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「ベピ・コロンボ計画(水星探査)」の日本のオービター生き残る

11月3日の週に行われていたESA(ヨーロッパ宇宙機関)の科学計画委員会(SPC)は、財政の窮迫を受けて「コズミック・ビジョン・プログラム」(2012年までの宇宙科学計画)の見直しを行い、太陽系外の地球型惑星を発見するためのミッション「エディントン」をキャンセルすることを決定した。また水星ミッション「ベピ・コロンボ」のうち、水星表面へのランダー(MSE: Mercury Surface Element)をキャンセルすることも決定した。ただし、「ベピ・コロンボ」のうちESAのオービター(MPO: Mercury Planetary Orbiter)と日本のオービター(MMO: Mercury Magnetospheric Orbiter)は生き残っている。これはすでに今年6月のESA閣僚会議で認識されていたことであるが、今年1月の予期せぬアリアン5の打上げ失敗による「ロゼッタ」の延期などに伴う金銭的補償などのために、ESAが財政的に非常に苦しくなっているための決定である。今回のSPCは重苦しい雰囲気の中で長時間にわたって行われ、新たにスタートするミッションは世界初の重力波天文学衛星LISAのパスファインダー(技術試験機)だけとなった。

「エディントン」はすでに10年にわたって追求してきたミッションで、2007年度の打上げが予定され、キャンセルの動きがあったため、ヨーロッパの 414人の天文学者が名を連ねたミッション継続を願う嘆願書がESAに提出されていた。一方「ベピ・コロンボ」は、日本とESAと共同で計画中の水星探査ミッションである。水星は、太陽に近い灼熱環境と軌道投入に要する多大な燃料から周回探査が難しく、過去の探査は米国マリナー10号の3回の通過(1974〜5)のみだった。このマリナー10号をアメリカが遂行した際、金星を通過してその重力でスイングバイを行うことによって何回か水星に接近できることを示唆したのが、イタリアの著名な天体力学者ジウゼッペ・コロンボ博士。新しい水星探査ミッションの名前には博士の愛称である “BepiColombo”が使われている。

マリナー10号の探査によって、水星にも磁場と磁気圏活動があることが発見された。「ベピ・コロンボ」は、この惑星の磁場、磁気圏、内部、表層を初めて多角的・総合的に観測し、「惑星の磁場・磁気圏の普遍性と特異性」、「地球型惑星の起源と進化」について明らかにするミッションとして計画された。

もともとの「ベピ・コロンボ」計画は、観測目的に合わせた「2つの周回探査機と1つの着陸機」、すなわち、表面・内部の観測を行う「水星表面探査機(MPO)」、磁場・磁気圏の観測を行う「水星磁気圏探査機(MMO)」)、表面・地下を直接観測する「水星着陸機(MSE)」の3機で、JAXAは日本の得意分野である磁場・磁気圏の観測を主目標とするMMO探査機の開発と水星周回軌道における運用を担当し、ESAが、打上げから惑星間空間の巡航、水星周回軌道への投入、MPOとMSEの開発と運用を担当することになっていた。

2010年度に、2機のソユーズロケットでMMO、MPOおよびMSEをそれぞれ打ち上げ、2014年度に水星周回軌道へ投入し、MMOとMPOは1年間の磁場や磁気圏、希薄な大気等の水星環境の観測を、MSEは数週間の表面の鉱物・元素組成等の水星表層の観測を予定していたもの。MMOが生き残ったことで、JAXAはこれまでどおり「ベピ・コロンボ」関連の仕事を進めていくことになる。

2003年11月10日

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