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ISASコラム

宇宙・夢・人

誰もが宇宙へ行ける時代へ!

(ISASニュース 2012年1月 No.370掲載)
 
宇宙科学プログラム・オフィス 栗山 悦宏
くりやま・よしひろ。1986年、新潟県生まれ。首都大学東京 大学院 都市環境科学研究科 地理環境科学域修士課程修了。2011年4月、JAXA入社。
Q: 新春にふさわしくフレッシュマンの登場です。就職試験の面接では何を主張したのですか。
日本の宇宙産業の発展に貢献して、誰もが宇宙へ行ける時代を実現したい、と訴えました。
Q: 子どものころから、宇宙に興味があったのですか。
中学生のとき、いろいろな職業について調べる授業があり、パイロットになりたい、と思うようになりました。多くの人たちの命を預かり、巨大な航空機を操る仕事に魅力を感じたのです。その延長線上で、宇宙飛行士にも憧れはありました。
パイロットは、大学の学部学科の出身が問われません。大学では、地形の成り立ちを探る地理学を学びました。そして学部4年生のとき、航空会社のパイロット試験を受けたのですが、身体検査で不合格になりました。
Q: 頑丈で、とても健康そうに見えますが。
「健康上に問題はないので、心配しないで」と航空会社の担当者には言われました。パイロットの身体検査は、健康な人のうちの3割しか合格しないそうです。
パイロットになる夢が閉ざされてしまいました。地理学が好きだったので大学院の修士課程に進み、あらためて将来を考え始めました。やがてビジネスの持つ大きな力に気付き、その力で自分の夢を実現しようと思いました。
宇宙へ行きたい、という夢もずっと子どものころから抱いてきたものです。しかしパイロット試験に落ちたので、宇宙飛行士になるのも難しいでしょう。では、どうすれば宇宙へ行けるのか。誰もが旅行や仕事で宇宙に行く時代になれば、自分も宇宙へ行くことができる。そういう時代が来るのをただ待つのではなく、自分が宇宙産業の発展に貢献することで、そういう時代をつくり出したいと思いました。
理系の出身ですが、就職活動では宇宙産業に関わる商社も受けました。JAXAでも経営管理系という文系枠に応募しました。
Q: 職場には慣れましたか。
現在所属している宇宙科学プログラム・オフィスは、宇宙研のさまざまなプロジェクトを横断的に支援する部署です。宇宙科学の最先端を切り拓いている方々と仕事ができるのは、とても刺激になり、楽しいですね。
私は、新しい環境が苦にならない性格です。ふてぶてしく見えるようで、初対面の人に「前は、どこの部署にいたのですか」とよく聞かれます(笑)。でも実は、一人になったときに考え込んでしまうネガティブな面もあります。
Q: 前向きな印象で、とてもそうは見えません。
小学5年生のときから大学まで野球をやっていました。自分の弱い面を見せるのは、チームの雰囲気に良い影響を与えません。ネガティブな面を人に見せない習慣が野球で身に付いたのかもしれません。現在も、JAXA筑波宇宙センターの野球チームでプレーしています。宇宙研にも、ぜひ野球チームをつくりたいですね。
Q: 30〜40年後、宇宙はどれくらい身近になっているでしょうか。
少なくとも、低いコストで誰もが宇宙に行ける状況にはしたいですね。しかも、宇宙に行くこと自体が目的ではなく、そこで仕事や生活をする環境が築けたらいいと思います。例えば、月面天文台を築き観測したり、宇宙太陽光発電所を建設したり。それらの施設に付随した生活空間もあるといいですね。SFのような夢ですが、とてもわくわくします。
Q: 夢を実現できそうですか。
JAXAの中でどのような活動をすれば日本の宇宙産業の発展につながるのか、具体策はまだ見えていません。これから、JAXAのいろいろな部署を経験することになるでしょう。JAXAや日本の宇宙産業の状況を理解することで、見えてくるものが、きっとあるはずです。取りあえず今は、優秀な上司や先輩たちに付いていくことに必死です。