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「はやぶさ」の第2回着陸飛行後の探査機の状況について

すでにお知らせしたように、「はやぶさ」は、平成17年11月26日に、イトカワ上のミューゼスの海付近に着陸し、試料の採取を成功裏に終えました。この報告は、その後の探査機に生じた事象と現在の状況について報告するものです。

[状況について]

「はやぶさ」は、11月26日に着陸と試料採取を実施し離陸後、上昇速度をとめる軌道制御を実施し、これに成功しましたが、その後の姿勢制御中において、化学エンジンの1系統から燃料のリークが発生しました。これを止める運用が有効に実施されたことは11月26日の運用後に発表していたところです。

11月27日までの運用は、NASA 局および臼田局からともに正常に行われましたが、11月27日の運用において化学エンジンの推力が低下していることが判明し、回復と機能維持にむけた姿勢・軌道制御を指令しました。しかし、11月28日には探査機との通信が確保されない状態にいたりました。11月29日午前10時過ぎに、ビーコン回線が回復し、現在、復旧にむけた運用を継続しています。

現状から判断すると、探査機の運用再開には、一定の期間を要する見込みです。「はやぶさ」搭載の推進系を除く各機器の状態は、健全に保たれており、時間をかけて復旧を試みる予定です。詳細は、現在解析・検討中です。

[これまでの経緯]

  1. 11月26日の離陸後の上昇速度を減速する軌道変更の後、姿勢制御に使用する推進系の系統を B 系(*) に切り替えた際、探査機上面の B 系スラスタからと推定される燃料(ヒドラジン)の漏洩(リーク)が発生し、緊急運用を行って、A, B 両系の遮断弁(ラッチ弁)を閉鎖しました。リークに伴い、探査機の下面方向に加速が発生しましたが、その様相の例を(資料−1)に示します。 これによりリークは停止し、探査機の状態をセーフモードに入れることができ、運用にかかわる問題は一応回避されました。リークの発生部位は、これにともなって発生した推力とトルクから、探査機上面の B系スラスタからと推定されています。
    * 化学エンジンのスラスタ(噴射器)配管には、万一のリーク故障などに備えて、系統を分離可能なように、A, B 両系統が設けられている。両系とも単独で3軸の姿勢制御が可能である。
  2. 11月26日のNASA マドリッド局での運用時間帯と、翌日の臼田局での運用時間帯に、このセーフモードからの復帰を試みましたが、化学エンジンの推力の大きさが不十分で、姿勢・軌道の制御状態を回復することができませんでした。詳細は解析中ですが、A 系統における何らかの要因による弁の閉塞の継続か、配管内の凍結が原因の候補と考えられています。
  3. 11月27日の運用終了時には、再度セーフモードに近い状態に探査機姿勢を入れ直すための操作を指令して運用を終えました。しかしながら、11月28 日の臼田局での運用においては、運用開始時点から探査機との通信は確立できませんでした。
  4. 11月29日午前10時すぎ、ビーコン回線が回復し、現在、テレメトリ回線への切り替えと再度のセーフモードへの移行を指令することを含めて、復旧運用を行っているところです。

(資料―1)リークに伴う探査機下面方向への加速度の様相

図1a 着陸後の上昇停止制御の実施結果と、その後のリークに関わる加速度
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図1b 11月27日の運用におけるレンジレート変化
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2005年11月29日

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