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ISASニュース

IKAROSに搭載されたガンマ線バースト偏光観測装置

No.359(2011年2月)掲載

小型ソーラー電力セイル実証機IKAROSには、理学委員会の公募で選ばれた、ガンマ線バースト(GRB)の発生と偏光の有無を検出する機器が搭載されています。直径17cm、重さ4kgで、GAP(GAmma-ray burst Polarimeter)と呼びます。工学衛星に公募で搭載された珍しい理学機器で、金沢大学と山形大学に理化学研究所が協力する形で、地方大学だけでつくられました。宇宙研から援助を受けましたが、ほぼ科研費(科学研究費補助金)でつくられました。

GAPは、GRBの偏光度を専門に測る世界で初めての装置です。ガンマ線のような電磁波は、波長や振幅のほかに波面の偏り(偏光)を持っています。GAPは、GRBの偏光度を測ることにより、その巨大なエネルギー源に迫ろうとするものです。GRBは宇宙で最大の爆発現象で、超巨星の死のときの爆発と考えられますが、ほとんどガンマ線で輝きます。その理由として、爆発の瞬間に光速の99%以上に達する物質の放出と強い磁場が関わるといわれます。この理論の確認を、偏光面の観測から切り込みます。X線やガンマ線の偏光を測ることは難しく、かに星雲での成功例を除くと、信頼性の高い観測が行われていません。GAPはコンプトン散乱の同時計数法で、GRBに挑みます。

IKAROSのセイル展開から1ヶ月後にGAPの電源が入れられました。2010年8月26日に観測された例を図に示します。この一例は100億光年先のはるかな宇宙から届いたもので、このGRBに偏光があるかどうかは興味があるところですが、慎重に解析しています。結論は、もっと多数のGRBを観測してから出すつもりです。IKAROSは低利得アンテナしか使えないため、実運用期間はまだ5ヶ月弱ですが、約15回のGRBが観測されています。今後に期待してください。

(金沢大学 村上敏夫・米徳大輔/山形大学 郡司修一/理化学研究所 三原建弘/IKAROSチーム)

観測されたガンマ線バーストの一例

GAP検出器外観。円筒の検出器部と電源部。