TOP > レポート&コラム > ISASコラム > きぼうの科学 > 第12回:「きぼう」の宇宙環境
(ISASニュース 2009年9月 No.342掲載) | ||
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SEDA-APには3つの観測トピックスがあります。 目玉は、中性子のリアルタイム計測です。低エネルギー(熱中性子から15MeV)はボナー球型(中村尚司 東北大学名誉教授の協力)で、高エネルギー(10〜100MeV)はシンチレーション・ファイバー型(村木綏 名古屋大学名誉教授の協力)を用いて計測します。これらの計測装置は、それぞれ日本で独自に開発されました。ボナー球型は開発が早く終了したので、 NASAからの依頼ですぐにスペースシャトル船内の初の中性子リアルタイム計測を実施することができました(1998年)。さらに2001年には、日本の装置として初めてISSの米国実験棟に搭載され、8ヶ月間の計測に成功しました(図2)。今回は船外で太陽から直接飛来する太陽中性子の検出を目指します。ファイバー型は霧箱のような電子的な可視化装置なので、飛来方向とエネルギーが飛跡で測定できます。中性子の測定は「玉突きやカーリング(弾性衝突)」の原理を応用します。つまり入射中性子は、ファイバー内の水素原子(標的)に衝突すると、自分のエネルギーを水素原子(陽子)に渡します。そこで飛び出す陽子の飛跡の長さを電子霧箱で測定すれば、中性子エネルギーが分かるわけです。太陽から飛来した中性子が太陽表面で瞬時につくられたものなのか、20分以上にわたって連続的につくられたものなのかを、ほかの太陽観測衛星(「ひので」やGOES)のデータと併せて判定します。太陽表面の爆発現象で、プラズマ粒子が高エネルギー粒子にいかに加速されたのか、その過程が分かると期待されます。 |
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微小粒子捕獲実験装置(MPAC)は、ISSで唯一の捕獲型計測装置で、日本が過去に行ったロシアモジュールでのMPAC(2001〜2004年)も含め、この分野は日本の独壇場となっています。特にMPAC回収後の解析で、デブリがISSに衝突した結果、ISSから出た2次的なデブリ(ejecta)を捕まえたことは、学会で高い評価を得ています。この日本の実績に対し、米国、欧州、ロシアを含む各国から、ISO(国際宇宙規格)のデブリ環境モデル評価の規格は日本が作成するのが適切との要請がありました。その結果、日本が作成した規格案は今年、ISOジュネーブ事務局で採択されました。 プラズマ計測装置(PLAM)は、SFU衛星などで搭載実績のある宇宙科学研究本部の佐々木進教授が提案した装置を搭載します。米国のプラズマ計測装置、昨年末に設置されたロシアのプラズマ計測装置に続いて、3番目の常設の装置となります。サッカー場のサイズのISSは、太陽光の日照中や日陰中にプラズマの中を飛翔するとき、さまざまな電位に帯電します。ISSの太陽電池パドルは160Vの電圧を発生し、マイナス側を接地しているので、ISSの本体は日照中のおよそマイナス160Vから日陰中の約プラス20Vまで地球周回ごとに変動しますが、宇宙飛行士の船外活動中と、宇宙ステーション補給機(HTV)などがISSにドッキングするときのみは、マイナス40Vからプラス40Vの範囲内に帯電電位を人為的にコントロールします。これがうまく作動しないと、放電が起きて、宇宙服のピンホール損傷、ドッキング用の電気コネクタの損傷を招くので、プラズマや電位計測は非常に重要です。 |