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ISASニュース

宇宙から金環日食

No.359(2011年2月)掲載

太陽観測衛星「ひので」は1月4日、偶然にも金環日食に遭遇し、黒い月が太陽面にすっぽりと入った瞬間に太陽X線像の撮影に成功し、その画像を6日に一般に公開しました。

日食によって一時的に太陽光が遮られて太陽電池の発電が下がったりするため、太陽指向する衛星の運用において日食は特に注意を要するイベントです。一方で、太陽観測衛星にとっては、日食は望遠鏡内で発生する散乱光の較正をはじめとして科学的に重要な機会です。毎回日食が近づいてくると、国立天文台の相馬充さんに「ひので」軌道から見た月と太陽の関係を詳しく計算してもらい、観測計画の立案に役立てています。今回の日食では、計算結果とともに、「『ひので』からは金環になるのですね。びっくりです。そういえば、2007年3月のときの皆既も驚きでした」とのメッセージが相馬さんから届き、大変珍しい瞬間にまたもや遭遇できることを知りました。今回の日食は、地上では欧州などで部分日食しか見ることができませんでしたが、高度約680kmを周回する「ひので」は、北極の上空を通過する際に金環日食帯に入り、この瞬間の唯一の目撃者となりました。

X線で撮影された画像は、太陽の内側に黒い月がすっぽり入り込み、オレンジ色に疑似的に着色された太陽コロナが輪のように見える、幻想的な画像となっています。今回の日食は、日本からは一切観察できないものでしたが、「宇宙から金環日食 世界初 衛星ひので撮影」(朝日新聞)などと、新聞各紙にカラー写真が掲載され、日食に対して大変関心が高いことを感じました。来年2012年5月21日には、金環日食が東京など太平洋沿岸地方で見ることができるので、今から楽しみです。

(清水敏文)

「ひので」がX線で見た金環日食