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ISASニュース

イプシロンロケット用スピンモータ真空燃焼試験

No.379(2012年10月)掲載

8月22日から30日の間、あきる野実験施設の小型真空槽を使ってイプシロンロケット用のスピンモータ(SPM)真空燃焼試験が行われました。昨年度末にタンブルモータの真空燃焼試験やTM-250モータ真空燃焼試験を実施していたので、設備的な課題はありませんでした。

今回の試験に用いられたSPMは、M-Vロケット5号機で使用したSPMとほとんど同じ設計です。違いを挙げると、点火系に遠隔操作式セーフ・アーム機構(RSAD)が付いたこと、推進薬の原料の一部の仕様と調達先が変わったという点になります。推進薬はBP-250Jという呼称でしたが、まったく同じではないのでBP-250JAという改良型を意味する呼称に変更されています。このような微小変更ではありますが、重要な役割を担うモータですから当時の設計と違いがないことを確認する必要があり、今回の真空燃焼試験が行われたわけです。モータの大きさは、モータケース部分が両手のひらに収まるくらいです。SPMの特徴は、スカーフカットノズルと呼ばれる斜めに切り取られたノズル形状です。SPMは3段スピンアップのため外周部に配されることから、かわいそうなことに包絡域からはみ出るノズルは切り取られてしまい、非対称な形状となっています。

私が新人のころ、ちょうどM-Vロケット5号機(MUSES-C/はやぶさ)の準備が進められている最中でした。当時川越にあった関係企業に伺って初めて立ち会った領収試験が、SPM真空地燃でした。その企業におられる私の教育係(?)のI先輩から設計のポイントなどを教わったことが、鮮やかに思い出されます。

SPM真空燃焼試験は予定通り8月29日に実施され、所定のデータ取得を行いました。データ解析の結果、設計に問題がないことが確認されました。イプシロンロケットの準備は着実に進んでいます。

(羽生宏人)

イプシロンロケット用のスピンモータ(SPM)真空地上燃焼試験の実験班員保安集合写真。写真中央はスタンドに固定されたSPM。