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ISASコラム

宇宙・夢・人

育て!研究者の卵たち

(ISASニュース 2005年8月 No.293掲載)
 
研究マネジメント課 殿河内 啓史
とのごうち・けいすけ。
1970年、東京都生まれ。
1989年、東京都立調布北高等学校卒業。同年、宇宙科学研究所事務官。研究協力課、東京大学農学部、文科省三機関統合準備室などを経て、2003年4月の総合研究大学院大学宇宙科学専攻発足時から大学院業務全般に携わる。現在、研究マネジメント課観測事業係。宇宙研ワンダーフォーゲル部所属。
Q: このコーナーで事務職の方にご登場いただくのは初めてです。まず、仕事の内容をお教えください。
6月までは、総合研究大学院大学(総研大)をはじめとする大学院担当をしていました。宇宙研が総研大の宇宙科学専攻を開設したのは2003年4月で、私はその発足時からかかわったのですが、その半年後のJAXA発足に伴う協定締結など前例のないことばかりで大変でしたね。私たち事務と総研大教員を担当する研究者、総研大の葉山本部、そして学生が四者一体となり、新しい学校を築き上げてきたという感じです。

総研大の仕事をするまで気が付かなかったのですが、大学院の学生は宇宙研の中でとても大事なポジションを占めていることがよく分かりました。総研大生・東大生をはじめとする全国の大学から来て宇宙研で研究を行う200人余りの大学院の学生は、宇宙研という実際にプロジェクトが進行している現場で、最先端の宇宙科学を学び研究を行っています。一方、宇宙研の側からは、学生は大学共同利用機関としての宇宙研のユーザー・共同研究者でもあり、学生がいることによって宇宙研の研究も進みます。そして何よりも、学生たちは次世代を担う研究者の卵です。学生を育てるということは、JAXAが大事にしなければならない仕事の一つだと思います。
Q: 研究者の卵を育てるために何が必要だとお考えですか。
学生が学びやすい環境を作ることがまず大切ですし、経済的な支援も必要です。そして、宇宙研で育てた学生をどう社会に送り込んでいくかを、もっと真剣に考えるべきだと感じています。学生たちはモチベーションが高く、本当に優秀な人ばかりです。宇宙研で学んだ学生を、これからの社会に通用する優秀な研究者として育てるだけでなく、JAXAとして組織的にフォローし、各分野へ受け入れてもらえるようPRしていかなければいけないでしょう。

また、総研大の宇宙科学専攻では、現在の博士後期課程に加え、2006年度から5年一貫博士課程も始まります。宇宙研で学ぶ選択肢を増やせたのはよかったと思います。

私自身は6月に部署の異動があり、最初に入学した総研大生が修了するまで付き合ってあげられなかったことが悔しかったですね。
Q: 今度は、どのようなお仕事ですか。
研究マネジメント課で観測事業係という観測ロケットなどの実験支援業務をしています。宇宙研に入って初めての配属先も観測事業係で、この仕事はすでに6年くらいやっているので新鮮味はないですが。地元への説明・協力依頼や行政機関に対する各種申請、警察・消防への警備依頼、研究者や技術者の移動や宿泊先の手配など、実験にかかわる裏方の仕事です。宇宙研の事務の中にあっては、現場で直接実験にかかわることができる数少ない部署といえるかもしれません。実験やロケット打上げの現場に立ち会えるので、とても面白いですし、宇宙科学をサポートしているんだという自負も感じます。

このような経験から、事務職員が実験や研究の現場に携わったり、知ることができる場が、もっと増えればいいと感じています。もっと研究の現場を知ることで、書類上のことについて実感が伴うようになれば、モチベーションが上がるのではないかと思います。
Q: ところで、なぜ宇宙研に?
公務員は楽かな、と思って(笑)。ところが、いきなり年に60〜70日も出張しなければならない観測事業係に配属になり、すっかり当てが外れてしまいました。宇宙研については、ロケットを打ち上げているところ、というくらいの知識しかありませんでした。ですが、もともと理科系が好きでしたし、辞めずにこれまでできたのも、性に合っていたからでしょう。
Q: これまでの仕事で一番印象に残っていることは?
2000年に行われたノルウェーのスピッツベルゲン島での観測ロケットの打上げですね。仕事でもなければ、北極圏に行くことはないでしょうから。

実験に伴う出張では研究者・技術者と寝食を共にして、いろいろな話もします。宇宙研の皆さんは、個性的な人が多いので面白いですよ。出張先で研究者と山登りの話で盛り上がり、宇宙研ワンダーフォーゲル部を作ることにもなりました。ワンダーフォーゲル部の部員は現在4名。メンバーが皆忙しく、最近は活動していませんが、また山に登りたいですね。