型大気突入システム開発の一環として行われるものです。飛行体は高高度で気球から切り離された後、ボンベからのガス注入により浮き輪型のフレームを膨張させます。同時にフレームに張られた膜面も展開し、軽量かつ大面積の飛行体となって、効率よく減速して低速度で安全に落下します。本飛行実験により、このようなインフレータブル柔構造宇宙飛翔体の展開技術や、飛行中でもこわれない膜面飛行体の設計技術が実証されます。
【使用気球】満膨張体積:5,000m3、33kg 搭載機器:91kg)

B09-05 成層圏大気のクライオサンプリング

成層圏での大気循環や大気微量成分の反応過程を知るために、−269℃の液体ヘリウムを用いて希薄な大気を固化して大量に採集するクライオサンプラーという装置を用いて、35kmから10kmまでの大気試料を高度別に採集します。得られた大気試料を研究グループの各大学や各研究所に配分し、最先端の分析装置を用いてさまざまな大気成分の濃度および同位体を測定し、成層圏でのそれらの高度分布や経年変化の様子を詳しく調べます。これまでの観測から、成層圏における同位体異常や重力分離効果など世界に先駆けた発見を行っており、今回の実験では地球温暖化にともなって成層圏の大気循環がどのように変化しつつあるかを中心テーマとし、2009年1月に打ち上げられた温室効果ガス観測衛星「いぶき」の検証に資する観測データを取得すると同時に、さらに新たな発見も目指します。
【使用気球】満膨張体積:100,000m3、296kg 搭載機器:350kg)

B09-06 ソーラー電カセイルの展開総合実験

空気抵抗の小さい高高度環境において、ソーラー電力セイルを展開し、評価します。膜面は、厚さ7.5μm・差し渡し20mの正方形で、内側に薄膜太陽電池セルが取り付けられています。地上で膜面を展開機構に収納しておき、上空でスラスタによってスピンアップした後に、2段階に分けて膜面を展開します。この様子を複数のカメラで撮影するとともに、各種データを取得し、数値解析結果と比較・検証します。本実験では、実機を想定した膜面・展開機構を用い、収納・展開の方法・手順も極力一致させることで、一連のプロセスを総合的に評価します。
【使用気球】満膨張体積:300,000m3、637kg 搭載機器:583kg)

B09-07 圧力気球飛翔性能試験

100日間以上の超長時間飛翔を可能とする次世代気球「圧力気球」開発の一環として、中型の圧力気球の飛翔性能試験を実施します。気球上昇に伴って正しい形状に膨張することを確認し、成層圏での浮遊中の耐圧性能を評価します。
【使用気球】満膨張体積:60,000m3、471kg 搭載機器:40kg)

B09-08 bCALET-2による高エネルギー電子・ガンマ線観測

我々の宇宙で既知粒子が占めるエネルギー密度はわずかに4%程度であるのに対して、正体が不明な暗黒物質が23%を占めており、その解明が宇宙物理学上の最重要課題となっています。宇宙から飛来する高エネルギー電子・陽電子は、暗黒物質や近傍加速源の探索に有望なプローブです。このため、電子・陽電子のエネルギースペクトルや到来方向分布の観測を、国際宇宙ステーション搭載を目的としたCALET(Calorimetric Electron Telescope)のプロトタイプである気球搭載型装置(bCALET:balloon CALET)によって実施します。今後bCALET観測器を段階的に大型化してCALETの性能実証を行うとともに、長時間気球観測により暗黒物質・近傍加速源の検出に挑戦していく第一歩となります。
【使用気球】満膨張体積:100,000m3、296kg 搭載機器:350kg)

2009年8月10日

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