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ISASニュース

世界に歓迎された「はやぶさ」の帰還

No.356(2010年11月)掲載

「はやぶさ」帰還後間もなくの7月にドイツのブレーメンでCOSPAR(国際宇宙空間研究委員会)が、そして9月末にはチェコのプラハにてIAC(国際宇宙会議)が開催され、参加する機会を得ました。今回の参加は、これまでとまったく違った意味で、大変に感慨深いものとなりました。それは、今年「はやぶさ」が地球帰還を果たしたからです。

IACでは、全体会(plenary)とSolar System Explorationセッションの両方で報告の機会をいただきました。どちらにも多くの参加があり、発表終了後も拍手が長く響き続け、非常に多くの方が駆け寄ってこられ、言葉をかけてくださいました。開会式のあいさつで会長から今年の成果として真っ先に「はやぶさ」を挙げていただいたこと、そして全体会での報告の後に中国の研究者が駆け寄ってきて「アジアの発信だ」と大きな声で語り掛けてきてくれたことが、特に印象的でした。IACでは、模型の展示のほか、ビデオも流していただきました。多くの方がじっと説明に聞き入っておられたのを、よく覚えています。

IACの後、「はやぶさ」カプセルの回収に協力をいただいた豪州政府にお礼を申し上げるべくキャンベラの在豪日本大使館にてレセプションを開いていただき、また科学博物館(Questacon)にて「はやぶさ」の模型の贈呈と帰還の報告会を開催させていただきました。大臣などの要人も多数出席され、両国の協同、友好の成果が強調されたことは、プロジェクトに携わった者として、この上ない幸せです。

世界の方々の関心は、やはり微粒子の分析に向いていました。今回、実際にイトカワのサンプルと確認できて、夢のまたさらに夢が実現したと、信じられないでいます。でも、皆さんが「帰ってきたことだけでも素晴らしい」とおっしゃられ、意識が共有されていることをうれしく思いました。僭越ではありますが、今年のIACに日本から参加された皆さんも、きっと少しだけ胸を張っていただけたのではないでしょうか。「はやぶさ」ミッションについては「野心的、挑戦的な計画だね」「できるはずがない」と言われ続けてきましたが、今回その帰還について、無言ではあっても、海外の方からもしっかり評価をしていただけたと思います。

「はやぶさ」という探査機が宇宙研で開発されたこと、そして宇宙工学が独創的に花開いたことを実感する中で幸運に助けられながらも先輩諸氏からの伝統・成果に報い、何とか貢献できたことを、誇りに思います。そして、皆さまにお祝いを申し上げたいと思います。

(川口淳一郎)

IAC(国際宇宙会議)のJAXAブース