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第47回科学技術映像祭文部科学大臣賞受賞
「はるか」のためにありがとう

 「3万kmの瞳」が賞を頂いて、「はるか」のためにとてもよかったと思っています。
 「はるか」を看取った日が昨年の晩秋(11月30日)、「はるか」プロジェクトの終了がこの春(3月31日)でした。平成元年から続いた17年間の「はるか」プ ロジェクトの終了でした。そんなわけで、亡くなって、次第に忘れられていく「はるか」の死への「はなむけ」のような気がしているのです。

 オペラが好きです。「ボエーム」では、ヒロインのミミが最後に死んでしまって、恋人のルドルフォは生き残ります。「はるか」は、恋人でもない、母なるものでもない、妹でもない、優しかったおばあちゃんでもない、いったい何なのだろうと思っています。

 授賞式は科学技術館でおこなわれました。受賞を受ける代表者たちも授けるひとたちも壇上に並んで、順次に表彰状が渡されました。これが実にしめやかでそつがなく執り行なわれたのです。各方面にお辞儀をして賞を頂いてまたお辞儀をして席に戻ってきます。告別式で親族が順番に最後のご焼香をしているみたいだなと、ヘンなことを考えました。  
 「はるか」のことを偲んでいたので、こんな感じかたをしたのでしょう。決して、授賞式を愚弄するものであはありません。でも、アカデミー賞やカンヌ映画祭の授賞式ほどでないにしても、セレモニーにちょっと工夫があってもいいかなと思いました。

 映画つくりを通じて、映画をつくるのはおもしろいことだなと思いました。
 できることなら、今度は、ひとつの宇宙ミッションには直接には関わらない、メッセージ性がありながらあっさりと品格のある宇宙番組を企画してみたいなと思います。宇宙の不思議さ、ソコに私たちがいる不思議さ、科学的にも文化的にもいい番組。でもこれだけでは、なんだかとても一般的な希望を述べているだけのようです。

 今回のパートナーだった映画会社のスタッフにもこの話をしてみました。「今度は総理大臣賞を狙いましょうね」なんて調子にのっています。アイディアと企画が勝負。相照らしあうようなパートナーがあると、奇跡がはたらいてできるのかもしれません。

 週末は、土曜夜と日曜昼の剣道稽古を続けています。遅い昼食の後にちょっと昼寝をすると陽が傾き始め、仕事嫌いの私は、ああもう大事な日曜日が終わってしまうのかと暮れなずむ時間を、夏休みが終わりに近づく小学生のような面持ちで眺めます。  
 思い立って、カルメンをDVDで観はじめました。クライバーという指揮者がいいよと教えてくれる人(JAXA広報部のKさんで、なんと、声楽科の出身というではありませんか!)がいて、ウィン国立歌劇場の何十年も?前の熱演の「カルメン」を貸してくれたのです。赤ワインのグラスとおつまみをもって特等席S(我が家の居間のうすい座布団のこと)に陣取りました。  
 ビゼーはなんと凄かったのだろう、クライバーの指揮も凄ければ、カルメン役もホセ役もミカエラ役もエスカミーリョ役もみんななんと素晴らしいのだろう。そうして、感動に震えながら、芸術作品ができるのは人知を超えた奇跡なんだと思いました。

 授賞式は3月21日でした。タイムマシーンに乗ってS席で「カルメン」を観たのは23日でした。
 明日は、また違うことを考えているかもしれません。

(「はるか」プロジェクトマネージャー  平林 久)

2006年4月25日

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