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ISASニュース

X線天文衛星「すざく」、10周年です

No.412(2015年7月)掲載

 X線天文衛星「すざく」は、この7月に10歳を迎えます。衛星の開発、運用はとても多くの人の努力の積み重ねで実現されています。日夜問わず取り続けられる衛星のデータは、鹿児島県肝付町の内之浦宇宙空間観測所で受け取ります。受信のチャンスは1日5回程度現れるのですが、時間帯は衛星軌道で決まるので、夜中の運用が続くこともあります。このデータは相模原の宇宙研に蓄積され、インターネットを介して世界中の研究者のもとに届きます。こうして日本中、世界中に散らばる人の力を合わせて宇宙の謎を解くという、幸せな10年を「すざく」と一緒に過ごせています。

 どの衛星も例外がないと思いますが、「すざく」も打上げからたびたび困難に直面してきました。最近ではバッテリーなどの電力まわりの経年劣化が大きな運用の課題でした。AとBの2系統のバッテリーが搭載されているのですが、2014年1月にはB系が、2015年1月にはA系が充電できなくなる事象が起きました。そのたびにもう運用終了かと思いましたが、何とか乗り越え観測復帰を果たしています。また、X線CCD カメラ(XIS)と硬X線検出器(HXD)という二つの観測機器の活躍は特筆すべきです。軌道上の過酷な環境による多少の劣化はありますが、科学的成果を出すに十分な性能を維持しています。Nature論文も2年連続で出版されています。

 と、ほぼ原稿を書き終えたところで、6月1日に「すざく」との通信が間欠的にしか確立できない状態になってしまいました。衛星の電源が失われて姿勢制御ができず、およそ3分に1回の周期で無制御にスピンしている状態だと推定されています。そういえば、「すざく」が軌道投入された7月10日はウルトラマンの日でもあります。ウルトラマンは3分たつとシュワッチと飛び立って視界から消えますが、宇宙のどこかでリフレッシュして、次週には何もなかったかのように戻ってきてくれます。「すざく」もウルトラマンみたいに元気になって戻ってこられるよう、運用チーム一丸となって対策を検討中です。

(前田 良知)