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第52回:図書室で逢いましょう
(ISASニュース 2008年10月 No.331掲載)
いのうえ・きみこ。
1988年,筑波大学図書部より宇宙科学研究所管理部庶務課情報資料第一係へ(1996年から3年間,東京大学工学部機械系三学科図書室勤務)。2003年より現職。
Q:
司書のお仕事をされているそうですね。
相模原キャンパス研究・管理棟の2階にある宇宙科学研究本部図書室が私の仕事場です。約8万冊の蔵書があり、24時間利用できるようになっています。手続きをしていただけば、一般の方も利用できます。
司書というと、皆さんはカウンターに座っている姿をイメージされるかもしれません。でも、宇宙研の図書室は貸し出しもコンピュータで行うので、カウンターは無人です。書籍・雑誌の購入、書架の整理、利用者用ホームページの作成、ガイダンス、質問への対応が、主な業務です。
私は、大学図書館に勤務した後、宇宙研の図書室に来ました。実家が相模原市内なので、宇宙研の存在は知っていましたが、どういうところかは知りませんでした。だから、宇宙研に来た当初は、戸惑うことだらけ。洋書や洋雑誌が多く、内容は専門的です。しかも、皆さんは雑誌名を省略して言うので、どの雑誌のことなのかまったく分からない。何度も聞き返していました。
Q:
なぜ司書になろうと思ったのですか。
ちょっと恥ずかしいのですが……。中学生のときに読んでいた雑誌の付録に「将来の職業テスト」というのがあり、記入して送ってみたのです。そうしたら、「図書館司書」と返ってきた。それまで図書館司書という仕事があることも知りませんでした。職業テストの結果を意識していたわけではありませんが、気が付いたら、この道に進んでいました。
Q:
子どものころから本は好きだったのですか。
司書は、その質問に「ノー」と答えることになっています。だって、本が好きで司書になったというのでは、当たり前過ぎますから。でも、やはり本は好きです。司書をやっている友達の家に行くと、ここは図書室か、と思うほどたくさんの本が並んでいます。みんな同じなのでしょうね。
先日、部屋を片付けていたら、松谷みよ子さんの『ちいさいモモちゃん』が出てきました。子どものころに読んだのでしょう。もうボロボロでしたが、懐かしかったです。
Q:
どういう人が司書に向いているのでしょうか。
「本が好き。でも人とのコミュニケーションが苦手。だからこの仕事を選んだ」という人が多いかもしれません。私もそうでした。でも、実際に仕事をしてみて気が付いたのですが、司書というのはサービス業なんです。コミュニケーションが苦手という人も、カウンターに立つと、不思議と変わるものです。強いて言えば、大ざっぱな人より、細かい人の方が向いているかなぁ。私自身は大ざっぱですけども……。
資料の検索という仕事は、推理小説に似ています。犯人捜しですね。こういう資料が欲しいという断片的な情報から、求められている資料を探し出す。それがまさに必要とされていた資料で、喜んでいただいたときは、とてもうれしいものです。
Q:
逆に、仕事でつらかったことは?
それは、忘れもしない去年の春のこと。電動書架が古くなり、入れ替えをしたのです。本を出すのは業者さんにお願いしましたが、新しい書架に並べるのは職員でやりました。約3万冊あって、やってもやっても終わらない。図書室が使えないと皆さんに迷惑が掛かるので、1日でも早く終わらせようと土日返上で頑張りました。もう同じ作業はできないです。
Q:
図書室のことは何でもご存じ、といううわさを耳にしましたが。
ちょっと長くいるだけですよ。「こういう本がないかな」とあいまいな質問でも、あるかないか、だいたい分かります。でも、「検索システムで探してみましょう」と言うようにしています。間違えると恥ずかしい、というのが一つ。もう一つは、私がいないと本を探せないというのでは困りますから。
Q:
図書室を利用する皆さんにメッセージを。
資料のデジタル化が進み、研究室にいながらインターネットを介して必要な情報が手に入るようになり、図書室に足を運ぶ必要がなくなっています。適切な情報が得られているのならいいのですが、もしかしたら、より適切な情報を見逃している可能性もあります。所蔵資料の検索システムにしても、いろいろ便利な機能があります。最適な資料を見つけ出すとっておきの方法をお教えしますから、まず図書室に来てください。
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