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ISASコラム

ISASニュース 新旧委員長 対談
(ISASニュース 2008年4月 No.325掲載)
 
「ISASニュース」の編集長が、2008年4月から交代します。2000年から編集長を務めた的川 泰宣先生(写真右)からバトンを受け取るのは、村上 浩先生(赤外・サブミリ波天文学研究系 教授、写真左)です。新旧委員長に「ISASニュース」の始まり、理念、今後の課題などについて語っていただきました。
Q: 「ISASニュース」はどのように始まったのですか。

的川:東京大学宇宙航空研究所が宇宙科学研究所に改組される少し前の1980年ころ、平尾邦雄先生に呼ばれて「宇宙研のニュースを月刊で出そうと考えているが、どう思うか」と聞かれました。それが始まりですね。当時、ニュースを発行している研究機関はありましたが、どれも事務職員がつくっていました。平尾先生は、研究者自らが記事の選択をし、編集をして、妥協せずに中身の濃いものを作るべきだと考えていました。また、宇宙研の研究には理学と工学があり、それぞれにいろいろな分野があります。研究者・技術者が互いに相手の分野を分かり合い、広い視野で自分の研究を見つめ直すことができるものにしたい、ともおっしゃいました。しかし、専門家だけを対象とすると難しくなってしまいます。そこで、研究の薫りがありながらも、一般の人がのぞいて面白いと思ってもらえるものをめざすことになったのです。

村上:「ISASニュース」は、とても欲張っていますよね。

的川:一般広報誌にすべきだ、という意見は何度も出ています。しかし、現在の「ISASニュース」を高く評価してくれる人もたくさんいます。例えば、新聞の科学部記者や論説委員はバックナンバーを保存し、記事のネタにしてくれているようです。

村上:ホームページができて、掲載する情報の切り分けは楽になりましたね。速報性や一般向けの情報は、ホームページに重点を置いて広報していけばいいでしょう。

Q: では、「ISASニュース」の役割は?

的川:ホームページに「宇宙研物語」がアップされていて大好評です。その原稿を書いている時に驚いたのですが、「ISASニュース」の記事をたどると、見事に宇宙研の歴史になっているんです。例えばLUNAR-Aの中止など、本当はあまり出したくない記事もきちんと掲載されています。「ISASニュース」を見れば宇宙研の研究活動の偽りない情報が載っている、ということは重要だと思います。

Q: 今後の課題は?

的川:難しい記事が、時々ありますね。岩波のジュニア新書レベルで書いてくださいとお願いしているのですが、ほかの分野の第一線の研究者も読むことを知っているから、どうしてもまじめに書いてしまう。

村上:私たちは、正確に描けという教育を受けているので、かみ砕いて書くことが苦手なのです。でも、研究者といっても他分野の人が対象であれば、一般の人向けの文章でいいですよね。やっと最近それが分かってきました。これからは、もう少し易しくなるように気を付けて、いろいろな人に読んでもらえるようにしたいですね。

的川:長年の課題なので、ぜひお願いします。

Q: 毎月1回、編集委員会を開き、10人ほどの編集委員が記事の選択や内容の検討を行っています。こういうつくり方をしている研究機関は珍しいのでは?

的川:編集長が委員を選ぶのですが、最初はいやいや委員会に出てきます。しかし、そこでいろいろな分野の一番新しい話を聞けるでしょう。楽しいようですね。

村上:委員はいろいろな分野から選び、情報が集まるようにしておくことも大切ですね。皆さんが楽しんでいるのは、よく分かりますよ。「ISASニュース」の忘年会があると、みんないそいそと出掛けて行くから(笑)。
「ISASニュース」のつくり方は特有です。宇宙研にはいろいろな大学から研究者や技術者が集まってきます。みんなで衛星をつくり、運用して観測をします。そういう宇宙研の文化が根っこにあるのだと思います。

的川:「ISASニュース」を始めたころ、秋葉鐐二郎先生が「まあ3ヶ月だな」と言っていました。平尾先生と「3年はやりましょうね」と励まし合っていたものです。それがもう27年目、300号を超えました。

村上:私は定年まであと7年。どこまでいくかなあ。

的川:400号記念の特集号を楽しみにしていますよ。初代編集長は平尾先生、伊藤富造先生、松尾弘毅先生と続き、私は4代目。歴代の編集長は、最初にお話しした理念を守ってほしいと、きっと思っているのではないでしょうか。これからも、よろしくお願いしますね。