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赤外線天文衛星「あかり」がとらえた星の誕生と死

2006年2月22日に内之浦宇宙空間観測所から打ち上げられた赤外線天文衛星「あかり」(ASTRO-F)は、赤外線を放射する天体を全天にわたって観測し宇宙の赤外線地図を作成するミッションを順調に続けています。この観測の中で「あかり」は、星の誕生と死に関する新たな画像の取得に成功しました。

1. 星の誕生

図1は、「あかり」の近・中間赤外線カメラ(IRC)によるケフェウス座の散光星雲IC1396の赤外線画像です。
IC1396は我々の太陽系から3000光年弱の距離にあり、太陽の数十倍の質量を持つ重い星が生まれている領域です。ここでは画像中央付近で生まれた大質量の星が周囲の星間ガスを吹き払っています。周囲に掃き寄せられ圧縮された星間ガスからは、それをきっかけに次の世代の星が誕生するという星形成の連鎖が起きています。「あかり」は、掃き寄せられた星間ガスの分布や、そこで星が生まれつつある様子を、世界で初めてこの星雲全体にわたって鮮明にとらえました。「あかり」の画像にはこれまで詳しく観測されていない若い星も多く含まれ、この領域における星形成の全体像が明らかになると期待されます。

図1 「あかり」によるケフェウス座の散光星雲IC1396 の赤外線画像
(観測波長9μm と18μm の画像から疑似カラー合成したもの)
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2. 星の死

図2は、うみへび座U星の遠赤外線画像です。この星は太陽から約500光年の距離にある赤色巨星で、「あかり」の観測装置である遠赤外線サーベイヤ(FIS)が、その周りに拡がる塵の雲の観測に成功しました。
太陽と同程度の質量の星は、その生涯の最後に大きく膨れあがって赤色巨星と呼ばれる星となり、表面からは星を構成していたガスが宇宙空間に吹き出します。赤色巨星から吹き出すガスの中では塵が作られ、ガスと一緒に拡がっていきます。「あかり」は、これまでにない高い解像度でうみへび座U星を観測し、そのまわりを約0.3光年離れて取り囲む塵の雲をとらえました。これはこの星が約1万年前の一時期、現在よりもずっと激しくガスを吹き出したことを示しています。星の終末期を知る上で重要な成果です。

図2 「あかり」による赤色巨星うみへび座U星の赤外線画像
(観測波長は90μm )
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<参考資料>

2006年8月28日

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