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展開型柔構造による大気突入飛行体の自由飛行実験

 宇宙科学研究本部は、大気球を用いて、将来の惑星探査等で有用となる、展開型柔構造を有する大気突入飛行体の自由飛行特性を把握する実験を行いました。

 平成16年8月28日(土)6時31分に平成16年度第2次気球実験の2号機として、B100-10号機を三陸大気球観測所より放球しました。この気球の容積は10万立方メートルであり、平均速度270m/分で正常に上昇しました。高度約14kmで排気弁を操作して上昇速度を0.5m/秒としました。その後、東方200kmに到達した時点で、バラストを投下して再上昇させ、放球4時間後に高度39.3kmで水平浮遊状態に入りました。そして、10時40分に柔構造機体を分離しました。

 実験は、将来の惑星探査等で有用となる、展開型柔構造により低弾道係数化した大気突入飛行体の開発の前段階として、同等の構造を有する飛行体の自由飛行特性を把握することを目的として行われました。
 飛行体の形状は、開き角度45度の円錐形状で、先端部分がいわゆるカプセル機体(鉄製)です。計測、テレメータ等はこの中に内蔵されています。円錐状の部分は、ザイロンという耐熱性材料の繊維から出来ている織物です。円錐状の端には、金属性の12角形のフレームが入っています。このフレームは、展開できるようになっています。折り畳んだ状態では、中央のカプセルと同程度の大きさになります。今回のバルーンによる実験では空中展開はせず、展開した状態でゴンドラからつり下げ、上空で切り離しをしています。
 飛行は高度40kmからの自由落下飛行で、到達マッハ数、動圧はそれぞれ0.9、0.8KPsで計画しました。特に動圧は大気突入時とほぼ同じものです。飛行中は、機体の映像データ以外にも、位置、加速度、動圧、姿勢などの飛行データも合わせて取得を計画しました。

 飛行はほぼ予定どおりに行われ、映像データなど、ほぼ全てのデータを取得することに成功しました。特に、映像データでは海面着水までの飛行中の機体の健全性を確認することが出来ました。下の画像は、機体の中央につけれらた魚眼レンズで後方を見たもので、画面中央に切り離されたバルーンその脇に太陽、その周りに柔軟構造の機体が写っています。本実験で用いられたような展開型柔構造を持つ飛行体の自由飛行は、公表されたものとしては世界初のもので、特に、柔構造の飛行中の挙動の映像データは、貴重なものです。
 詳細なデータの解析はこれから行う予定ですが、この実験により、大気突入する機体の開発に向けての1ステップを踏み出したことになり、将来の惑星探査等に応用される機体開発の進展が期待されます。

柔構造の飛行中の挙動の映像

2004年9月9日

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