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ISASニュース

平成25年度第二次気球実験

No.391(2013年10月)掲載

平成25年度第二次気球実験は、8月19日から連携協力拠点大樹航空宇宙実験場において実施されました。年度当初は、大型気球による実験も計画されていたのですが、第一次気球実験で発生した不具合のため、超薄膜高高度気球の飛翔性能試験のみを実施することとしました。

超薄膜高高度気球は、成層圏を越えて高度50km以上の中間圏に到達できる気球です。気球を高く飛ばすには大きな気球を用いればよいのですが、大きな気球をつくると気球そのものが重くなり、さらに大きな気球を必要とします。大気観測などの軽い観測器によるその場観測には、はなはだ効率の悪いことになってしまいます。そこで、宇宙研では1990年ごろから薄いポリエチレンフィルムを用いた軽い気球の開発を続けてきました。平成14年には、厚さ3.4μm(1000分の3.4mm)のフィルムで満膨張時の直径が54mの気球を高度53.0kmまで上昇させることができました。その後、さらに薄い厚さ2.8μmのフィルムを用いた気球の開発を進めてきましたが、なかなかうまくいかず、10年以上がたってしまいました。今回の飛翔性能試験は、これまでに見つかった問題点一つ一つに対策を施した、集大成の場であったのです。

台風18号が去り、地上天候も高層風も実験に適した9月20日、「空の日」の未明から準備を始め、午前5時22分、満膨張時の直径が60m、体積8万立方メートルの気球が放球されました。実験メンバーが気球の様子を映し出すモニタ画像を見つめる中、気球は上昇を続け、8時4分に高度53.7kmに到達し、8時15分に地上からの無線信号で気球を破壊するまで水平浮遊を続けました。厚さ2.8μmのフィルムで気球をつくり、放球し、飛翔制御できることを実証したことは、無人気球の世界最高到達高度を更新できたことに加えて、大きな成果となりました。

相模原に戻り、来年度こそは大型気球を含む多くの気球実験を実施できるようにと準備を始めています。今年度の気球実験にご協力いただいた関係者の皆さまに深く感謝致しますとともに、今後もご支援のほどよろしくお願い致します。

(吉田哲也)

超薄膜高高度気球飛翔性能試験の放球の様子