さて、ここからはマランゴニ対流について簡単に説明したいと思います。マランゴニ対流は、名前からしてなじみがないので内容を聞く前から拒絶する方もいるようですが、実は身の回りでもごく当たり前のように見られるマランゴニ効果により発生する流れです。例えば、水面に油を1滴落としてみましょう。油が水の表面で素早く広がり虹色の薄膜になる様子は、誰でも見た経験があると思います。ワインの好きな方は“ワインの涙(tears of wine)”をご存じかと思いますが、これもマランゴニ効果による現象の一例です。ワインをグラスに注ぐと、グラスとの接触面で毛管力によりせり上がるメニスカスが形成されます。アルコールの蒸発により、メニスカス先端部分は水の濃度がより高くなり、局所的に表面張力が大きくなります。表面張力の大きい先端部分が、周りの液体をグラス内面に沿ってよりいっそう上に引き上げ、液滴状になります。地上では重力がありますから、液滴が大きくなると下にしたたってきます。それが涙のように見えるというのが、ワインの涙と呼ばれるゆえんです。表面張力は温度や濃度によって異なります。一般的に温度が低いほど強く、高いほど弱くなる性質を持っていて、その力の不均衡によって駆動され生じるのがマランゴニ対流です。