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NICT、JAXA共同で内之浦34mアンテナを使用しての惑星探査機軌道決定を想定した初VLBI観測に成功

宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究本部(ISAS/JAXA)は、独立行政法人情報通信研究機構(NICT)と協力して、内之浦宇宙空間観測所の34mパラボラアンテナに、惑星探査機の高精度軌道決定のための新しい機能追加を行いました。これは、VLBI(超長基線干渉計:Very Long Baseline Interferometry)と呼ばれるもので、複数のアンテナで同時に電波を受信することで、惑星探査機の軌道決定の高精度化を目指すものです。
まず、試験観測として、内之浦34mアンテナとNICT鹿島宇宙通信研究センターの鹿嶋11mパラボラアンテナで同時に銀河系外の電波天体を観測し、VLBIの観測が正常に行われることを確認しました。さらに、内之浦34mアンテナと臼田宇宙空間観測所の64mパラボラアンテナを使った小惑星探査機「はやぶさ」のVLBI観測にも成功し、惑星探査機についてその新しい軌道決定への第一歩を踏み出しました。

背景

VLBIは天体から出た電波を遠く離れた複数のアンテナで同時に受信することにより、アンテナ間の相互位置をミリメートルの精度で測定可能な技術ですが、これを応用して、惑星探査機の軌道を決めることができます。これはかなり高度な技術であるために、VLBIを用いた宇宙探査機の軌道決定を実用化しているのは、現在ではまだ米国のみです。日本でも、小惑星探査機「はやぶさ」など、高い精度での運用が要求されている惑星ミッションが行われていますが、今後、さらに高精度の軌道決定が要求される宇宙ミッションが計画されるものと思われます。
このような状況に対応するためにも、従来の軌道決定の手法に、VLBIの技術を組み込んでいく必要があります。また、米国では軌道決定のため特別な通信方法のみでVLBI観測を行っていますが、わが国では探査機との通常の情報通信を利用したVLBI観測方法を開発中であり、探査機運用の効率を上げることにより柔軟性に富んだ宇宙ミッションが行えることも目指しています。
このように、VLBIを導入することによって、軌道決定精度が向上し、より高度で信頼性が高い惑星探査機の柔軟な運用が可能になります。さらには、惑星科学に応用することで、惑星やその衛星の大気や重力場の精密観測が、準リアルタイムで可能となると期待されます。

今回の成果

JAXAとNICTは、惑星探査機のより高精度で迅速な軌道決定を目指した研究開発を共同で進めています。2004年7月1日の観測では、NICTが開発したVLBI観測機器を鹿児島県の内之浦34mアンテナに設置し、長野県の臼田64mパラボラアンテナやNICT鹿島宇宙通信研究センターの鹿嶋11mパラボラアンテナなどとともに、内之浦34mアンテナにとっては初めてのVLBI観測を実施しました。内之浦および臼田において取得されたデータは観測後すぐに鹿島へインターネット経由で伝送され、NICTが独自に開発したソフトウエアで解析が行われました。その結果、内之浦34mアンテナとNICT鹿嶋11mアンテナの双方で同時に受信した銀河系外電波天体の信号について、観測から1日以内でそれぞれの信号の波面が一致したことを示す干渉縞(フリンジ)の検出に成功しました。この一致は、1000兆分の1秒もの高精度の時計を基準にしたものです。
さらに7月2日には、太陽系空間を飛行する小惑星探査機「はやぶさ」からの信号について同様の観測を行い、内之浦34mアンテナと臼田64mアンテナとの間で、干渉縞の検出に成功しました。これらの成果は、「はやぶさ」をはじめ惑星探査機の軌道をより高精度に決める技術を獲得するための第一歩です。

今後

JAXAとNICTは今後も共同してVLBI観測実験を進めます。具体的には、内之浦34mアンテナの位置測定を目的とするVLBI測地実験や、「はやぶさ」などをターゲットにした実証実験を重ねる予定です。このことで、より高精度かつリアルタイムでの惑星探査機の位置計測技術の研究開発を進めます。

2004年9月22日

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