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M-V-7号機第2組立オペレーション終了

M-V-7号機第2組立オペレーションが鹿児島県の内之浦宇宙空間観測所(USC)で行われ、21日無事終了した。前回「M-V-7号機第2組立オペレーション始まる」の原稿を書いた際、「幸いにして実験主任の行いが良いため(??)か、これまでのところ安定した天候にも恵まれ作業は順調に進行しているが、落雷も含めこの後何が起きるか分からないので、関係者一同気を引き締めつつ9月の打上げに向けて着々と準備を進めて行く所存である。」、と書いたが、その後の出来事はまさにこの予言通りであった。実際には実験主任の行いが悪かったと見えて、原稿を投稿した直後台風10号が発生し、まさかと思っているうちに進路予想が九州の方を向き始め、内之浦に近づいたところでうろうろ迷走を始める始末。かなり長い間、大荒れの天気が続いた。

固体ロケットモータは見かけによらず重たいので、ロケット頭胴部をM組立室から数十メートル離れた整備塔まで運んで吊り上げるまでの作業が大変で、強い風が吹けば作業者に危険が及び、強い雨が降れば搭載電子機器への悪影響が心配される。いつ運ぶか、大変難しい修羅場を迎える事となった。種子島のKSC気象室から時々刻々送られて来る台風進路予想は素人の我々関係者には大変有り難かった。但し、気象庁発表のデータ同様、予想進路は僅か数時間のうちにあっちを向いたりこっちを向いたりし、強風域に入る予想時刻もその都度修正が掛かる。今回の迷走台風は専門家をも振り回すほど大変厄介なものであった。結局、先に強風域に入っているはずの種子島で思ったほど強い風が吹いていない事を示すデータが拠り所となり、一か八かでスタンバイをかけたところ、不思議な事に作業予定時刻付近は雨も降らず、風も人に心地よい程度の風しか吹かなかったため、作業を予定通り行う事が出来た。ロケット頭胴部を無事整備塔に吊り込んだところでなぜか突風が吹き、悪運の強さを実感した。

だが決してこれだけでは終わらなかった。動作チェックを無事通過し、CN系配線チェックと称する誘導制御コンピュータと姿勢制御アクチュエータとの極性試験を予定していた日の早朝、USC周辺に激しい落雷があり、そのうちの一つがUSCの電力取り込み口の電柱を直撃し、USC全体が停電した。衛星やロケットがあるので大急ぎで自家発電装置を運転し、対応したが、電力容量が足りないため、関係者は超節電モードで作業せざるを得なくなった。大雨の後晴れてきたため、空調を切られた蒸し暑い部屋の中で実験班各員は本当に頑張ってくれた。超ベテランオペレータが揃っているため、雷による影響がないかどうかもう一度臨時の動作チェックを追加したが、それでもほぼ予定通りの時刻に作業は終了した。第2組立オペレーションの主目的である電気系機器のチェックは滞りなく行われ、不具合も全く見られない。台風、雷、停電のトリプルパンチに悩まされたものの、終わってみれば実に順調な結果であった。

あと1週間もすればいよいよフライトオペレーションが始まる。今回たっぷり見せて貰った実験班員の団結力と底力。これがあれば、9月23日のSOLOR-B衛星の打上は必ず成功するものと信じている。

M-V-7号機第2組立オペレーション実験主任  山本善一

整備塔からクリーンブースへ戻り、フライトオペレーションでの 衛星組付けを待つ頭胴部

最終チェック中のSOLAR-B

2006年8月24日

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