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ISASニュース

次世代赤外線天文衛星SPICAの国際科学会議および一般講演会が大盛況

No.388(2013年7月)掲載

ビッグバンから生命の発生に至る宇宙史の解明を目指す国際宇宙赤外線天文衛星計画SPICA(スピカ,Space Infrare dTelescope for Cosmologyand Astrophysics)の国際科学会議“From Planets toDistant Galaxies: SPICA'sNew Window on the CoolUniverse” が、6月18〜21日の4日間にわたり、東京大学伊藤国際学術研究センターで開催されました。この国際会議では、SPICAの科学的価値・独自性を示すとともに、次世代の天文学研究にSPICAをいかに有効に活用すべきかを議論することを目的としました。出席者182名のうち半数近くが海外からの参加者であるなど、SPICAへの世界中からの強い支持を感じました。

最近の赤外線天文学の科学的成果を牽引しているのは、今年5月に液体ヘリウムが枯渇し運用を終了したばかりのハーシェル宇宙天文台です。これまでにない高い感度・解像度を活かし多くの優れた成果を創出してきましたが、「これは氷山の一角にすぎない」という評価が多くの研究者から表明され、SPICAへの期待が熱く語られました。また、「あかり」の成果を引用しつつSPICAの観測への期待を述べる発表も数多くありました。国内外を問わず多くの参加者の発表に、「あかり」の成果がなくてはならないものとして引用されるようになったことも印象的でした。

この国際会議で、SPICAに搭載される極低温に冷却された口径3m級の大型宇宙望遠鏡の優れた検出感度が次世代の天文学研究にとっていかに重要なものであるかが再確認され、SPICAの早期実現を切望する声が多く寄せられました。

続いて、21日の夕方に、霞ヶ関イイノホールにおいて、一般の方向けの講演会「ビッグバンから生命の誕生まで─次世代赤外線天文衛星SPICAの挑戦─」が開催されました。中川によるSPICAの紹介に続いて、各分野で世界を代表する3人の研究者に講演していただきました。まずオランダ宇宙科学研究所(SRON)所長のウォーターズ教授が「宇宙の物質輪廻」、続いて東京大学の田村元秀教授が「惑星系のレシピ」、最後に米国カリフォルニア工科大学のヘロウ教授が「銀河誕生のドラマ」というテーマで、それぞれSPICAへの期待を熱く語ってくださいました。

今回は、講演者および聴衆のどちらにも海外の方が含まれていました。そこで、日英双方向の同時通訳システムを導入しましたが、これは大変に好評で、言葉の壁を気にすることなく、会場一体となっての議論ができました。

講演会は、平日の夕方で雨という悪条件でしたが、約400名もの来場者がありました。またネット中継で数千人の方が講演を聴いてくださり、多くの方からSPICAへの強いご支援の言葉を頂きました。

国際会議および一般講演会の両者で、冒頭のあいさつで力強くSPICAの推進を述べられた常田佐久宇宙科学研究所長をはじめ、多くの方々のご支援に深く感謝致します。

(松原英雄、中川貴雄)

SPICA一般講演会において、会場からの熱心な質疑に答える講師陣

SPICA国際科学会議の出席者