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大気のない地球型小惑星表面に揮発性成分を含む鉱物発見!
宇宙航空研究開発機構・宇宙科学研究本部(ISAS/JAXA)、国立天文台、英国合同天文センター、東京大学、米国ブラウン大学からなる研究グループは本年3月1〜2日に米国ハワイ州マウナケア山頂(標高4100m)に設置された口径3.8mの英国赤外線望遠鏡を使って、大気が存在していない地球型天体である小惑星ベスタ(直径約500km)(図1)の表面に揮発性成分を含む鉱物である含水鉱物が存在している事を世界で初めて発見いたしました(図2)。火星と木星の軌道の間の小惑星帯にある地球型小惑星ベスタは岩石が融ける程非常に高温になった為(図3)に、水などの揮発性成分は蒸発してしまい、さらに地球と比べると遙かに表面重力が小さいので、蒸発したガスを大気として地表面に留まれなかったと考えられています(図4)。
図1 |
図2 |
図3 |
図4 |
小惑星ベスタは、同様に岩石が融解しコア・マントル・地殻という内部構造を持つ地球型天体と、ISAS/JAXA の小惑星探査機「はやぶさ」(図5)が2005年に探査する天体内部が融けていない始源的な天体である小惑星「Itokawa(糸川)」の中間的な存在に位置する小惑星であり、月や水星の小型版の天体と言う事ができます。
図5 |
衝突シミュレーションや隕石の分析などの結果を総合すると、今回我々が発見した含水鉱物の起源はベスタ固有のものではなく、ベスタの合体成長進化が終わってから、比較的最近に別の小惑星の衝突し、その破片がベスタ表面にばら撒かれたものと考えられます。衝突してきた小惑星の候補は、含水鉱物に富み、地球型生命を構成するアミノ酸など多様な有機物も含まれている隕石と類似した性質を持つと考えられますので、今回の発見は、地球型惑星のような内部進化した天体の表面に、宇宙起源の新たな揮発性成分の素をもたらす一手段を、天体観測によって解明したと言えるでしょう。
なお、本観測は英国合同天文センターと国立天文台との国際協力による観測時間を利用させていただきました。
これらの観測結果については、米地球惑星物理専門誌「ジオフィジカル・リサーチ・レターズ」の11月号に掲載が予定されています。
問い合わせ先
宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究本部
固体惑星研究系藤原研究室
長谷川 直(特別研究員) 042-759-8189
hasegawa@planeta.sci.isas.jaxa.jp
藤原 顯 (教授)
042-759-8187
fujiwara@planeta.sci.isas.jaxa.jp
2003年10月29日