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ISASコラム

宇宙・夢・人

研究に集中できる環境を築きたい

(ISASニュース 2010年11月 No.356掲載)
 
科学推進部 計画サブマネージャ 清水 輝久
しみず・てるひさ。1966年、千葉県生まれ。北海道大学農学部農業経済学科卒業。1990年、宇宙開発事業団入社。総務部、経理部、人事部などの業務に携わる。2000年、社内国内長期派遣制度により経営学修士号取得。JAXA人事部給与厚生課 副課長、経営企画部 主任、総務部総務課 副課長を経て、2010年4月より現職。
Q: 今年4月に宇宙研に赴任されました。
1990年に宇宙開発事業団(NASDA)に入社し、総務部や経理部、人事部に所属しました。中でも人事部には10年間在籍し、職員採用などを担当しました。宇宙研では、所内の事業推進業務、いわゆる「所内の総務部」的なさまざまな仕事に携わっています。
Q: 宇宙研の印象は?
2003年にISASとNASDA、NALが統合してJAXAができるとき、統合人事チームとして宇宙研の人たちとも一緒に仕事をした経験から、宇宙研の"文化"についてはある程度、理解しているつもりでした。しかし4月に実際に宇宙研に来て、事務部門の仕事の進め方の違いに驚いています。これまでヘッドクォーター(HQ)での経験しかなかったこともあり、「ライン・組織」で情報を共有しながら仕事をする、というスタイルが普通だと思っていました。一方、宇宙研では、あまり「ライン・組織」という意識がなく、それぞれの業務にキーパーソンがいて、その人と直接、相談しながら仕事を進める、というスタイルが主流であるような印象を持ちました。
HQでのやり方は、組織として手順を踏んで進めるため、意思決定に時間がかかってしまいますが、ノウハウが組織に蓄積されるという利点があります。一方、宇宙研のやり方は意思決定が早く、円滑に進むという利点がある一方、上司が部下の業務内容を把握しにくく、ノウハウが組織に残らないというマイナス面があります。それぞれに長所と短所があるので一概に善しあしはいえませんが、将来、人事異動で担当者が代わった場合でも、所内の研究業務のサポートに支障が出ないように事務系業務をマニュアル化していくことが、私の課題だと思っています。
Q: 宇宙の仕事を志望した理由は?
子どものころから飛行機や宇宙にあこがれを抱いていて、理系を選択して大学に入学しましたが、学部選択時に結果的に農学部へ進学し、卒業時には「事務系」になっていました。それでもやはり航空や宇宙に関係する仕事がしたいと、NASDAの入社試験を受けました。当時、NASDAの存在は一般の人たちにあまり知られていなかったので、面接では広報の必要性を訴えました。そういえば入社したころ、宇宙開発事業団の"開発事業"という言葉から、「不動産屋さんですか?」と人から聞かれたこともあります(笑)。
Q: 最近では、JAXAの活動は一般の方々から大きな注目を集めています。
「はやぶさ」の活躍などで、とても有名になりましたね。赴任後、初めて迎えた特別公開は、まさに「はやぶさパニック」でした。一方で、JAXAを含む独立行政法人(独法)に非常に厳しい目が注がれていることも事実です。独法化により、国から求められる事項が増え、研究者の事務負担も大きくなりました。さらに昨年の政権交代以降、独法を取り巻く環境がいっそう厳しくなり、事業仕分けのための資料作成など事務負担が一段と増大しました。国の要求に応えつつ、研究者の事務負担を減らし、研究に集中できる環境をつくり出さなければなりません。それが私たち事務系職員の腕の見せどころです。
Q: どうすれば、研究に集中できる環境を実現できますか。
宇宙研の文化の良いところを残しつつ、発展させる必要があります。そのために、事務作業を簡便かつ効率的に行う方法を探り、提案していきたいと思います。そして効率的な方法を組織のノウハウとして蓄積していくことが重要です。宇宙研に新たに赴任した職員でもノウハウに従って効率的に業務を進めることができる基盤を築いていきたいと思います。数年後には、"ずいぶん研究に集中できるようになった"と研究者に実感してもらえるようにしたいですね。そのために自分の経験が少しでも生かせればと思います。
私たちは、自分たちの研究活動に自信と誇りを持っています。きちんとした活動を行っている独法には、もっと裁量を認めていただきたい。そうすれば、研究者の事務負担を大幅に軽減することができます。自主的な運営が独法の本来の趣旨だったはずです。
一方、事業仕分けがきっかけとなり、自分たちの研究活動を一般の方々に理解していただくことの重要性をあらためて認識しました。宇宙科学のサポーターを増やす活動は、さらに推進していく必要があります。
Q: 宇宙研の研究者やスタッフに要望はありますか。
私は、仕事中の顔が怖く近寄り難いと言われます(笑)。宇宙研に来てから、「眉間のしわがさらに増えたね」とよく言われます。本来は柔和な性格なので、ぜひ気軽に声を掛けてください。