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分離後の「ミネルバ」が「はやぶさ」を撮影

探査ロボット「ミネルバ」は、11月12日の第2回リハーサル時に、「はやぶさ」から分離されました。分離時に探査機は重力を補償するためのスラスタ噴射を繰り返しており、あいにく上昇速度をもった時点で分離が実施されたため、残念ながら「ミネルバ」をイトカワ表面に投下することはできなかったもようです。詳細はなお調査中です。

分離後、「ミネルバ」は回転しながら放出されていく過程で、「はやぶさ」をカラー撮影しました。(資料−1)画面には、「はやぶさ」探査機の(+ Y 面側太陽電池パネルの)「パネル B-1 展開ディレイ機構の金具(フック)」と、太陽電池板の裏側の電力計装線が撮影されています。フックは、(資料−2)の図面上の○内にあり、この電力計装線が同太陽電池のものであることは、(資料−3)の打上げ前の整備中の写真で照合・確認することができます。

また、(資料−4)には、「はやぶさ」から分離後212秒後に広角航法カメラで撮影された、「ミネルバ」と思われる物体を示します。「ミネルバ」は分離後イトカワからゆっくりと上昇を続けていたと思われますが、「はやぶさ」との通信は、18時間継続して安定に確保され、この間、「ミネルバ」の内部の温度や、電源電圧、探査ロボットの姿勢を示すフォトダイオード(簡易太陽センサ)の出力などを探査機に送信し、「はやぶさ」を経由して地上に送信することに成功しています。(資料−5)得られたデータのうち温度データは分離後もなお上昇しており、イトカワ表面からの熱輻射を受けていたためと考えられ、科学的にも意味のある計測ができた可能性があります。18時間後には、アンテナの指向方向の問題で通信ができなくなった可能性がありますが、なお継続してコンタクトを試みる計画です。また、「はやぶさ」から「ミネルバ」への指令についても、機能の切り替え指令した通信が正常に行われ、それをうけた動作も適切に実施されたことが確認されています。

「ミネルバ」が送信したデータは、

  1. ステータス(ホップ中、静止中などの動作状態)、
  2. ハウスキーピングデータ(電気二重層コンデンサの電源電圧、記録したメモリ容量など)、
  3. 計測データ(フォトダイオード出力、温度センサ)、
  4. 画像データ

です。(「ミネルバ」は、カメラを3台、フォトダイオード6個と温度センサ10個(内部4個、外部6個)を搭載しています。)

<資料>

資料−1

「ミネルバ」から撮影された「はやぶさ」探査機の太陽電池B-1 パネル先端に金具(フック)が見える。白い線は電力計装線。

資料−2

「はやぶさ」探査機の太陽電池板のレイアウト 赤丸印内が、+Y パネル B-1 の展開ディレイ機構の金具(フック)

資料−3

打上げ前「はやぶさ」の整備中に記録撮影されていた太陽電池板。 B-1 パネル裏に白い電力計装線が見える。

資料−4

「はやぶさ」探査機から撮影した「ミネルバ」と思われる物体(円内)。 複数ピクセルで構成されており、同カメラでのほかの画像には同一場所に写っているものはなく、画像上の欠陥によるものではなく、実際の物体であることが確認されています。

 注:上の画像の左下側には、別の物体が撮影されています。 これは「ミネルバ」のカバーであると推定されていますが、詳細は調査中です。

注:上の画像の左下側には、別の物体が撮影されています。
これは「ミネルバ」のカバーであると推定されていますが、詳細は調査中です。

資料−5

「ミネルバ」から取得されたデータの一部

a)電圧が落ちている点が分離時点 (探査機側から「ミネルバ」側供給への切り替わり)

a)電圧が落ちている点が分離時点 (探査機側から「ミネルバ」側供給への切り替わり)

b)フォトダイオードからの信号 (「ミネルバ」の姿勢が回転していることを示す。)

b)フォトダイオードからの信号 (「ミネルバ」の姿勢が回転していることを示す。)

c)分離に先駆ける温度上昇は、「はやぶさ」が小惑星に接近したために表面からの熱輻射で熱収支のバランスが変化したためと考えられる。

c)分離に先駆ける温度上昇は、「はやぶさ」が小惑星に接近したために表面からの熱輻射で熱収支のバランスが変化したためと考えられる。

2005年11月13日

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