宇宙航空研究開発機構 サイトマップ

TOP > レポート&コラム > ISASコラム > 宇宙・夢・人 > 第112回:環境適応力は誰にも負けません

ISASコラム

宇宙・夢・人

環境適応力は誰にも負けません

(ISASニュース 2014年2月 No.395掲載)
 
科学推進部 広報普及係 原田まり子
はらだ・まりこ。1983年、神奈川県生まれ。慶應義塾大学法学部卒業。2006年、宇宙航空研究開発機構(JAXA)有人宇宙環境利用ミッション本部。役員秘書を経て、2012年より現職。
Q: JAXAに入って8年目ですね。
最初は筑波宇宙センターの有人宇宙環境利用ミッション本部で特殊法務を担当しました。大学や研究機関、企業と共同研究を行う際の契約締結や、国際宇宙ステーションの「きぼう」日本実験棟の打上げに関するNASAとの合意文書の調整などに、2年半携わりました。その後、東京事務所で役員秘書を3年半、そして2012年に相模原キャンパスの広報普及係に来ました。
 筑波や相模原には観測装置や衛星が置いてあり、宇宙開発の現場にいるんだ!と感じます。東京事務所では人と書類が相手で、現場感はありません。場所や職種で大きく違いますが、どの仕事も楽しく、辞めたいと思ったことは一度もありません。飽き性なので、2〜3年での異動が合っているのかもしれません。
Q: 役員秘書を希望していたのですか。
いいえ。現場を1ヶ所しか知らないのに役員秘書なんてできないと、目の前が真っ暗になりました。でも、JAXA全体を見渡し考えるという経験を積むことができました。
Q: 広報普及係に来てすぐ、特別公開を担当したそうですね。
JAXAに内定し、会社説明会にも行っていないのだから特別公開くらいはのぞいておこうと相模原キャンパスを訪れたのですが、人が多かったことだけが記憶に残っていました。あの人数を相手にするのかと、がくぜんとしました。でも、役員秘書のときの“危険な橋は渡らない”という感覚が身に付いていたので、準備がなかなか進まない。右往左往していたことしか覚えていません。でも来てくださった方々がみんな事故なく過ごしていただけたので、90点です。自分に甘過ぎるかな。
Q: 仕事上で心掛けていることはありますか。
物事を自分の主観的な感情で判断しない、ということです。それは、大学で法律を学ぶ過程で身に付けました。ほかの人から見てどうなのか、総合的に判断するようにしています。
Q: なぜ法学部に進んだのですか。
中学生のころはバイオテクノロジーを学びたいと思っていました。でも、飽き性でコツコツとやることが苦手だと気が付いて、方向転換しました。社会を守り制しコントロールしているものは、法律です。それを学ぼうと。そして、大学で勉強に明け暮れていたとき、ふと考えました。紛争が起きて裁判になり、その問題をどう解決するかを法律が決めています。紛争が起きる前に法律をつくり、紛争を防ぐことはできないものかと。そこで、これから法律ができる分野は何かと探していたとき、宇宙法に出会ったのです。
Q: JAXAの採用試験では何をアピールしたのですか。
環境適応力、国際感覚は誰にも負けません、と言いました。私は生後11ヶ月から、父の仕事の関係でアフリカのザンビアで暮らしました。4歳で日本に戻ったのですが、英語しか話せずアフリカ人やイギリス人といった異なる人種が暮らす社会の価値観で育った私には、みんなが常に群れていることが不思議でした。でも、その集団に入らなければ生きていけないと感じ、個性を捨てました。居心地が悪かったですね。中学生のとき、父がアメリカに行くことになり喜んで付いていきました。ところが、価値観の違いにぶつかり、自分の存在が足元から崩れ落ちるという体験をしました。崩れ落ちた自分をもう一度積み上げ直す。その繰り返しです。私は、世界中のどこにでも身一つで行って、生きていける自信があります。
Q: 広報としてどのようなことをやりたいと考えていますか。
宇宙科学には、日本人が初めて成し遂げたことがたくさんあります。日本人は奥ゆかしくて「たいしたことないですよ」とよく言いますが、「日本はこんなにすごいんだよ」と言える自信を持ってほしい。宇宙科学は明日のご飯をおいしくしてはくれないかもしれない。でも、自分の国を誇りに思えるって素晴らしいことです。そのためにも、難しいことをいかに分かりやすい言葉で伝え、興味を持ってもらうかが、重要です。私が理解できて面白いと思えたら、もっとたくさんの人にも面白いと思ってもらえるはず。宇宙科学の応援団を増やしたいですね。
Q: そろそろ次の異動があるかもしれませんね。
まだぼんやりとですが、宇宙というツールを使って難民支援などの世界貢献ができないかと考えているところです。
Q: 休みの日はどうしていますか。
仕事は忘れ、時間があれば旅行に行きます。違う文化、違う言語、違う考え方、違う色使い、そんな土地が好きです。