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火星大気は太陽風によって流出する!
(Mars Express 衛星に搭載された粒子観測センサーASPERA-3 による観測)

ASPERA-3 グループ(ヨーロッパ・アメリカ・日本による共同研究グループ)は、火星周回衛星 Mars Express に搭載された粒子エネルギー・質量分析器セットASPERA-3によって、太陽風が火星大気の昼間側深部(高度約270km)にまで侵入し、同時に火星電離層の酸素イオンの一部が毎秒数十キロメートル以上にまで加速されていることを発見し、Science誌9月号に発表しました。

火星電離層の酸素イオンの速度は火星からの脱出速度の十倍以上の速さであり、これは大変驚くべき結果です。さらにまた、二酸化炭素イオンなどの分子イオンと推定されるデータもあり、火星大気の流出(散逸)が電離層の上層だけでなく、非常に低い高度から起きていることを意味しています。この結果は、火星大気や水が長期間に失われていったことの説明につながる可能性もあります。

もともと火星の電離層境界は数百kmと想定されていて、太陽風はその中に侵入することができないと考えられてきました。このため、270kmという高度にまで太陽風が直接到達していることは大変驚くべきことなのです。

一般に、惑星と太陽風の相互作用は、惑星固有の磁場や大気の状況によって大きく変わりますが、太陽風にとってその境界は壁であり、それを越えて太陽風が侵入するのは容易でないと考えられています。火星と同様に固有磁場のない金星では電離層境界はクリアーですが、火星の電離層境界は想定していたほど強くないのかもしれません。

火星電離層イオンが加速されたメカニズムとしては、太陽風が低高度の火星電離層に侵入することにより周囲の大気粒子にエネルギーを与えた結果であろうと推定されていますが、詳細の解明は今後の課題です。

Mars Express 衛星のミッション概要、軌道、搭載機器などについては、
http://www.esa.int/SPECIALS/Mars_Express/(英文)
に掲載されています。

なお、Mars Express 衛星では開発段階からのぞみ衛星との相補的観測が提案されていました。ASPERA-3観測器には宇宙科学研究所(現JAXA宇宙科学研究本部)宇宙プラズマ研究系助教授早川 基、同助手淺村和史が共同研究者として開発に携わってきました。

掲載誌「Science, vol. 35, 24 Sep. 2004」はこちら>>

2004年9月27日

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