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「ひので」搭載の3望遠鏡で太陽観測を開始
〜X線望遠鏡は「ようこう」の約3倍の解像度〜

平成18年9月23日に、M-V-7号機により打ち上げられた「ひので」(SOLAR-B)は、日・米・英3ヶ国が共同して開発(注)したものです。打上げ以来太陽同期極軌道への衛星投入、姿勢制御機能の性能確認など、初期段階の運用を順調に進めてきましたが、10月28日までに搭載している3台の望遠鏡すべての蓋を開き、太陽観測を開始することができました。これにより、打上げ後の主要な初期運用イベントを完了したことになります。

現在、「ひので」は、電力・姿勢ともに安定しており、衛星や望遠鏡の調整を進めつつ試験観測を続けています。今後約1ヶ月をかけて、徐々に科学観測主体の運用に移していく予定です。

各望遠鏡の蓋開けのようす、これまでに確認できた性能などは、以下のとおりです。

1.可視光・磁場望遠鏡(SOT)については、10月25日夕刻(日本時間)に蓋開けを完了し、その直後から、試験画像の取得、焦点調節などの調整を進めています。SOTの焦点面検出装置には3種類の光学系/撮像機能が内蔵されています。このうち、SOTの主要特長である高解像度撮像をおもな狙いとする「広帯域フィルタ撮像系」で取得された画像(図1)を添付します。この画像により、狙い通り、0.2秒角の高解像度が達成されていることが確認できました。また、太陽表面の磁場微細構造の精密測定をおもな狙いとする「スペクトロポラリメータ撮像系」についても、所期の性能が達成できていると判断できました。但し、広視野・高速撮像を狙った「狭帯域フィルタ撮像系」において、視野の一部に画像の乱れが見つかりました。このため、広視野を必要とする観測に一定の制約が生じることは避けられませんが、視野の健全な部分を繰り返し使うことなどにより、狭帯域フィルタ撮像系の科学目的のかなりの部分が実現できる見込みです。なお、画像の乱れの原因については、開発を担当した米国NASAにより原因究明がなされます。

2.X線望遠鏡(XRT)については、10月23日夕刻(日本時間)に、XRTの試験画像を取得することができました。この画像、及びその後取得されている画像(図2)により、XRTは、「ようこう」軟X線望遠鏡の解像度を約3倍ほど上回る、1秒角に迫る解像度を実現しており、所期の性能を達成していることが確認できました。
 なお、打上げ直後に望遠鏡の鏡筒前面部の温度が当初見込みより上昇したため、ヒーターで加熱することにより開くようになっている蓋が、予定より早く打上げ16時間後に開くという事象が発生しました。この蓋は打上げ時の振動・衝撃及びほこりの侵入から望遠鏡内部を保護するものであり、蓋が早く開いたことにより望遠鏡の性能に影響が及ぶことはなく、今後の観測に支障はありません。

3.極端紫外線撮像分光装置(EIS)についても、10月28日夕刻(日本時間)、望遠鏡の蓋開けを完了し、その直後に試験的に取得した「分光撮像データ」により、良好な状態であることが確認できました。EISは、スリットとスロットを動かすことで多波長での撮像を実現する仕組みの観測装置であり、取得された分光撮像データは位置情報と波長情報が重なったものであることから、これを分離した画像に整理してから公開する予定です。(図3:EISの分光撮像データの例)

(注)各機関の開発担当
JAXA及びNAOJ:衛星本体、SOT(光学系部)、XRT(検出器部)、EIS(対衛星インタフェース)
NASA:SOT(焦点面検出装置)、XRT(光学系部)、EIS(光学部品の提供)
PPARC:EIS(構造、検出器部、電子回路部)

2006年10月31日

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