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ISASニュース

西田篤弘先生が文化功労者に

No.381(2012年12月)掲載

1992年に打ち上げられた磁気圏探査衛星GEOTAILをリードされ、宇宙研の所長も務められ、さらに宇宙研を退職された後は日本学術振興会やアジア地域での地球惑星科学研究の連携立ち上げなどの学術振興においても活躍された西田篤弘先生が、2012年11月、文化功労者に選ばれました。おめでとうございます。

西田先生は1960年代、地磁気のデータが唯一の手掛かりであった時代から、地球周辺の宇宙空間(地球磁気圏)を探求してこられました。宇宙時代の黎明期から衛星観測データの解析を開始され、1970〜80年代から世界の舞台で磁気圏物理研究を牽引される役割を果たされました。そして、米国と協力する形でGEOTAILを立ち上げられました。その後、GEOTAILは全世界共同磁気圏観測網の中で重要な位置を占めながらさまざまな成果を出し、「世界で最も成功した磁気圏観測衛星の一つ」という評価を得ています。

GEOTAILは、日本の磁気圏コミュニティの多くのメンバーを世界の舞台へと送り出しました。その要因は、素晴らしい軌道と従来よりもはるかに高性能なデータが未知であったものを世界で初めて見せてくれたことにあった、といえるでしょう。また、そのポテンシャルの高さは、GEOTAIL以前には理論研究を進めていた研究者もそのデータ解析研究へと引き込み、その結果、新しい視点からの研究の展開が生まれました。そして、魅力的なミッションを国際共同によって実現していくことをよしとする雰囲気が自然に醸し出され、「宇宙プラズマ」という、磁気圏そのものだけを研究の対象とするのではない、普遍的な問題意識が熟成される土壌が生まれました。

現在の太陽系科学研究系・宇宙プラズマグループは、ESAと共同しての水星探査計画BepiColomboを中心となって進めながら、NASA旗艦計画MMSへ観測機器を提供しつつあり、また、内部磁気圏国際観測キャンペーンに参加すべく小型衛星ERGを準備しています。さらに、JAXAインターナショナルトップヤングフェローと一緒にNASA土星探査機Cassiniのデータを見つつ、ESAが主導する氷衛星探査計画に参加する機会を模索しています。これすべて、GEOTAIL(西田)DNAのなせるわざです。

(藤本正樹)

11月11日、品川のイタリア料理店にてGEOTAIL 20周年記念パーティが国内外から100名強の参加者を得て開催された。そのオープニングで、サプライズ気味にお祝いをした際のスナップ。ちなみに、パーティはまるで同窓会のようだった。