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ISASニュース

「はやぶさ2」10年後に向けて発進!

No.358(2011年1月)掲載

2010年12月末、2011年度予算の内示があり、「はやぶさ2」開発予算が認められました。これも、多くの皆さまに理解していただき、ご協力いただけた結果です。「はやぶさ2」の準備チームにとって非常にうれしいことですが、同時に気を引き締めて取り組んでいこうと思っています。

探査対象小惑星である1999JU3のサンプルリターンを行うためには、次の打上げのウインドーは2014年(バックアップが2015年)になります。打上げまでの日程が非常にタイトです。「はやぶさ2」は「はやぶさ」がやったことを踏襲するといっても、「はやぶさ」はもはや10年も前の技術です。すでに部品がないものもありますし、そもそも「はやぶさ」の経験から改良すべき点もたくさんあります。開発・製作にかかる期間は、まったくの新規の探査機よりは短くて済みますが、それでも時間がかかります。ということで、「はやぶさ2」準備チームは、よりスピードアップして作業を進めていく必要があります。ただし、急いだことで問題や不具合が起こっては意味がありませんから、最大限、いろいろなところに注意を払いながら慎重に進めていきたいと思っています。

それにしても、1999JU3という小惑星は、いったいどのような姿をしているのでしょうか?望遠鏡による観測では、大きさは900mくらいで、どちらかというと球形に近い形をしていると推定されています。自転周期は7.6時間ほどで、C型の小惑星です。このC型ということが重要で、C型の小惑星をつくる物質には水や有機物が多く含まれていると考えられています。小惑星はあまり進化していない天体ですから、つまり、太陽系ができる前に存在していた鉱物、水、有機物について調べることができるわけです。その表面の反射率(アルベド)は0.06と小さく、黒っぽい小惑星なのだと思いますが、いったいどのような素顔をしているのでしょう?そして、どのような物質がそこにあるのでしょう?2018年の小惑星到着と2020年の地球帰還が、今から楽しみです。

(吉川 真)

推定されている小惑星1999JU3の形状。大きさの比較のためにイトカワ(右下)も描かれている。形状推定は川上恭子ら(2009年)による。